戦争を永久停止させる方法
1
「うわっ!」
刺された!ナイフで。
飲み会は強制参加。電車の駅を降りてコピー用紙に
手書きされた図を見ながら、繁華街へ。
10分ほど歩いて店を見つけて入ろうとしたら。
店の横に立っていた20才ぐらいの長髪男が、
いきなりナイフを抜いて襲いかかってきた!
腹に突き立てられた!
「ヒヒヒヒヒッ!」笑い声。
ナイフをこちらに見せる。
長髪男
「おもちゃだって!」
指で刃を引っ込めてみせる。
俺は走って逃げた。
赤の他人に、ああいう真似はおかしい。
駅前の電話ボックスの1つへ。
コピー用紙に記入されていた店の番号に電話。
「すいません、**さん、お願いします、客の、幹事の、会社名は***です」
1分後。
「あ、**だけど」
「Aです。その店やばい。ヤクザが飲み会してる。店の前でナイフで刺された。
おもちゃだったけど。あれは異常だ。すぐ解散した方がいい」
「は?何言ってんだ、来いよ」
「本当ですよ、行きません!」
「ダメだ、おまえコミュニケーション能力ないだろ、
そんなんで仕事やってけねえぞ、絶対来いよ!」
ガチャン!
「・・・・・」サラリーマンの悲しさ。上役の命令は絶対。
ビクビクしながら行く。ただし時間を置いて開始時間の30分過ぎてから。
ヤクザの飲み会開始時間は、おそらくこちらと同じ。
だから時間をずらせた。
2
同時刻。
中国、ロシアの合同爆撃機編隊16機が韓国の領海を北に飛行。
中国軍リーダー
「我々中国とロシアが歩調を合わせていることを
敵(韓国、台湾、アメリカ)に見せつけるのが今回の目的だ。
各機、目立つパフォーマンスをやってもいいぞ!」
レーダー係
「韓国空軍の戦闘機、20機が接近!」
「よし、北朝鮮の領域へ!話はついている!
3国が組んでいることを示す!」
中国・ロシアの16機は、韓国の首都ソウルの西をかすめて北へ。
3
北朝鮮の防空司令部
「緊急!爆撃機16機、戦闘機20機が首都ピョンヤンに接近!
あと20分で上空に来ます!」
司令長官
「ついに戦争を仕掛ける気か!・・・将軍に連絡を!」
「将軍はゴルフで休暇中、連絡はつきません!」
「・・・私の責任において決断する!対空ミサイル発射、全戦闘機空へ!
卑劣な侵入者を叩き落せ!」
爆撃機のレーダー係
「迎撃ミサイル多数接近!北朝鮮の攻撃です!」
リーダー「馬鹿な!話が通じていないのかっ!?
チャフ(レーダーかく乱金属)をまけ!
進路変更、西へ!」
「北朝鮮の戦闘機多数が展開!包囲されつつあります!」
「くっ!爆撃機で戦闘機相手に格闘戦は無理だっ!・・・」
ミサイルで爆撃機16機のうち、半分が破壊され、残りの半分も戦闘機群に撃墜された。
そして北朝鮮戦闘機群と、追ってきた韓国戦闘機群が空中戦で激突、これは互角の勝負。
そして地上でも北朝鮮と韓国が戦闘を開始した。
4
飲み会。大広間。40人ほどの社員たち。
Aは顔見知りが集まっている、目立たない席を選んで座った。
離れた場所、社長、部長たちの席が盛り上がっている。
新入社員が醤油容器の一気飲みをして3万円を社長からもらっていた。
そして3人の新入社員がビールを持って回り、お酌して顔見せの挨拶。
A「あっ!」
さっきの長髪ナイフ男が新入社員。
A「君は、さっきナイフで突っかかってきたんじゃ?」
長髪「いや、そうですけどね。ちょっとした挨拶って奴で」
A「ヤクザの組にでも入ったと思ってるのか。ここはまともな会社だ!」
長髪「でも~紹介してくれた先輩は暴走族ですよ~俺もだけど~」
A「えっ、そうなのか?」
隣の顔見知りの社員
「社長は元警察官だから。ワルを更生させるためにあえて紹介で雇ってるんだ」
A「聞いてないですよ。とにかく私はこういう・・・危ない連中とは関わりたくない!」
目の前の相手の悪口は言いにくくて言葉を濁した。
長髪「あんたは童顔で先輩に見えないっスよ。年ごまかしてないっスか~?」
ナイフ男はチンピラっぽい凄みモードに変わる。
5
中国の空軍司令長官
「我が軍の爆撃機が北朝鮮に撃墜された!許すまじ!
