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14ページ目-3章-

 エントたちに別れを告げて、僕たちは次にペンダントが示す街へと歩を進めた。彼らは餞別に一握りの路銀を恵んでくれた。


 ちなみに例のせいれいはというと、目の前で元気に腕を振って行進しているのがそうである。実態、それも人間の姿になったことは初めてだから、体を慣らしているそうだ。


「君って食事とかどうするんだ?」


 街までの道中、行進中の精霊にそう尋ねてみた。


「そうねえ。普通にあなたたちと同じ食料から栄養摂取できるわよ。この姿だとむしろそっちの方が効率いいかもね」


 一見すれば貴族と見間違うほどの麗しい少女はそう応えた。


「なるほど。それと名前はあったりするのか?」


「霊体のころは特に無かったけど、人間は個別に名称があるものね。私もそれに倣おうかしら」


 それを聞いた師匠がすかさず提案する。


「じゃあ、エルヴィアはどうだい?幼い頃に読んだ絵本にそんな名前の美しい精霊がいたんだ。君とそっくりのね」


 師匠が言ってる絵本とは、精霊が困った人々を助けるために世界中を冒険するファンタジーのことだろう。人間界でそこそこ有名な絵本で、僕もその名前は知っている。


 精霊は口の中でその名を反芻する。


「エルヴィア……。悪くないわ。親しみを込めてエルちゃんと呼んでもいいわよ!」


 どうやら気に入ったらしい。そうして彼女の名はエルヴィアということに決まった。


「いいね、エルちゃんか!まさか精霊と旅をできるとは思わなんだ」


 わはは、と師匠は笑った。


 森を抜けて、さらに広がる草原も抜けると砂漠のようなカラカラの大地が僕たちを出迎えた。まばらに草は生えているが、どれも細かな砂が積もっており、踏むとザフリと舞う。


「師匠、何か見えます」


 砂の粒子に紛れて、遠くにうっすらと建造物が見えた。まるで城のようで、周囲には背の高い石壁がそそり立っている。


「エルちゃん、あれが目的地か?」


 師匠は目を細めた。


「そうよ。あれがバフォルグたちが統治している国。内情は私も何も知らないけどね」


 国に近づくにつれ、ペンダントが淡い熱を持ち始める。どうやら目的地はこの都市で間違いなさそうだった。


 入口らしき門の目の前までたどり着くと、そそり立つ石壁の威圧感が肌に伝わってくる。砂岩造りの大きな門の左右には、柄の長い斧を構えた2体の牛頭族バフォルグ像が鎮座していた。


 2足歩行で、巨木のような腕を持ち、体中に猿のような体毛が生えている。特徴的なのは顔面で、牛の生首がそのまま据えられているようである。


「止まれ!何用だ!」


 城門のそばにあった関所のような小屋から声が響く。


「近隣の国々を旅している。この国に立ち入ることは可能か!」


 師匠は彼らに聞こえるよう声を張った。


 小屋の扉が開く。中から出てきた生物は、城門にある2体の像を人間ほどのサイズに縮めたような姿をしていた。


「貴様ら、どこから来た。この辺の種族じゃないな」


 全身が茶色の薄毛で覆われ、金属でできた腰巻をつけている。頭からは立派な角が二本生えており、その雄々しさがひしひしと伝わる。


 さらに彼らの背丈と同じくらいの斧をしっかりと握りしめた筋骨隆々な肉体は、オルグとは比べ物にならないほど引き締まっていた。


「私たちは人間界から来た人間だ。あなたたちに危害を加えるつもりは全くない」


 それを聞いたバフォルグは目玉を丸く見開いたが、すぐに鋭い眼光へと戻した。


「ニンゲン……? にわかには信じがたいが……。武器の有無と素性を改める、不審な動きをしたら、即処刑だと思え!」


 彼は斧の柄を威圧するように地面に打ち付ける。


 彼は見るからに守衛だ。そりゃ、こうなるよな。だがこんな扱いも2回目となると、初めての時よりは心を落ち着ける余裕があった。


 ただここには、そんな乱暴な扱いに慣れていない精霊が1匹。足をガクガク震わせ、僕の裾を強く握りしめてきた。


「ね、ね、ねえ! いつもこんなバカ正直に話してるの!? 今までよく生き残れたわね!」


 涙ぐむ彼女を見ていると、自分は何だかもっと冷静な気持ちになれる気がした。


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