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純粋無垢で恋愛耐性0な友達の美少女は俺を告らせてくれない

作者: テル

「やっぱり新井(あらい)くんと......いると......楽しいです」

 

 紅い夕日が後ろから照らす公園のベンチにて俺、新井 木葉(あらい このは)鳳 皆穂(おおとり みなほ)は話をしていた。

 ちょうどデートが終わったばかりでデートの余韻に浸っている。


 頬を赤らめて恥ずかしそうに言う皆穂に俺はときめいてしまう。

 皆穂は高校に入ってできた初めての異性の友達だ。

 同じ本が好きということで話が弾み、そこからよく話す仲になった。


「俺も皆穂といると楽しいよ」


 皆穂はその言葉を聞き、頬を赤らませて視線をヒョイっと逸らす。


 皆穂はコミュ障らしく人と話すのを苦手としている。

 しかし俺と二人きりの時はよく自分から話してくれるので嬉しい。


 俺以外は誰とも話そうとしない、ただ容姿はかなりの美少女だ。

 おかげで学校では『無口の聖女様』、略して『静女様』などと呼ばれている。


「やっぱり新井くんはずるいです......」

「ん、何が?」

「......そういうところです」


 照れているところを見るのは非常に疲れる。

 少しでも気を抜いてしまったら顔の表情が俺も真っ赤になってしまうからだ。


 ぶっちゃけ、皆穂は俺のことを好きだと断言できる。

 そして俺も皆穂のことが好きだ。


 いわゆるお互いに両思いの状態。

 皆穂はたまに意味深的に好きと言ってくる。それに恋人繋ぎで手も繋いだし、家でお泊まりもした。

 しかし付き合っていないのには訳がある。


 

 時刻はちょうど五時。今ならばいけると思い、俺は息を一度大きく吸った。


「なあ、皆穂」

「は、はい......」


 俺は皆穂の目をはっきりと見る。皆穂もそれに気づいて見つめ返す。

 すると徐々に俺も皆穂の頬も赤色に染まっていく。


「俺、皆穂のことが好きだ。だから......」


 そこまで言ったところで皆穂は顔を真っ赤にしてクラクラとし始めた。

 顔からは湯気が出ている。


「ご、ごめんなひゃい......か、かっこいいのでこれ以上は無理です......きょ、供給過多です!」


 皆穂の目は泳ぎまくっていて、体はクラクラとしている。

 

「だ、大丈夫.......?」

「心臓破裂しそう......です」


 そう言って皆穂は俺に向かって倒れ込む。

 それを見た俺はすぐさま皆穂をキャッチする。

 

 首元を触ってみたところかなり熱くなっていた。


 (......今日も言えなかった)


 俺は皆穂の体を起こし、頬を何回か引っ張ってみる。

 しかし目は閉じたままで一向に開ける気配がない。

 顔は以前と真っ赤だ。


「季節外れの熱中症......」


 俺はひとまず近くの自販機で冷たい水を買い、そのボトルを皆穂の首元に当てる。

 するとみるみるうちに皆穂の体から赤みが引いていく。


「......ん」

「皆穂ー!」


 俺は何度か皆穂の名前を呼びながら肩を揺らす。

 しかし中々目を覚まさない。


 その無防備な顔に何度か顔を近づけそうになったがそれを堪えて、自分の頬を何度か引っ叩いた。

 

 (もう日も暮れるし、このままじゃダメだよな......)


 俺はそう思い、皆穂を抱っこすることにした。

 おんぶをしようと考えたものの、この様子だとできそうにもない。

 お姫様抱っこをするのが一番楽だろう。


 幸いにも皆穂の家まで人通りは少ないので多分大丈夫だ。


 俺は皆穂の首の後ろと膝裏に腕を通して持ち上げた。

 意外にも皆穂の体は軽かった。

 非常に華奢で繊細な体をしている。


 先ほどとは違い、気持ちよさそうに寝息を立てている皆穂を見て安堵し、俺は笑みをこぼす。


「......一人の女性として好きだよ、皆穂」


 付き合えたらなとは思う。しかし告白をしようとするといつも遮られる。

 お互いに好きだとわかっている。しかし付き合うとなれば話は別だ。

 それに俺も、大事な場面で一歩引いてしまう性格があるので結局付き合うまで行っていない。


 皆穂から告白しようとしてきた時もあったが、お互いの心臓がもたなかった。


 もう少しだけ、友達やってもいいかもなと最近は思っていた。


 そんな時、皆穂は寝言を言った。


「私も......」


 寝言でもそれは随分と嬉しい一言だった。

 そしてそれと同時にやはり彼氏として側に立ちたいと言う思いは誤魔化しきれなかった。


 ***


「皆穂ー!」

「新井くん!?」

 