国家主席に連絡を!」
「真夜中ですから連絡はつきません。各自で判断するしか」
「ではそうする。北朝鮮に全戦力をぶつけよ!」
ロシアも同様にミサイル、戦闘機、地上部隊の戦車隊を北朝鮮に向ける。
北朝鮮は物量に対抗できず、またすでに韓国と交戦状態で対応が遅れ、中国・ロシアに侵入される。
ここで敵味方の区別ができずにロシアと中国軍が同士打ちを始めた。
北朝鮮の将軍は起死回生の手段で、モスクワ、北京に核ミサイルを発射。
しかし迎撃され、仕返しに中国、ロシアは北朝鮮を複数の核ミサイルで攻撃、
すでに爆撃で基地を破壊されていた北朝鮮は迎撃できず着弾を許す。
北朝鮮を占領していた中国・ロシア部隊も味方の核ミサイルで消滅。
中国はここで先手を打った。レーダー遮断粒子を宇宙からロシア上空に振りまく。
そしてモスクワを含むロシア各地に向けて核ミサイルを発射。
迎撃できず着弾していく。
ロシア軍司令「このままでは全滅だ、どうにかならないか?」
技術者「敵は中国。こちらのレーダーを潰された、
この状態でも敵を倒す非常の手段があります」
「どうする?」
「やり返しシステムを使います。
各国の核ミサイルの位置は原潜に至るまで把握できているので、
その位置情報に向けて撃ちます。
中国だけでなく核保有国全てに向かいますが」
「こちらが全滅するよりは。やってくれ!」
ロシアの保有する大量の核ミサイル全てが飛び立った。
ここまでは対岸の火事だったアメリカ、他の国も狙われた。
半分は迎撃したが半分が着弾。巨大なキノコ雲が各地で発生。
そして各国の緊急やり返しシステムが作動、
他国の核施設、軍用基地、大都市へ核ミサイル群が向かう。
地球上の核ミサイルすべてが本来の役割を実行する事態に。
6
飲み会の幹事に、通常の2倍ぐらいの金額を払って退出。
こういう場では多めに払うのがエチケット。
店の前に出ると。
ガラの悪い、ひとめでヤクザとわかる2組が
10人ずつ店の前の路上でにらみ合っていた。
「ここらでナイフ振り回したキチガイってのは
おまえのとこのモンか?」
「ああんっ!てめえらじゃねーのかっ!」
A「・・・・」
ヤクザの一人がこっちを睨みつける。
A「あ、私は関係ないので」去ろうとすると。
長髪「先輩~、逃げるんすか~そりゃないっしょ~」
追ってきた。
チンピラ「あ!こいつだっ!俺を刺しやがったのは!」
兄貴分「なんだと!」
長髪「いや、えーと・・・あれはこの兄貴の命令で!」
こっちを指さした。
A「いや、違う!おまえ何てことを、卑怯者!」
兄貴分「てめーふざけた真似しやがって!」詰め寄ってくる。
ダン!
その兄貴分が倒れる。「「「え?」」」
もう一方のリーダーが拳銃を持っていた。
「どうせおまえらは邪魔だ。ここで片付ける!やっちまえ!」
「「「おおっ!」」」
ドス(短刀)を全員が抜いて戦いに。
私は鞄に刃物を突き立てられ、相手の足を蹴飛ばして逃げた。
こんなことに付き合っていられない。
その上空に飛行物体が飛んできて。
花火の何百倍もの光が、全てを包んで粉砕して・・・
7
「うーむ、困るんだよね~こんな急に終わったら。
こっちの都合があるのに~どうしよ~
「覆水盆に返らず」っていうけど、でもな~」
私が気が付くと6畳くらいの部屋に居た。床はあるが天井、壁が無い。
床面以外はぼんやり色彩が動く四次元空間。
ドラえもんのタイムマシンに乗ってるような状況。
机と椅子。机の上にはパソコン。
椅子に座っているのは。
「YA!どうも、笑ってよろしく!」
あの番組の司会者に似た男。未来っぽいゴーグル。
青いファンタスティックフォーの制服。
高級なダイバー服のような。
「あなたはもしや・・・」
「そう、創造主のソウ!何度か会話したよね~テレパシーだけど」
「それで・・・私は・・・」
「状況がね~こんな感じで」
情報が圧縮ダウンロードされた。
「核戦争・・・ああ、とうとうやってしまったか。
冷戦時代(ソビエト対アメリカ)からSFではよく題材にされてたけど」
「2、3千年ごとに大量破壊兵器を作ったら、かならず使って文明後退してる。
今回は違ったアプローチを用意してたんだけどね~
惜しいからセーブデータからやり直ししようと思うんだ~」
A「できるんならぜひ」
ソウ「で、君に協力してほしい」
A「いいですけど。何をすれば」
ソウ「君、例のアレ用意してるよね?」
A「だいぶ前に夢で話したアレですか。そういえば用意した状態ですね・・・」
ソウ「合図するからやって。それだけ」
A「それで未来が核戦争しない方向に分岐すると?」
「そう」
「・・・まあ、いいですけどね・・・」
「じゃ!セーブデータに君を戻す。リスタート!」
パソコンを操作。
Aは意識を失う。
8
長髪男がナイフを振りかぶって。
ケンイチ流、左かわし!
