03
「だ~か~らぁ、私には好きな人がいてぇ~」
「はいはい分かりました。もう何度も聞きましたよ」
主任に肩を貸しながら夜道を歩く。思ったより話が盛り上がり酒も入ったことで口が軽くなった主任がぼやきだした。うんうんと頷きながら普段は食べない少し高級なご飯を食べていたら、いつの間にか主任が潰れていた。
放っておくことも出来ないので、家まで送ることにした。
「はい、家に付きましたよ。鍵出してください」
「……カバンに入ってる」
「はあ……」
ゴソゴソと主任のバックを漁ると、中から鍵の束が出てきた。
「どれですか?」
「それ、その黒いやつ」
鍵を使い、オートロックを突破して主任の家に入る。一人暮らしの女性らしく部屋は片づけられておりお洒落な雰囲気だ。意外な一面を見てびっくりする。
「さとー、水ちょうだーい」
「はいはい」
後輩とはいえ、男を家にあげるなんて不用心すぎる。俺じゃなかったら手を出しちゃうね。
そんなことを思いながら、置いてあったコップに水を入れ、ソファーで寝っ転がっている主任に渡す。
「どうぞ」
「ありがと~」
ゴクゴクと水を飲み干す。居酒屋でも思ったが飲みっぷりがとても良い。
「……じゃあ俺、帰りますんで」
そういって帰ろうとしたところを、裾を引っ張られ止められる。
「……もう少し一緒にいて欲しい」
「……え?」
結局俺は、その日一晩主任の家に泊まった。