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【完結】アイドルの君が死んだ後  作者: 雪村
7章 不幸気取り 〜篠崎凛奈〜
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46話 ゴミ屋敷での再会

 ザワザワと外から声がする。

 「疲れたね」「でも楽しかった」と馴染みのある声が。


 私は閉じていた瞼をゆっくりと上げて扉の方に顔を向けた。ガチャリとした音と共に扉が開く。


「ふぅ〜何か飲もっかな…………え」

「ちょっ、急に止まんないでよ………ん?」


 最初に入ってきた後輩メンバーは私を見た瞬間、身体を固まらせる。後から来た子も思考が停止したように目を点にしていた。


 私が居ることに目を疑っているのか、一向に話さない2人。そんな後輩達に私は声をかけた。


「イベントお疲れ様。お邪魔しているわね」

「お化け…?幻覚…?凛奈さん…?」

「凛奈さんだ!ちょっとみんな!凛奈さん来てる!!」


 我に返った1人の子がそう叫べば廊下が一気に騒ぎ出す。地鳴りのように足音が聞こえたと思えば全員が楽屋に戻ってきた。


「マジの凛奈さんじゃん!」

「お久しぶりです。会えて嬉しいです…!」

「やばい感動で泣きそう」


 離れて半年も経ってないのに随分とオーバーなリアクションだ。


 でも演じているようには見えない。この子達は心から再会を喜んでいる。


 それが私の心に棘を刺した。


「ほら!みんな中に入った入った!廊下渋滞しちゃうよ」

「あっ、キャプテン!凛奈さんが…」

「うん知ってる。私が呼んだからね」


 後輩メンバーを楽屋へ押していくキャプテンは満面の笑みを浮かべている。


 そんなに会いたがって居てくれていたのか。憂鬱なんて思ってしまったのが申し訳ない。


 私は椅子から立ち上がると、駆け寄ってくるメンバー達に微笑みを向けた。


「凛奈さん最新曲聞いてくれました?」

「再会のハグしましょう!」

「実は前、インタビューで凛奈さんのことを…」

「はいはい。ちゃんと聞くから。その前に私から1つ良い?キャプテンも含めてなんだけど」

「どうした?何か報告?」


 私は振り返って楽屋を見渡す。マネージャーさんにも頼まれていたし、私もこれは流石にと思っていた。


 ここはガツンと言ってやらなくては。スターラインの楽屋は汚いなんて噂が知れ渡ればイメージダウンにも繋がるだろう。


 私は呆れながらメンバーへと向き直る。そしてゴミ屋敷と化している楽屋に指を差した。


「この楽屋の有り様はどういうことかしら?」


 冷ややかな視線を送ればみんなの顔が真っ青に染まり出す。キャプテンに至っては、最年長らしからぬ様子で後輩にしがみついていた。


 数秒後。メンバーは怯えた様子のまま黙って片付けを始める。


 最初からそうすれば良いのに。


 ふと、楽屋の入り口を見るとこっそり覗いていたマネージャーさんと目が合う。その直後、私にお礼を言うように何度も頭を下げていた。

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