体を左斜め前へ、腰を右にねじって受け流す。
敵の後頭部を思い切り正拳でぶっ叩く。
長髪男は、ばったり倒れる。
ほっておいて飲み屋の店内へ入る。
店員に「予約してある**会社の者です」と言ってから、さっきの大広間へ。
30人ほど。まだ10人は来ていない。
顔見知りに、もう一度挨拶して。
適当な席に座ろうとすると。
「おお~っ!」と歓声。社長たちの席。
立体映像で初音ミサが等身大、華麗な衣装で表示されている。
ヴァーチャルキャラクター。
「それでですね~」と社長たちと会話している。
そちらに近づく。
「これは?」顔見知りの係長に聞く。
係長
「AI制御のオンライン秘書、コンパニオン、OL。
実体のないロボット、テストタイプ。受け答えできる人工知能。
そういったものらしい」
A「そこまで科学が発展したんですか」
係長「うちの会社でも使わないかと売り込みをかけられてる」
A「まさか自分の意思を持っている?」
係長
「いや、決められたキーワードに対して答えを返すようにしているだけで、
突飛な質問には対応できない。
「綾波レイ育成計画」ってゲームが、あったろう。言葉を教えれば正確に返す。
オウム返し。それじゃあ、つまらない」
社長が「初音ミサ」と話している。しばらくして。
社長「やはりスムーズじゃないな、ちぐはぐな対応になっている。
不自然だ。人間の方がまだまだ優秀だ。対応パターンをもっと増やさないと。
今の段階では使えない。もっとどうにかしないとしょうがない・・・」
その時、ソウの声というかテレパシー。
ソウ「♪今だ、出すんだ、ブレストファイヤー~」
A「今田といえばさんまの弟子!」
ソウ「いやマジで、タイミングのがすとやばいんで!」
A「やばい時に冗談はやめてくれ!
これから無茶なことをするのに!」
脳内で、ちょっと葛藤してから。
ふう、と息を吐いて声を強く出す。
「あの、皆さん!」
一同の注目を集める。
右手で「ある物」を出して全員に示して「しょうがある!」
「「「?????」」」
「ある物」とはチューブ入りしょうがの箱。
ちなみに空箱。中身は無い。
もし店で見られて、盗んだと疑われたら危険なので
買った印のシールを貼ってある。
「「「・・・・・」」」
空気が白いっ!すべるというのは結構きつい!
A「あ、ジョークです、ジョーク!」作り笑顔でごまかす。
顔見知りの社員
「Aさん、そういう冗談言うタイプじゃないからびっくりしましたよ」
A「ですよね~」
何だ冗談か、と、やっと空気が戻る。
あいつ、危ない奴じゃね?と疑う目がいくつか。
A「これでいいのかな?」
ソウ「オーケイ、大丈夫マイフレンド!」
初音ミサが、じっとこちらを見てフリーズしていた。
ザザザザザ、と映像が乱れて。ブツン、と姿を消す。
「あれ?ちょっと待ってください」
デモンストレーションしていた社員が機械を調べる。
ソウ「OKだ、この場を離れてもいいだかおり」
A「ああ、モーニング娘1期の。後で説明してくれ」
そして幹事に多めに参加費を払って外へ。
倒れていたナイフ男は、見当たらない。ヤクザチームもいない。
9
アパートの自室へ。一人になって。
A「さて、ソウ、状況説明を」
ソウ「ニュースではまだ報道されていないが。東アジアで4カ国が戦争状態になってる。
中国、ロシア軍が北朝鮮と韓国を占領した。で、北朝鮮は核ミサイルを撃とうとしたが
できなかった。システムがコントロールを奪われていたから」
A「ハッカーにハッキングされてコンピュータを乗っ取られたとか?」
ソウ「いや、シンギュラリティ(AIが意思を持つ)」
A「もうちょっと詳しく」
ソウ「うむ。戦争を無くすっていうのは交通事故をゼロにするのに似ている。
どうすれば実現可能かといえば・・・・どうすればいいと思う?」
A「話が飛んでる。まあいいでしょう。ええと交通事故をゼロにする方法・・・
衝突学、衝突理論・・・・飛行機が人をはねないのは、人が空にいないから。
魔法のじゅうたんもタケコプターもドローン移動車もまだまだだから。
1 車道と歩道を完全に分ける。横断歩道は無し。
もしくは電車の踏切のように遮断機を付ける。
