影の騎士、出現
第四章「鍵と騎士()」
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X地区・工業地帯。
金属の匂いと錆の粉が空気を満たす廃墟の迷路を、俺とカナメは慎重に進んでいた。
ここはかつて、何千という機械が動き、人間の文明を支えていた場所。
今はただの、死んだ世界の残りかすだ。
「足音、消せ」
カナメが小さく言う。少年らしからぬ声で、無駄なく、冷たく。
「……了解」
俺はアサルトライフルを肩に構え、周囲を警戒した。
そして――聞こえた。
金属が地面を叩く、鈍く重い音。
「来るぞ」
カナメの声と同時に、廃墟の奥から、それは現れた。
赤黒い装甲。鋼鉄の外殻。
まるで西洋の騎士を思わせるフォルムと威圧感。
肩には紋章のような模様。剣と盾が一体となった腕。
そいつは、どこか“美しさ”すら感じさせる、異形のロボットだった。
そして……それは、喋った。
「……ようやく来たか、人間どもよ」
俺とカナメは同時に息をのんだ。
こいつは、ただの暴走ロボットなんかじゃない。
「言葉を……話してる……」
「貴様らがここまで来るとは思わなかった。だが、ここで終わりだ」
その声には、機械音に混じって“憎悪”があった。
それも、深く静かで、研ぎ澄まされた怒り。
「こいつが……ラスボスかよ……」
思わず、俺の喉から言葉が漏れた。
「我はM-08。かつて人間と並び立った……騎士」
機械の目が、赤く光る。
「だが人間は我を裏切り、騙し、見捨てた。今こそ、その報いを受ける時だ」
カナメが、剣に手をかけた。
「問答無用か!?」
俺は声を張るが、手のひらには汗がにじむ。
その瞬間、騎士が地面を踏みしめた。
ドンッ!――
空気が割れた。
騎士の剣が一閃し、カナメが後方へ吹き飛ぶ。
俺も慌てて物陰に飛び込んだ。
「カナメ! 無事か!?」
「……まだ戦える」
息を切らせながらも、少年の声は冷静だった。
「我が剣は、人間の罪を裁く刃」
騎士はゆっくりと俺たちに迫ってくる。
俺は震える指で引き金を引いた。
銃声が鳴る。だが、弾は奴の装甲に弾かれていく。
「くそ……こいつ、マジでやばい……」
「退かないぞ、ユウト。前に出る」
カナメが立ち上がり、剣を構えた。
「お、おう……前衛は任せたぞ……っ!」
煙幕弾を投げ、俺は必死に援護射撃を開始した。
鉄と火花、銃声と剣撃。すべてが重く、響く。
「これが……本当に最後の敵なら、ここで終わらせる!」
――そう信じてた。
けど、それはまだ、“始まり”だったんだ。
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