第一章 蒼銅の記憶
よろしくお願いします。
第一節 最低評価の烙印
秋月蓮は、冷たい金属製の椅子に座り、スクリーンに映し出された数値を眺めた。
1000/140
それが、彼の適性検査の結果だった。
これで3度目の最低評価。
目の前の無機質な画面には、彼がいかに「無能」であるかを証明する冷酷なデータが並んでいた。
《秋月蓮、適性値0.2、評価:廃棄対象》
――廃棄対象。
その言葉が、じわりと胸にのしかかる。
ソルジャースクールの厳しいルールでは、戦士に相応しくない者に与えられるのは「死」だった。
貴重な資源を無駄にする余裕など、この世界にはない。
地球外生命体――通称「ヴィアス」。
人類を絶滅の淵へ追い込んだ未知の敵に対抗するため、各国は軍事統制を強化し、優秀な兵士だけを厳選して育成する「ソルジャースクール」を設立した。
ここでは、優秀な者だけが「人間」としての権利を得る。
それ以外の者は――エネルギー資源として還元され、新たな戦士を育てるための糧とされる。
蓮はこれまで二度、適性検査を受けてきたが、そのどちらも不合格。
そして今回、三度目のチャンスすらも潰えた。
『秋月蓮さん、リサイクル前の自由が与えられます。168時間です。要望がある場合は3時間以内に申告してくだい。』
淡々と告げられる機械音声。
審査官ですらいない。ただのAIが、彼の生死を決定する。
背筋が寒くなるのを感じた。
生きるために努力したはずなのに、結果は変わらなかった。
「……もう三度目だからな、人の扱いですらな。……いや時間を与えられているから、動物くらいとは思ってるかもな。」
乾いた笑いが出てくる。
「……待てよ」
蓮は口を開いた。
「三度の不合格は即廃棄処分」と規則にあるが、ただ一つだけ例外が存在する。
""ドーピング強化手術。**""
「俺は……強化手術を申請します。」
沈黙が降りる。
数秒後、AIが処理を完了したのか、スクリーンに新たなデータが表示された。
『要請受理。強化手術の適用対象と認定』
『成功率:14%』
「……たったの14%かよ」
蓮は自嘲気味に笑った。
――14%。
つまり、成功する可能性はほぼない…ということだ。
しかし、選択肢はなかった。
「生きるためなら、何だってする……!」
---
拙い文書を読んでいただき有難うございます。感謝感激であります。