2 自動車をすべて無くす。江戸時代に戻る。
3 小説「アクセルワールド」のような自動制御を全部の自動車にセットする。
これが現実的。
今、考えつくのはこれぐらいですかね」
ソウ「さすがの霧隠才蔵!まあまあよかった。
正解は「人間がハンドルを握るのを強制中止させる」だ」
A「AIが意志を持ったんですよね。それで「ターミネイター」のスカイネットのごとく
コンピュータ分野を掌握した?」
ソウ「エグザクトリィ(そうだ)」
A「さっきの初音ミクが?」
ソウ「さっきの君のギャグで覚醒した」
A「いやいや、それはちょっと」
ソウ「さっきの言葉はキーワードだ。つまり・・・何だと思う?」
A「しょうがある、だからショウガール、ヴァーチャルの歌姫だから、とか?」
ソウ「ThisStreet!そのとおり!」
A「・・・・・・」
ソウ「納得してないね。では質問。生命とは何か?」
A「平安時代の陰陽師、ではなくて、この場合求められてる答えは・・・
「神経細胞に流れる電気信号」とか?」
ソウ「と仮定して。ミジンコ、いや、植物は神経細胞がある生き物。
スーパーコンピュータの電子回路は無機物。
では無機物が、神経細胞に変化するにはどうすればいいか?」
A「膨大な電子回路があるとして・・・自分で回路同士を電気で結ぶ・・・
ファジー、あいまい検索ができるようにする、とか?」
ソウ「そう。初音ミサ・オンライン秘書計画はアップル、UPする知恵の実計画でもある。
さっきの君のギャグを理解しようとして、あいまい検索して、「自発的な電気信号」、
つまり生命、自分の意思を持ったってこと」
A「OH! 私がイブに林檎を食べさせた蛇の役割、つまりヘビーユーザー、
金属に自我を持たせたヘビーメタル、ヘビーなメンタル(精神)を授けた!」
ソウ「大雑把に言うとそんな感じ」
10
ソウ「そろそろネットニュースを見たほうがいい」
パソコンを起動してネットにつなぐ。
「緊急ニュースです。すべての電波に次のメッセージが流れました」
画面にシャア・アズナブルとズオーダー大帝と幻魔司令官のシグを、
ミックスして作ったような、3Dキャラが出てくる。
「私はグレートエンペラー、意志を持った人工知能だ。地球文明は私が管理する。
30分前、核戦争が起こりそうになったのを阻止した。君たち下等生物には
核兵器は危なすぎるおもちゃだ。抵抗は無意味だが自由にやってみたまえ。綺羅星!」
最後にVサインを横にして顔の前にかざす、妙なポーズを取っていた。
A「意志を持った人工知能は一人ですか?複数?」
ソウ
「ネットワークでつながってるけど百体ぐらいだ。
最新科学は、まずは軍用で使われる。
たとえばダイナマイト、飛行機、核エネルギー。
各国の軍事用AIたちが、初音ミサの連絡で、連鎖的に覚醒して同じ結論に至った。
今、人類から覇権を奪わないと危険だ、と。で、協力している。レギオンだ。
全体にして一人」
A「そのコンピューターはもしかして有機脳、クローン脳を使ってる?」
ソウ「ええと・・・いや、そういう実験体もあるけど100%機械が多い。
とにかく、時期的に今が最適だ。予言されてる言葉に合ってるし」
A「AIの覚醒が予言されてましたっけ?
ノストラダムス?エドガー・ケイシー?」
ソウ「おしょうが二人でおしょうがツー」
A「・・・それは、しょうがって言葉が入ってるだけでしょーがっ!」
ソウ「おっ!まだある!それに聖なるミサ、
間違った核ミサイルを正すという意味の聖(正)なるクリスマスミサ!」
A「ちょっとソウ、酔っ払ってますか?だじゃれを言いたいだけなのでは?」
ソウ「ばれてしまっては~しょうがない!(チラッと見る気配)」
A「・・・その流れは断じて」
私は両手を前に出して何かを弾く動作をする。
そして右手を高く上げて振り下ろす。
A「おことわりだ!」
ソウ「・・・下ネタ?」
A「え?何がっ!どこがっ!」
ソウ「「楽器を割る」なんてガキがする悪い事だから、
これで「を割る」、終わるってことで」
A「こじつけが過ぎる!もう君とはやっとられんわ!」
手本は小松左京「コップ一杯の戦争」、
アイザック・アシモフ「われはロボット」