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剣王戦記  作者: 朧月 氷雨


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第31話 重要な休息

 暑い日差しが照り付ける中、私たちは草原の中を突き抜けるように続いていく街道をひた歩く。

 旅する人々の足や馬車の車輪などで踏み固められた街道には草一本生えてはいない。

 その街道が続く先には、はるか遠くに街が朧気に見えている。

 今日中には、あの街まで辿り着きたいところだ。

 セレスさんとマックスさんの二人は、私よりも十数メートル先を談笑しながら歩いている。

「はあ……はあ……」

 私の後ろからは、数歩遅れながらも息も絶え絶えな様子のニット君が必死についてきていた。

「ニット君、大丈夫?疲れていない?」

 私は足を止めて振り返る。

「だっ……大丈夫。疲れてなんていないよ」

 額から流れ落ちる汗を腕で拭いながら、必死の形相で答えてきた。

 見るからに披露している。

 私が一歩歩くのに対して、歩幅の小さいニット君は二歩歩かなければならない。

 つまり、私の倍歩いていることになる。

 それにまだ子供だし、体力だって豊富というわけではない。

 歩いて旅をするのは、かなり酷なことだとも思う。

 乗り合い馬車などに乗れば、比較的楽に街から街へと移動は簡単にできる。

 けれど、あえてそれはしていない。

 自分の足で歩いてこその旅だと私は思っている。

 それに付き合わせてしまっていることは、申し訳なくは思うけれど、乗り合い馬車は意外とお金がかかったりもする。

 それも護衛付きの乗り合い馬車は、かなり高額な運賃を取られる。

 何かあれば護衛の人が守ってくれるので安心はできるけれど、そこまで懐事情が温かくはないので、出来るだけ自分の足で歩いて移動するしかない。

「少し休憩しようか?」

「全然平気だよ。僕、まだ歩けるもん」

 明らかにやせ我慢している。

 正直に少し休みたいと言ってくれる方がいいんだけれど。

「セレスさん、マックスさん」

 私は先行している二人の背に声を掛けた。

「どうしたんだい?お嬢ちゃん?」

 二人は足を止めて振り返る。

「少し休憩したいんですけれど」

「ああ、休憩かい……なら、あそこの木の下でしようかねぇ~」

 街道から少し外れた先に数本の木が立つ場所を指さしながらセレスさんが答えてきた。

「若干、日差しが強いからな。木陰で休んだ方がいいだろう」

 マックスさんはそう言って、セレスさんとともに街道を外れて木の方へと歩いていく。

「ニット君、あそこの木のある所まで頑張りましょう」

「うっ……うん」

 彼は戸惑いの表情を見せながら、小さく頷いていた。

「あの……アテナ様……僕、本当に大丈夫だよ。まだまだ歩けるよ」

 ニット君が、そう訴えてくる。

 口ではそう言ってはいるものの、見るからに疲れているのは火を見るよりも明らかだ。

「そう。私が疲れたから、ちょっとだけ休みたいの。もうちょっとだけ、がんばってね」

 私が手を差し出すと、その手をニット君は握った。

 私の顔色をうかがう様に下から見上げてくる。

「……」

 ニット君は、何か言いたげな表情をしている。

「こう日差しが強いと体力を消耗しちゃうから、こまめに休憩した方がいいのよ」

 私は、にこりと微笑む。

 ニット君は、自分のせいで休憩することになってしまったのではないかといった表情をしていた。

「あ~、疲れた……」

 私は木の下までやってくると、少し大げさに声を上げて座り込んだ。

 私の隣にちょこんとニット君が座り込む。

「今日は日差しが強いねぇ~」

 うとましいといった目つきで空を見上げてセレスさんはぼやいていた。

 ギラギラと容赦なく照り付ける太陽は、元気いっぱいの様だった。

「日陰に入るだけでも涼しいな」

