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3ページ目

 ──後味は最悪だった。というのも、ほとんどを丸呑みで胃に詰め込むのが精一杯だったからだ。詳しい味など知る由もない。


 師匠はしっかりと味わったらしく、まさしく苦虫をかみつぶしたような、地獄の表情をしている。


「……なあクラッジィ、聞きたいことがあるんだが」


 何とか吐き戻すのを耐えた師匠が、クラッジィに尋ねる。


「昼間の武器は、君たちゴブリンが扱うには大きすぎる。誰が使うものなんだ?」


 師匠の問いに、彼は眉をひそめた。


「……あれはオルグ用だギャ。お前たち人類との戦争で使わレた兵器ダ」


 彼は一瞬口ごもったが、ぽつりぽつりと話し始めた。


「ワシはかつて、科学者だっタ。対ニンゲン用の兵器が専門でナ、器用なワシが作った兵器は出来が良いと引っ張りだこギャった。だがニンゲンも賢くテな、段々と対策されテいった」


 闇夜の中でも黄色く光る眼は、どこか遠くを見ているようだった。


「気づケばワシはお役御免。火薬を詰めタだけの武器なんざ、時代に取り残されテ当然だ。今じゃ豚ども《オルグ》はワシの発明に見向きもしナい」


 戦争の初期、白兵戦で人類が苦しめられたのは、魔族の肉体の頑丈さと、それを活かした特攻にも似た武器だったらしい。人間を盾や防具ごと、激しい火花で巻き添えにしていくのだ。


「……じゃあなぜ、今も実験を続けてるんだい?」


 師匠は尋ねた。


「ワシにはそれしか取り柄がなイからだ。それに、やりたいことを好きにやルのが魔族ってモンだ」


 彼は強気に言い放って続ける。


「憎んじゃネぇのか。ワシの作った兵器ハ、お前らニンゲンを山ほど殺してル」


 彼は小さな両手を握りこみ、静かに目を落とした。


 師匠はその拳をゆっくりと包み込む。


「……私たち人類も、大勢の魔族を殺している。でも、ようやくその戦争が終わったんだ。もっと知りたいと思わないか、お互いのことを。どうしたら殺せるのか、じゃなくて、どんなふうに生きているのかを」


「……アホなこと言っテんじゃねぇよ。魔族全員がワシみタいな変わりモンだと思うなよ」


 だがな、そう言って続ける。


「時代を変えルのはいつも、そんなアホな奴らだ」


 彼はまっすぐと師匠を見つめた。呆れたような、それとも期待したような、そんな目だった。


 その後も師匠とクラッジィは幾つか会話を重ねていたが、何を話していたのかよく覚えていない。師匠が宿も寝袋もないことを伝えると、彼は数日間、工房の隅を使う許可をくれた。


 彼らの会話を聞き流しながら、隅の方でじっとしているといつの間にか緩やかに眠りに落ちていた。


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