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崩れたオフィスと熱源の報せ

第一章:失われた空と鍵

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この世界には、昔“青空”ってやつがあったらしい。

俺は見たことがないけど、人はそれを「自由」とか「希望」とか呼んでたって、誰かが言ってた。


でも今、空はいつも灰色で、どこを歩いても同じ色をしている。


それでも、俺たちは歩く。俺と――カナメ。


無表情で、口数も少ない。でも、意志はちゃんと伝わってくる。

必要なことは話すし、無駄なことは言わない。そういうやつだ。

だけど、ここから話すのは、俺がまだあいつに会う前、出来損ないだった頃の話だ。


【回想】――通り過ぎたビルの影


あの頃の俺は、マジでひどかった。

自分が何のために銃を持ってるのかも分かってなかったし、誰の役にも立てないって、自分で勝手に決めてた。


一人で歩いて、一人で飯食って、一人で寝て。

人と関わるなんて考えもしなかった。


ある日、崩れかけたオフィスビルの前を通りがかった。

入り口は崩れて、窓は割れて、鉄骨がむき出しになってて、風が吹くたびギシギシって嫌な音を立ててた。


「……絶対に入りたくねぇな」


そう言って、俺はそこを通り過ぎた。

理由なんて簡単だ。怖かったんだ。

あの頃の俺は、自分が一番弱いって知ってたから。


【現在】――崩れかけたオフィスビルにて


「入り口、塞がってる。非常階段から回る」


カナメの言葉に頷いて、俺たちは裏手へ回った。

あのとき通り過ぎた、崩れかけたオフィスビル。

今は、カナメと二人で中に入ろうとしている。


あの頃と今とじゃ、見える景色が全然違う。

今の俺には目的があって、隣には――カナメがいる。


ビルの中は荒れ果てていた。

壁は崩れ、天井はところどころ落ち、鉄の臭いが鼻をつく。

誰かがここで戦ったか、それとも壊されたまま放置されただけか。


「資料室が残ってる。探すぞ」


カナメの声は落ち着いていて、無駄がない。

俺はそれに従って、散乱したロッカーのファイルを漁る。

埃まみれの紙の束。字がにじんで、読み取れるのはほんのわずかだった。


でも、その中に、目を引く報告があった。


===========【報告書抜粋】===========

発信元:旧セキュリティ監視センター西支部

日時:記録不明(タイムスタンプ破損)

対象:大型暴走個体


内容:西地区運動公園付近にて、高温反応を伴う大型機影を確認。

昼間に限って定期的に巡回行動を行う。

現地調査班との通信断絶。接触は推奨されない。


備考:対象は不規則な熱パターンを持ち、周囲環境に影響を与える。

※映像ログは破損。再解析中。

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「……西の運動公園、か」


俺がつぶやくと、カナメはファイルを閉じて頷いた。


「次の目的地だな」


「おいおい、あんまりサラッと言うなよ。あそこ、ただの公園じゃなさそうだぞ」


「わかってる。だから行く」


即答だった。ほんと、カナメってやつはブレねぇ。


ビルを出るために階段を下りながら、俺はカナメに聞いてみた。


「なあ、カナメ。お前、怖くねぇの? また何かとんでもねぇのが出てきたらさ」


「怖い。でも、それで止まる理由にはならない」


――ほんとこいつ、何気に熱いこと言うんだよな。表情ひとつ変えずに。


「まったく……いいぜ。びびってんのは俺の役目ってことでな。

前衛は任せたぞ、うちのクール担当さんよ」


カナメは、ほんのわずかに口元を動かした。

笑ったのか、単なる風のせいなのか……たぶん前者だと思う。というか、そういうことにしておく。


灰色の空は、あの頃と同じで、何も変わってない。

でも、俺たちは変わった。出来損ないだった俺が、今はカナメと肩を並べてる。


「運動公園。さて、何が出るやら」


「行くぞ」


俺たちは歩き出す。

空が取り戻されるその日まで、前に進むしかないんだ。

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