 木の陰に隠れるようにマックスさんは座り込んで日差しを避ける。

 スゥ~と草原を駆け抜けていく風が地面の草花をはかなげに揺らした。

 このほのかに吹き抜けていく風が、程よく汗をかいた身体を通り抜けて行き、心地良い。

「はい、ニット君、お水よ。少しづつ飲むのよ」

 背負い袋ナップザックから取り出した革製の水袋を手渡しておく。

「うん」

 ニット君は頷くと、水袋の先に取り付けられたコルクを引き抜き、動物の骨を加工して作られた注ぎ口に口をつけて水分補給をしていた。

「干し肉もちょっとだけだけど、食べておくと良いわよ」

 皮袋から干し肉を二枚取り出す。

 一枚はニット君に渡す。

 もう一枚は、私の口に入れる。

 固く乾燥させてある干し肉は、口に入れた瞬間に水分を持って行かれるけれど、何度も噛みしめていると次第に柔らかくなっていく。

 柔らかくなれば、凝縮された旨味がしみだして、口の中に濃厚な風味と味わいが広がった。

「う~ん、美味しい」

 干し肉をかじる私の姿を見て、ニット君も干し肉を食べ始めた。

 固い干し肉に苦戦しながらも、何度も噛みしめている。

 焦って食べようとしているみたい。

「もっと落ち着いて食べた方がいいわよ」

 私は味わいながら、ゆっくりと干し肉を食べていく。

 それを見たニット君は、私の方をチラチラと見ながらゆっくりと租借そしゃくしていた。

 薄い雲が風に吹かれてゆったりと流れていく。

 少しでも陽が陰ってくれると、この暑さも和らいでくれるはずなんだけれど、お天道様てんとうさまは相当元気な様子だった。

「暑いねぇ~」

 木陰に隠れながら座り込むセレスさんは、降り注ぐ日差しを睨みながら呟く。

「だが、風が吹くとだいぶ違うな。木陰にいるだけで涼しいぜ」

 マックスさんはリラックスした様子で、その場に寝転がっていた。

 皆それぞれ、ゆっくりと休憩を取っていく。

 無理をして歩いて行っても、肝心な時に疲労で行動できないのでは話にならない。

 この先で魔物と遭遇するかもしれない。

 または、盗賊などの悪者と出くわすかもしれない。

 そう考えたら、この休憩は必要なことだ。

「この調子なら、夕方までには街に辿り着けそうだねぇ~」

 はるか遠くに見える街へと視線を向けながらセレスさんが何気なく呟いた。

「あぅ~……ごめんなさい」

 突然、ニット君が申し訳なさそうに声を上げた。

「どうした?ボーズ?」

 急に謝りだしたニット君に、マックスさんは怪訝な顔を向けた。

「僕が歩くの遅いから……僕のせいで休憩とったから……」

 どうやら、今こうして休憩していることを気にしているようだった。

「何言ってんだい。疲れたんなら、正直に言いな。無理して歩いたって良い事は何もないよ。休憩は必要なことだよ」

「そうだぞ、ボーズ。誰もボーズのせいだなんて思っちゃいね~よ」

「急いで街まで行かなければならないわけではないんだから、気にしなくていいのよ」

 私は、干し肉を口に咥えたまましょんぼりとしているニット君を抱き寄せると頭を撫でた。

 誰も怒っていないし、ニット君のせいで街に辿り着くのが遅れるとは言っていない。

「でも……」

「お嬢ちゃんの言う通り、急いでいるわけじゃあないんだから、気にすることはないよ。今はしっかりと休憩して、万事に備えられるようにしておきな」

「この先で魔物と遭遇するかもしれん。盗賊に襲われるかもしれん、何があるかはわからん。その時、疲労で戦えないんじゃあ話にならんからな」

「この休憩は必要なことなのよ。だから、しっかりと休んでから歩き出しましょう」

 私は微笑む。

 ニット君は、私、セレスさん、マックスさんの順番に顔を見渡していく。

 誰も怒っていないし、怖い顔をしてはいない。

 ニット君のせいだとは誰も思っていない。

 それを実感できたのか「うん」とだけ頷くと、水袋の水を一口口に含むとゆっくりと喉を潤していた。



「さて、そろそろ出発しようかねぇ~」

