家計簿
第24回新風舎出版賞、3次審査落選作品(笑)
私はトーストを食べ終わると、先程スーパーで買い物をした際貰ったレシートを財布の中から取り出し、それを眺めた―
一人暮らしをするようになって凝っているのが、家計簿を付ける事だ。家計簿を付けるキッカケになったのが、前にも書いた、実家での“一人暮らしシミュレーション”で、一人でやっていくのには、どの位お金が掛かるのかを割り出した事からだ。それ以来、家計簿の面白さにはまり、今では、決して履歴書には書けない、そして人には大きな声で言えない隠れ趣味になっている。家計簿というのは自分の性格に合っているのだろう。今月はいくら掛かったとか、先月よりもいくら安く済んだとか、その月の合計を出す月末が待ちどおしい位だ。自分には主婦の要素があるのか、そういう細かい事が好きなようだ。それは、決して重く考えず、楽しみながらやっているからだろう。給料日前とかに、後何百円で数日過ごさなければならない時なんかは、これぞ主婦の見せ所だと、むしろピンチを喜んでいたりする。
どんなお店でも何か買ったりしたら出来るだけレシートを貰うようにしている。たまにレシートをくれない店があるので、その時はこっちからねだんだりしている。あれは完全に人を見てを見てレシートを渡すか渡さないかを判断しているような気がする。なので、その店員も、まさか自分がレシートを取っているとは、ましてや家計簿を付けているとは思わなかったのだろう。お釣がある時は、お釣と同時にレシートを貰えばいいのだが、ピッタリ払ってしまった時のレシートを待つ、あの妙な間だけは未だになれない。店員の、「あ、レシート貰うんだ」的なあの感じが。
私はそのレシートを家計簿に張り付けると、皿をキッチンに持っていった。すると、まな板の上に先程束にして適当に置いたチラシが目に入った。それを手に取りよく見ると、ピザ屋のチラシとは別に、一枚のハガキが紛れ込んでいるのを発見した。表には、“アパートの再契約のお知らせ”と書いてある。―そうか、もうあれから2年が経ったのか―裏には、“再契約の際は、一度お越しになって”というような事が書かれていた。この2年間は色々な事がありすぎてあっという間だったような気がする。そして経験する事全てが新鮮で、その全てがが勉強になった。その勉強になったものが、自分の成長へと繋がっている。一人暮らしを始めて、本当に良かったと今ではそう思う。
私は、再契約をしに不動産屋に行こうと、再びビニール傘を持って外へと出た。すると、いつの間にか雨はやんでいた。空を見上げると、太陽の光が差し込み、そこには、キレイな虹がかかっていた。そしてその日、梅雨明け宣言が発令された。やがて、これから暑い夏がやってくる。
更に来年、いや、毎年この時期がやってくる度に、大人になれた気がしたあの日の事を思い出すのだろう。
私はビニール傘を部屋へと置くと、再び不動産屋へと歩いて行った。
7月の雨、そう、わるくない。
くだらないエッセイをお読みいただき、どうもありがとうございました。
これにて最終回になります。少しでも笑っていただけたのであれば、嬉しいです。
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