あの時、SとRが日記を書いていたら…(1)
ー2人が日記を書いていたら 本編前ー
(22話までの内容を含みます。微ネタバレ注意)
松野世奈
5月24日
勉強をしても達成感が無いのに気付いた。でも何となく理由はわかる気がする。
それは通信制の高校の勉強レベルが低いからだと思う。お母さんが求めているレベルは遥か上と言っても良いし、1年生の頃は中学生の内容を復習しているだけだった。
だからテストで良い点を取ってもそれが当たり前って思っちゃうんだろうな。
今日の夕方、スターラインの握手会の当落選発表があった。本当は2回くらい凛奈に会いたかったんだけど、当たったのは1回だけだった。
でも当選出来なかった人も居ると思えば当たっただけ良いと思える。
今度は何喋ろうかな。印象に残るネタを考えても凛奈の目の前に行くと真っ白になるから無駄に近いんだけど。
早く会いたい。本当に会いたい。凛奈が居るからあたしは生きれる。そういえば、そろそろファンレターも書かなくちゃ。
7月31日
卒業ライブに行った。グッズだけ買って帰った。
なんかもう死にたい
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篠崎凛奈
4月16日
今日スターラインのメンバーに卒業すると告げた。最初はみんな驚いて、その後すぐに泣き顔に変わった。
思った通りの反応だけどやっぱり何も感じなくて作り笑いで宥めてあげた。
まだ一緒に活動したいとか、行かないでとか言って引き留めようとするメンバー。そろそろ時期かと思ったと納得したスタッフさん達とは真逆だ。
一般的には嬉しいと思う。でも私は心の中でため息をひたすらついていた。
でも本当にやっと終われるんだ。同時に芸能界も引退するからアイドルの篠崎凛奈も殺せる。
もう誰かの目を気にしながら生きるのは懲り懲りだ。誰かのために押さえ込むのも2度とやりたく無い。
一応、ファンの人には色々と騙した申し訳なさはある。でも卒業する申し訳さなんてはこれっぽっちもない。
これは私の人生だ。ファンの人の生きがいとか知ったこっちゃない。たぶん。
私の人生はアイドルを卒業すれば終わる。生きることさえも疲れた。こうやって文章を書くのも疲れる。
後は、事務所が言うままに仕事をしよう。もう全てが最後なのだから。
7月31日
卒業ライブが終わった。残りにするべきことは1つだけ。
もう死のう。