 十分な休憩を取ったので、セレスさんが立ち上がった。

「ああ、そうだな」

 寝転がっていたマックスさんも起き上った。

「ゆっくり休めた?」

 革製の水袋の注ぎ口にコルクで栓をして背負い袋ナップザックに仕舞いながら、ニット君に尋ねると「うん、元気いっぱいだよ」と元気に答えてくれた。

 やっぱり、休憩を取って正解だったと思う。

 ニット君は元気を取り戻してくれたみたいで一安心だ。

 先に歩き出したセレスさんとマックスさんの後を追う様に私はニット君と手を繋ぐと歩き出した。

 強い日差しは相変わらず私たちを照り付けてくる。

 じわじわと汗がにじんで肌を濡らしていく。

 それほどまでに今日は暑かった。

 街に着いたらお風呂に入りたい気分だ。

 時折、私たちの身体に触れるように吹き抜けていく風が吹いてくれるのはありがたい。

 生ぬるい風だけれど、無風よりはマシかな。

 ちょっとでも涼しく感じるだけで、重たくなっていく足取りが少しは軽くなっていくような気がする。

 街道の脇に、所々、大きな岩がポツンポツンと転がっている。

 先ほどまでは何もなく見晴らしがよかったけれど、この辺は岩が視界の邪魔をするようにあった。

 こういう場所では岩の陰に何かが隠れていることがある。

 何かとは、危険な存在のことだ。

 それは魔物だったり、盗賊といった旅人にとっては障害となるもののことを言う。

 案の定、それは岩の陰から突然現れた。

「気を付けな」

 セレスさんが声を上げたのとほぼ同時に出現していた。

「グルルルルル……」

 喉を鳴らして、獣の咆哮を上げるそれは。

「狼の群れかよ」

 背中に背負っていた大剣グレイトソードの『ドラゴンバスター』を引き抜きながらマックスさんが呟いた。

 私たちを囲むようにセレスさんとマックスさんの前に四匹の狼が立ちふさがる。

 逃がさないとばかりに、私とニット君の背後に三匹の狼が陣取ていた。

 全身を白い体毛に覆われ、顔や耳、背中に尻尾の先は茶色の体毛が混じった狼たちだ。

「魔物ですか?」

 私は腰にぶら下げていた長剣ロングソード……『聖剣エクスカリバー』を引き抜きながら尋ねた。

 ニット君も腰の鞘から小剣ショートソード……『エアブレード』を引き抜いていつでも戦える体勢をとっていた。

「いいや、こいつらはただの獣どうぶつだねぇ~」

 太ももにくくり付けた鞘から白と黒の短剣ダガー……『白銀しろがねの刃』と『黒鉄くろがねの刃』を引き抜いて逆手に構えながらセレスさんが答えてくれた。

 動物は、魔力を一切持たない獣のことをいう。

 逆に魔物は、魔力や魔性、多少の知性を持った存在のことを一括りにして、そう呼んでいる。

 大雑把に魔力を保有し、魔法を使用するような動物は、魔物として扱われる。

 口から炎を吐いたりするような動物は、見た目的には動物であっても魔物として分類している。

 体長が異常に大きな動物も魔物としている。

 魔性を持つ存在とは、人間に対して敵意を持つ人型に近い体型の化け物のことを指している。

 小鬼ゴブリンであったり、人食い鬼オーガであったり、虎頭人ウェアタイガーなどがそれにあたる。

 今回現れた狼は、ただの動物みたいだ。

 それでも狼は私たち人間にとっては脅威な存在である。

 群れで狩りをし、人間に対して臆することなく襲い掛かってくる。

 今がまさにそれだった。

「相当、腹ペコのようだねぇ~」

「ああ、俺たちに喧嘩を売ってくるとはな」

 セレスさんとマックスさんは余裕そうなそぶりを見せている。

「ニット君、気を付けて」

 私は背後の狼たちの方に身体を向けると、いつでも動けるように剣を構えた。

「うん、アテナ様は僕が守る」

 ニット君は、そう強く宣言すると私の前に歩み寄り、『エアブレード』を自らの真正面にかざすように構えた。

「ワオォォォォォン」

 開戦の合図を狼の中の一匹が上げた。

 一斉に狼たちが動き出した。

