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キッカケ

第24回新風舎出版賞、3次審査落選作品(笑)

 7月の雨はキライだ。

 日曜日の朝、私は目が覚めると、部屋の窓を開けた。今日も当たり前のように雨が降っていた。しかし、雨といっても大降りではなく、この時期特有の小雨だ。そして空を見上げると、灰色のどんよりとした雲が、空一面を覆っていた。その灰色の雲には見覚えがあった。あの時も、こんな梅雨の時期だった。


 一人暮らしを始めて数年が過ぎ、今ではこの生活が当たり前になり、それまで親に食事や洗濯をやってもらっていたというのがウソのようだ。そもそも一人暮らしを始めた訳は、仕事の都合や、親とケンカをして、「出ていけ!」と勘当された訳ではなく、いつまでも親のスネをかじっている自分に腹がたったのと、一人暮らしをする事によって、いい社会勉強になるのではないかと思い、自分で自分を追い込んで、なんでも自分で出来るというのを自分自身に証明したかったのが、その訳であり、そのキッカケだった。

 一人暮らしをしたいと言っても、そう簡単に出来るものではない事くらいは分かっていた。それは大きく分けて2つ。経済的な面と家事の面。まず、経済的な面は、一応、就職はしていたので、一人暮らしをしていくだけの一定の収入はあった。しかし、一人暮らしを始めるにあたって、何かと消費するだろうと、まず、“100万円”を貯める事を目標にし、それが達成したら一人暮らしを始めようと決めた。しかし、一人暮らしに掛かる月の費用はどれ位なのか見当がつかなかったので、100万円が貯まるまで、それをリサーチする為に、一人暮らしのシミュレーションをしてみようと思いたった。そのシミュレーションとは、自分の部屋で、あたかも一人暮らしをしているがごとく、家事全般を一人でこなし、その費用も公共料金を含め、全て自分が出すというもので、いわば、家賃のいらない一人暮らしといった感じだ。そのシミュレーションを実践するにあたって役にたったのが、家の環境だった。というのは、実家は元々アパート経営をしていて、うちの一家もその一部屋に住んでいて、そしていつしかアパート全体を一軒家の様に使用するようになり、リフォームで部屋通しを繋げたりしたが、6つある部屋の内2つは、元のアパート時と変わりなく個室として残した。この状態を説明するのがめんどくさいが、いわば、外見はアパートで、内は2つの個室がある一軒家とでもいうのだろうか。自分で説明してても訳分からない。今まで何人の人に説明し、何人の人に「はー?」みたいなリアクションをされてきたか。一時期は、お風呂とトイレが6つずつあった訳なので、そこだけを抜粋すると、どこかの大富豪だ。仮に家族全員がトイレに入ったとしても、1つ余る。だから、家でトイレ待ちをした経験がない。そんな事はどうでもいいが、それで、その個室の一部屋を自分の部屋として貰っていて、一人暮らしシミュレーションを実践する、これ以上ない環境がそろっていた。そして、電気・ガス・水道・電話代(部屋に電話線を引いていた)を各々自分の部屋のみの料金の明細を出してもらって、月に掛かった費用を出し、家計簿も付けた。そして、その掛かった費用と自分の給料をふまえ、おおよその家賃を割り出した。

 次に家事の面だが、一人暮らしシミュレーションの中で、自然に炊事・洗濯・掃除もなんとなく身についていった。

 そんな日々が何ヶ月が経ち、一人暮らしに掛かる大体の費用が分かったのと、一人でやっていける自信がついた頃、目標の100万円が貯まり、そこで俺は、一人暮らしをする決心をした。

続く...

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