 膝元にいる皆穂の頬を何度もつついていると、皆穂は目をぱっちりと開けた。


 皆穂は俺の膝から転げ落ちて起き上がる。そしてあたりを見渡し始める。

 

「あれ、私の部屋......?」

「ごめん、ちょっと家上がらせてもらった。皆穂の親がよかったら起きるまでいてくれって」

「私......すみません、また意識を失っていたのですね。お出かけした後の記憶があんまりないです」


 皆穂は申し訳なさそうに頭を下げる。

 その様子を見て俺は安心させるためにも軽く笑ってみせる。


「全然いいよ、気にしないで」

「......それでも私が許しません。新井くんに悪いです」


 皆穂はこちらを見ようとせずに俯いている。

 俺としてはそこまで気にしないでもらいたいものなのだが。


「皆穂、じゃあお礼にやってもらいたいことがあるんだけど」

「お礼......ですか、わかりました。何でもいい......ですよ?」


 んー、男子高校生に何でもいいって言っちゃいけないんだよ?


 一瞬俺の脳内に現れたアウトな悪魔を一発殴って追い払う。


 俺は皆穂に近づく。そして皆穂は目を静かに瞑った。

 生唾をごくりと飲み込む音が聞こえた。


「ん......」

「あのさ、敬語やめてくれないかな」

「はふっ......!?」


 俺はそう言いながら皆穂の頬をふにふにと両手で触る。

 (やっぱり皆穂の頬柔らかいな......)


 皆穂の頬は触り心地が良いので少し癖になっている。


 俺は少し触った後、頬から手を離した。


「友達なんだし、もうちょっと距離感近くても良いかなって......嫌ならいいんだけど」

「むしろこちらが良いのですか?」

「うん、どうせなら下の名前で呼んでよ。なんかちょっと友達っぽいでしょ?」

「じゃ、じゃあ......木葉くん......」

「っ......」


 自分で言っておいてなんだが、言われるとかなりの破壊力のものだった。

 皆穂の周りに光が出ておりいつもよりも眩しい。


 直視できずに手で目を覆うが、今度は俺の意識が飛びそうだった。


「慣れないけど......頑張ってみる」

「無理しなくていいんだよ?」

「ううん、友達っぽくて......良いかも」


 ふにゃりと皆穂は笑う。

 今日は何度この笑顔に心が射抜かれたことだろう。

 

「あとわ、私からも一個いいかな......?」

「え?」


 皆穂から俺にお願い事なんて非常に珍しい。

 皆穂は少しもじもじとしながら元々赤い頬をさらに赤らめた。


「私以外の頬を触らないでほしいな......なんて。ちょっと嫌かも」

「あはは、触る訳ないじゃん......皆穂以外の女子と接点もないし、自分から関わる気もないかな。皆穂が側にいてくれるだけで俺は良いよ」

「木葉くん......」


 若干良い雰囲気になり始めている。一歩、あと一歩踏み出すなら今しかない。

 俺は皆穂にさらに近づいた。

 そして木葉の片手を自分の両手で包んだ。


「なあ、皆穂、俺はずっと皆穂の側にいたい」

「えっと、それは......」

「ああ、彼氏として、皆穂の側にいたい」

「っ......」

「俺と......俺と付き合ってくれ! 皆穂!」


 皆穂は俺の手にもう片方の手を添えて言った。


「いいよ、私も木葉くんのこと好きだから.......だから、私こそよろしくお願いします......!」


 お互いに俺たちは見つめあった。そして同時に笑った。


 彼氏としてみた彼女である皆穂は前と変わらないのにさらに魅力的に感じる。

 俺は皆穂の頬に手を添えた。


「皆穂......」

「木葉くん......」


 段々と俺は皆穂に顔を近づけていく。


 そして......。


 しかし皆穂はお互いの唇がつく前に体をふらふらとさせた後、後ろに倒れかけた。

 俺は瞬時に皆穂の背中に腕を回して倒れるのを止めた。


「......はう」


 皆穂の顔は公園で倒れた時よりもさらにさらに赤くなっていた。

 

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