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こんな所に……。すみません……師匠……。
──ザッザッザッ。
揺れが地面を伝わってくる。
「あーあ、もう終わりかよ。ま、ニンゲンにしては持った方だな」
「ガハハ、悲しむことはねぇ。すぐにあの女も地獄へ送ってやるよ」
ついに目の前まで来た彼らは、あばよ、と言って、空き缶を踏み潰すみたいに足を振り上げた。
死を覚悟した瞬間、突如として大きく白い塊が、1匹のオルグにとびかかった。倒れこむオルグ。そこにいた誰もが状況を理解できず、息を詰まらせる。
ワォォォォォォン。ワォォォォォォン。
透き通った遠吠え。
それを合図に、さらに3つの白塊がもう1匹のオルグにとびかかる。
「なんだっコイツッ!!」
「グあっ!!離れろっ!!」
ジタバタと揺れる太い脚。
ガアッッッッ。そんな断末魔が2,3度聞こえたと思うと、彼らの脚は、だらんと動きを止めた。
白い塊がゆっくりと振り返る。口元には鋭い犬歯を携え、返り血で真っ赤に染まっている。足には大きな爪が3つ。それで引き裂かれた獲物は、致命傷どころでは済まないだろう。
形容すると、狼のようであった。ただし、人間界のソレとは比べ物にならないほど恐ろしい見た目をしている。
間違いない。コイツがあの足跡の主だ。無我夢中で走ってるうちに、こいつ等の縄張りに侵入してしまっていた。
計4匹の魔狼は、死にかけの僕に気が付かなかったのか、それとも殺す価値すら無い雑魚だと判断したのか、ずり、ずり、と2匹のオルグを引きずって、どこかへ消えてしまった。
助かったのか………?
カァ、カァ、カァと鳥の鳴く声が聞こえる。汗ばんだ背はとうに冷えて乾き始めている。
日没まで、あと何分だ……?考える余裕などない。
急いで帰ろう。ボロボロの体に鞭をうち、死ぬ気で立ち上がる。
薬草を取ろうと手を伸ばした時、幸か不幸か、そのそばに、また別種の薬草を見つけてしまった。
僕はこの別種を知っている。薬草、というよりは毒草だ。姿形はとてもよく似ているが、効果は真逆。口に入れればたちまち食中毒を起こして死んでしまうのだ。
例の病が人間界で流行った時、このよく似た毒草を誤って使ってしまう死亡事故が多発した。
ふと脳裏によぎる、ある疑問。
───僕はボロボロになってまで、なぜ薬草を探しているのか?
───師匠を助けるため?
自問自答する。
───用が済んだら、どうせ殺されてしまうのに?
───あんな邪悪なやつらのために、どうして師匠は命を捧げる?
ごうごうとした火炎が脳内を埋め尽くす。全身に感じる熱さ、悲鳴、匂い。
どうせ殺されるならいっそ───。




