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東方心操録  作者: ハヤテ
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第五話 覆水盆に反らず、されど、鬼の角は頭に返る

自分で作っちゃいました。センスなくても気にしないでください。




 私が鬼無心になってから数日後のこと。白亜を保護したからと言って、劇的に何か変わったのかと聞かれれば、首を傾げるしか無く、じゃあ、特別何か変わったのかとも聞かれれば、やはり首を傾げるしかない日々を送っていました。


 要するに、私の私生活に変化なしという事です。


 自らの興味の赴くままに調べたり、作ったり、お酒を呑んだりと、白亜が来る前と変わる事の無い日々を繰り広げています。


「……何してる?」


 ですが、些細な変化ならあります。それは、私が何かしていると、白亜が必ず何をしているのか聞いてくるという事です。それと、お酒もちゃっかり一緒に呑まれています。

 白亜の事ですが、彼女は私の元に来た時は既に満身創痍で、歩くのもやっとの状態だったのですが(本人談)、今ではある程度回復しており、生活する分には問題ないそうです。まあ、生活する分にはと言うだけあって、今度人間にあったら蜂の巣にされると言っていました。言い方からして、とんでもない目に合うのは分かったのですが、蜂の巣を見た事がない私からしてみれば、どんな状態になるのか分からないのですがね。


「本を読んでいます」


 後ろから私の角を掴んでヒョイと覗きこんできた白亜に、私が今しているありのままの事を言います。何をしているのかと聞かれれば本を読んでいたのでそう答えるしかないでしょう。


「……どういう内容?」


「内容? えー……乳製品というやつですね」


 基本的に牛乳というやつから作られるそうです。ですが、山には牛はいませんし、人間の集落に行って採取して来ようにも、どうやら今は危ないらしいので断念した食べ物でもあります。

 まあ、いつか作りたいのでこうしてじっくり読んでいるのですけれども。


「……乳製品? ……何、それ」


「ここに書かれている事によると、牛乳から作られる物だそうです。あ、牛乳ってわかります?」


「……牛の乳?」


「ああ、知っていたのですね」


 この数日で知った事の一つとして、妖怪が人間の事をあまり知らないというものがありました。私は本で読んだりしているのである程度は知っているのですが、白亜は本当に人間の事を知らなかった。


まず一つ目に、料理を知らない。


 例えば、目の前に生肉があったとしましょう。新鮮な血が滴る、鬼の様に美味しそうな生肉です。私の場合、この生肉は焼いて、シャキシャキと瑞々しい草(人間は【レタス】と呼んでいます)と一緒に頂きます。はい、新鮮な血の味とレタスのシャキシャキとした歯ごたえが口の中に想像できますね。美味しそうです。

 ですが、白亜の場合は違います。白亜の場合、焼きをせずにそのままガブリと新鮮な血で顔を汚す事も厭わず、かぶりつきます。それはもう、ブチブチ、グチャグチャと食べ進めていく事でしょう。

 現時点での妖怪の食生活はこんな感じらしいです。私からしてみれば、なんであんな歯ごたえが気持ち悪く、喉越しも悪い生肉を食べられるのか疑問です。

 余談ですが、初めて白亜と一緒に食事する時に私が肉を焼き始めたら、


「……大丈夫、頭」


 と、本気で言われました。私からしてみればあなた方のが心配ですよ、頭。



まあ、そういう訳で、近頃の妖怪は人間の文化という物を知らないのです。


「牛の乳と言っても、雄には出せないらしいですよ。出せるのは雌だけの様です」


 そこまで言った時にふと、ある仮説が私の頭に浮かびあがりました。

 牛乳というのは、さっき白亜も言ったように、牛の乳です。その乳で出来ているのが乳製品。本来なら牛乳で作らなければいけないのでしょうが、私はこう思ったのです、『別に乳なら何でもいいのでは?』と。まさに逆転の発想です。今日の私は冴えわたっていますね。

 雌から乳が出るという事が知っています。では、今、私の角を圧し折らんばかりに左右に動かしている白亜は何なのでしょう? 答えはズバリ、雌です。

 つまり、白亜からも乳が出せるのではと思った訳ですよ、私は。


「ねえ、白亜」


「……何?」


「乳を出して下さい」


 その瞬間、角を左右にべギャッと折られました。


「……変態は死ぬべき」


「……いや、ちょ、これ」


 私に冷たい目で見つつ、角をポイッと捨てる白亜。そう、鬼である事の象徴でもある角を、冷たい地面に投げ捨てたのです。


「角が……折れたんですけど?」


「……折るつもりでやったから」


「え、でもこれ……生えてきませんよね?」


「……ある筈がない、そんなこと」


 ……乳製品の前にもっと重大な課題が立ち塞がりましたよ。て言うか、その……あー、衝撃的すぎて言葉が出ませんよ。

 とりあえず、何故角を折られたのか聞いてみましょうか。


「……嫌い、変態は」


 衝撃が走りました。角を折られた時の衝撃よりも、更に大きい衝撃が私を襲いました。

『嫌い』という言葉がこれほどまでに強烈な物だとは思いませんでしたよ、ええ。


「そ、そんな……私は唯、乳が欲しかっただけなのに……」


「……他意はない?」


「他意ってなんですか?」


 乳が欲しいというだけなのに他意もクソも無いと思うのは私だけ?

