超古代城塞都市始動…… そして、新世界の歴史が動き出す。
「起動したけど…… 何故外に…… 転移したの?」
意を決して、妖精機神姫フェアリエを起動したカナエだったが……
「飛んでる…… 飛行が可能なのは、夢と同じ様だけど…… この機体…… 夢の中よりも、大きい?」
フェアリエの全長は…… 夢の中では、3メートル級の機体だったが…… 9メートル級の姿をしていた。
「ゲームの姿よりも、手足が長い?」
カナエが夢で見たゲームの姿では、小さな少女の様なフォルムだったフェアリエの機体は…… 大人の女性に近いフォルムをしていた。
ドッゴーン!!
「くっ! 撃って来た!? 何か武器は?」
突然に転移して来たフェアリエに対し、ロデスの戦艦から激しい砲撃が降り注ぐ!
「撃って! たかが機神1機…… すぐに撃ち落とすんだよ!!」
「この~!? 何…… 敵艦の中に…… 何かが重なってる存在が見える!?」
「くっ……」
「ロデス様!?」
「あの機神のせいか…… 不快な…… 僕の捕らえた魂に触れるな!」
「何これ…… 感情が見えているの? 子供…… それも複数の子供達の悲しみが重なって見える…… その身体…… いったい、どれだけの子供達を犠牲にした!!」
ロデスの身体に、捕らわれている複数の子供達の魂が見えたカナエは……
激しい怒りを放ちながらフェアリエで、ロデスの戦艦に迫る!
「ひっ!? な、何してる! はやく撃ち落とせよ!!!」
「そ、それが……」
「何だ!」
「砲弾が…… 砲弾が、機神の前で爆発するのです! まるで見えない壁にぶつかる様に!」
「これは…… 魔力!? 魔力センサーが感知! あの機神を大都市の結界なみの魔力が包んでいます!」
「たった1機の…… しかも、小型の機神に大都市防衛結界級の魔力障壁が有るだと…… ふざけるなぁ! 撃って、撃って撃って…… 撃って続けるんだよ! どんなに強固な魔力障壁だろうが、張り続けられない筈だ!」
ロデスの戦艦の照準が全て、フェアリエに向けられる。
「くっ…… 砲撃が激しさを増した!? 護るだけではダメ…… 攻撃しないと、そろそろ身体が持たない…… こんな時…… 夢の中なら……! そうだ…… 強力な盾なら鈍器になる…… なら!」
「魔力センサーに反応! これは……」
「どうした!」
「敵の魔力障壁に包まれました!」
「何!?」
「魔力障壁で…… 押し潰す!」
カナエは…… ロデスの戦艦を包み込んだ魔力障壁の圧縮し始める。
「一点集中で、魔力障壁を破るんだよ! はやく!」
「だ、ダメです! 間に合いませ……」
「ぎゃあぁぁぁぁぁ!?」
まるで、見えない巨大な手が紙を丸める様に…… ロデスの戦艦は、握り潰されて……
ドッゴーン!!!
爆砕したが……
「そこ!」
カナエが手の形状にした魔力障壁を、爆砕した戦艦の後に伸ばし……
『ぐあ!? な、何故だ! 何故、僕を見付けられる!?』
何も無い様に見える空間を掴んだら…… 禍々しい邪気が現れる。
それは、魔神【死を遊ぶ子供のロデス】正体……
子供達の身体を奪い取り、神々の争いから逃げ延びていた…… 上位に進化した邪神配下のゴーストだった。
「やはり…… 本体はゴースト系モンスター……」
『モンスターだって…… この魔神たる死を遊ぶ子供のロデスを…… 下等な魔物と一緒にするなぁ~! 次は、お前の身体を奪ってやる!!!』
「貴方に取り付かれた子供達の魂を開放する…… だけど、貴方は逃がさない!」
『何を…… ぎゃあ!? 熱い? これは…… 地獄の炎!? 馬鹿な…… 僕の中に捕らえた子供達も地獄に落ちるぞ!!』
「この銀獄炎は…… 無垢なる魂を救済し、悪しき魂を断罪する炎…… さあ、貴方が行った罪に焼かれ続けなさい」
『やめ……』
ロデスの霊体を銀色の炎が包み込むと…… 小さな銀色の種火が残った。
その種火からは、火の粉が舞い上がる様に小さな光達が現れて、フェアリエを嬉しそうに回ると……
天に上がって消えた。
「無垢なる魂達に…… 祝福があります様に……」
『マスター、メインシステムの起動に成功しました。各システムのチェックも完了しました』
無垢なる子供達の魂を見送ったフェアリエに、城塞都市から通信が入る。
「移動は可能かな?」
『メンテナンス不足ですので、本来の4割りしか出力が上がりませんが…… 移動は可能です』
「なら…… 城塞都市移動…… 安全な場所にしばらくは…… 身を隠す…… ダメ…… もう限界…… 回収…… おね……」
『マスター、マスターの機神を緊急転移…… マスターを回収後、城塞都市を発進…… この惑星から転移します』
その日…… 惑星国家ナインアール王国から、1つの巨大遺跡が姿を消した。
この出来事が…… 彼女の戦記の始まりだとは……
限界を超えた為に、フェアリエの中で疲れ果て眠るカナエは……
夢にも、思わなかったのである。