 三匹の狼が私とニット君に向かって疾走してきた。

 一匹は真正面から突っ込んで飛び掛かって来た。

 ニット君が構えた『エアブレード』が発生させた風の壁に阻まれ、その狼は弾き飛ばされていた。

 二匹はそれを見て瞬時に左右に展開した。

 私とニット君の脇から挟み撃ちにする形で飛び掛かってくる。

 ニット君は身体をよじり、剣を向かってくる狼に向けて真正面になるように構えた。

 風の壁が狼の身体を拒絶するかのように弾いた。

 弾き飛ばされた狼は、勢いよく地面を転がっていた。

 私に向かって突進してきていた狼に向かって、タイミングを合わせて横薙ぎに剣を振るった。

 私の後ろにはニット君がいるので、かわすわけにはいかない。

 だから、私は剣を振るうしか選択肢がなかった。

 大きく開いた狼の口に『聖剣エクスカリバー』の刃が吸い込まれていく。

 狼は刃を砕かんばかりに噛みついた。

 しかし、狼が噛みついた程度で砕かれる『聖剣エクスカリバー』ではない。

 『剣と慈愛の女神ブレーディア』が作り上げた聖剣は、強固で刃こぼれ一つせず、作られてから数百年経過した今でも曇り一つなく眩いばかりの輝きを放つ。

 切れ味もそんじょそこいらの剣も真っ青になるくらいに鋭利で、横薙ぎに振るった勢いのまま、口元から後頭部にかけてをスパッと切り裂いた。

 『聖剣エクスカリバー』の切れ味は恐ろしいほど鋭いと改めて感じてしまう。

 脳漿のうしょうをぶちまけながら、狼は地面に突っ伏した。

「うげっ」

 ちょっとグロかったので、私はひるんでしまった。

 そんな私に向かって狼が飛び掛かって来た。

 すかさずニット君が飛び掛かってくる狼に向かって真正面に『エアブレード』を構えて立ちふさがる。

 風の壁が『エアブレード』の手前で発生し、狼の身体を吹き飛ばした。

 その狼に向かって。

「エアブレード」

 ニット君が小剣ショートソードを振るう。

 刀身に発生した風が三日月型の風の刃を形成し、飛び出した。

 中空で一回転して、着地しようとしていた狼の身体を襲う。

 真っ赤な鮮血を飛び散らせて、狼の身体が切り裂かれた。

 地面に着地した狼の身体は、真っ二つになってその場に力なく倒れ込んだ。

 残るは、あと一匹。

「グルルル……」

 悔しそうに歯噛みしながら唸り声を上げたその狼は、ニット君が『エアブレード』を振り抜こうとした際、慌ててきびすを返して逃げ出した。

 自分では、かなわない相手と悟って逃げ出したみたい。

 無益な殺生をしなくて済む。

「あ~……逃げちゃった」

 ニット君は、残念そうな声を漏らしていた。

「なかなかやるじゃないかい、二人とも」

 セレスさんの声が背後からかけられた。

 振り返れば、セレスさんとマックスさんはすでに四匹の狼を倒していた。

 しかも、その四匹とも外傷はなさそうに見える。

 血の一滴すら垂れていない。

「えっ?どうやって倒したんですか?」

「ん?どうって……マックスは、あのバカデカイ剣で殴りつけただけだよ」

 セレスさんが指さす先には、マックスさんの手元に『ドラゴンバスター』という大剣グレイトソードがある。

 あれで殴れば一発でノックアウトできそう。

「あたいは、これで痺れさせただけだよ」

 手にしていた黒い短剣の『黒鉄の刃』にバチバチと電撃が発生した。

 狼に電撃の魔法を当てて気絶させたみたいだった。

 何故そんなやり方をしたのだろう?と疑問に思っていると、マックスさんが狼を解体し始めた。

「えっ?何を?」

 戸惑う私に「何って、カモがネギを背負しょってやってきたんだから、有効利用しないとねぇ~」と言っていた。

 いや、カモではなくて、狼なんですけれど。

「皮は敷物とかに出来るからな。肉も売れるぞ」

 確かにセレスさんとマックスさんが倒した狼は傷がないので皮をうまく剥ぐことができればそれなりのお金になりそうだった。