 というか……さっきから違和感があったのですが。


「……能力が、使えませんね」


 さっきから白亜の機嫌を窺おうとこっそりひっそり、えいやそれと心を読もうとしたのですが、結果は残念無念、さっぱり読めやしません。勿論、操れもしません。元々操ったりはしないのでそこに関しては別に良いんですけど。


「……何故?」


「白亜が角を折ったのが原因でしょう」


 分かりきった事なので即答します。むしろ、聞かれた事が何故という感じなんですけど。


「質問ですが、妖怪の能力とはこういう角とかが無くなると使えないのですか?」


「……」


「白亜?」


 俯いてなにも答えない白亜。それが心配になり、首を曲げて彼女の顔を覗こうとしますが、その前に白亜が顔を上げました。


「……無い、普通は。……ただ、何らかの外的要因か内的要因により目覚める事はある。……でも、何かが無くなると能力が使えないというのは無い」


 その物自体が能力を持っているなら別、と付け加えてまた俯いてしまった白亜。

 物自体が能力を持つ…。しかし、私の角は体の一部。言わば私自身。白亜の言った物自体が能力を持つというのは当てはまらない。

 という事はつまり…、


「全くわからない」


 こうなりますよねぇ。いや、だって本当に分からないでしょう? 何で角が折れたら能力が使えないのか。

 個人的で自己満足な解釈で良いのなら、これはそういうものという事にしておきましょう。というか、別に興味が湧かないので気にもならないんですよね。ハハハ。


「……勝手な推測」


「ん?」


「……たぶん、ココロには別に能力があると思う。……【心を操る程度の能力】は上辺の能力で、別に本当の能力が」


「ふーん」


「……無関心?」


 別に興味ないですし。薄々分かっていたのですが、どうやら私は自分の興味が湧く事にしか本当に関心が湧かないと言いますか、行動を起こさないんですよね。自覚してどうにかなる様なものではありませんけど。


「まあ、そうですね」


 横に置いてあった私の座高を優に超す瓢箪の取っ手を掴み、お酒を一口。うん、美味しい。

 ところで、この瓢箪ですが、中に酒虫ちゃんが居続けてくれたお蔭で、味は落ちますが自動的にお酒が作れるようになりました。イエーイ。

 あと、この瓢箪、何故か滅茶苦茶堅いです。私が本気で殴っても傷一つ尽きませんでした。何なのでしょうね、この瓢箪。いや、私が作ったんですけど。

 取っ手は上の方に一つ(主に呑む時に使う)、下に少し大きめの取っ手が一つ(主に武器として使う時に。両手持ち可)付いています。私の身長より少し小さいぐらいの大きさなので、こうでもしないとお酒が呑みにくいんです。因みに、重さは苦になりません。少し勢いづけて置いただけで地面に陥没するぐらい重いんですけど、まあ、私って鬼ですし。


 閑話休題。


「……ごめんなさい」


「え?」


「……取り乱しとはいえ、角を折って能力を使えなくしてしまった」


 あ、あれって取り乱してたのですか。基本的に白亜って無表情ですから分かり難いんですよね、そういう心の機微が。

 まあ、だから私の能力をあのように評価したのかもしれませんけど。


「ま、別に良いですよ。きっとお酒でも呑んで寝ていれば明日には生えてますって」


「……鬼の角は生えてくるようなものではない」


「まあまあ」


 ぶっちゃけ、心が読めなくても困る事はそこまで無い。強いて言うなら、白亜との意思疎通が若干億劫になるかもしれませんが、私達は妖怪、そこは時間が解決してくれるでしょう。


「という訳で、気にしない」


 立ちあがって、お酒を煽る。ゴクゴクと一気呑みすると、少し体が温かくなってくる。うん、良い気分です。無くなった物はしょうがない。これからどうするかが大切です。


「……許してくれるの?」


「別に初めから怒ってませんよ」


 吃驚はしましたけどね、と付け加え、今夜の食料を求めて行動の準備をする。今夜は肉が良いですね。いつも肉なんですけど。

 白亜はまだ動物を仕留められるほど体を動かせないのです。あくまで生活する分には、と言ったところなので、素直に山菜採りをして貰っています。


「……ありがと」


 後ろからそんな声が聞こえた気がしたので、それに対する返答と行ってきますの意を込め、手をヒラヒラと振り、食材求めてゆっくりと歩いていきました。






~おまけ~


 翌日。


「あ、角生えてますね」


「……嘘、でしょ?」


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