 対して私が倒した狼は頭部を切り裂いてしまったので、血に塗れた毛皮は商品にはなりそうもない。

 ニット君にいたっては、狼の身体を真っ二つにしてしまっているので、論外だった。

 まあ、どちらもお肉は売り物になりそうだけれど。

「解体ができるのなら、すぐにした方がいいよ。少しは金になるからねぇ~」

 セレスさんは、自分が倒した狼の皮を剥ぎ出した。

「はあ、そうですね」

 私も多少は解体はできるけれど、あまりうまくはない。

 このままここに狼の死体を残していっても、ハゲタカなどについばまれるか、他の獣に食い荒らされるか、または魔物を引き寄せてしまうことにもなる。

 燃やして処分するという方法もあるけれど、自然の恵みは感謝しながらその恩恵を得るべきだとも思う。

 私は倒した狼の肉を得るために、解体を始めた。

 ニット君は、私の脇でその様子を物珍し気に眺めていた。



 陽は完全に沈み、世界は夜の闇に覆われていた。

 月の明かりが世界をほんのり明るく照らしてくれていた。

 街は松明の篝火かがりびで夜でもそれなりに明るく照らし出されている。

「ふぅ~、何とか街に辿り着いたねぇ~」

 やや急ぎ足にはなったものの、予定していた街には無事に辿りつけた。

「すみません。解体に少してこずってしまって……」

 順調にいけばもう少し早くにこの街に辿り着けたのだけれど、狼の死体の解体に時間がかかってしまい、街に到着するのがこの時間になってしまった。

「気にすることはない。こうやって街に辿り着けたからな。まずは、戦利品を売っぱらってから、飯にしようぜ」

 かついでいる狼の毛皮を指さしながらマックスさんは愉快気に言った。

「今から、バザーで売るんですか?」

 街の広場などでは、誰でも出店できるバザーが開催されていることがどこの街でもある。

 私も何度か利用して商品を売ったことはあるけれど、さすがに夜は酔っ払いに絡まれるなどのデメリットしかない。

「何言ってんだい。冒険者ギルドで引き取ってくれるよ」

「えっ?そうなんですか?」

 そんなこと全然知らなかった。

 倒した魔物の牙や爪といった武器や防具などの素材になりそうなものは冒険者ギルドで引き取ってくれるのは知っていたけれど、動物の皮や肉も引き取ってもらえるなんて……。

「商人ギルドでも引き取ってはくれるが、あそこはシビアだからな。安く買い叩かれるから、冒険者ギルドの方がいいぞ」

 マックスさんとセレスさんは、狼の毛皮とお肉を四匹分。

 私が倒した狼で、首なしの毛皮一匹とそのお肉。

 ニット君が倒した狼は、毛皮が血まみれで商品としてはどうにもならなかったので、足を四本とそのお肉を冒険者ギルドに引き取ってもらうために向かった。

 冒険者ギルドでは、狼の毛皮はかなりの高値で買い取ってもらえた。

 それも状態が良い状態だったこともあり、喜ばれた。

 首なしの毛皮は、微妙な金額での引き取りとなり、お肉はまあまあなお金に変わった。

 ちなみに狼の足は、アクセサリーとして使えるらしく、二束三文ながらお金にはなってくれた。

 そのお金は、ニット君が自由に使っていいように渡してあげた。

「さて、美味い飯でも食おうじゃないかい」

 ふところうるおって、上機嫌のセレスさん。

「ニット君、夜ご飯は何が食べたい?」

 私は、今日一日頑張って歩てくれた彼の食べたいものを尋ねた。

「お肉食べたい」

 ニット君の口から、そう告げられた。

「俺も肉が食いてーな。腹も減ったから、さっさと行こうぜ」

 どかどかと足音を立ててマックスさんは、ギルドを後にしていく。

「私たちも行きましょう」

 セレスさんたちに遅れまいと、私はニット君に手を差し伸べる。

「うん」

 彼は、元気よく頷くと私の手を握り、一緒に歩き出した。

 美味しいお肉料理を出してくれるお店があると良いなと思いながら、ギルドを後にした。


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