廻り始める絆の転輪
あつい…… のーみそ…… とけちゃう……
カナエとユメがジノとデンライを助け出していた頃……
「居たか!?」
とある資源衛星都市の外周スラムコロニーにて、怪しげな一団の怒号が響いていた。
「くそが! 面倒な処に入りやがって」
「おい、今は嘆くよりもさっさと探すぞ」
「とりあえず、ガキを見たら捕まえるんだ」
「もし逃がしてみろ……」
「良くて…… これだろ?」
怪しげな一団の一人が手で首を切るジェスチャーをすると……
「上の連中がそれで許してくれるかよ…… 生物兵器の実験体か何かにされて、楽には死なせてくれないだろうよ」
「チッ…… 兵士になれば餓えないと思ったらこれかよ!」
「所詮、俺達の様な親無しや流れ者が正規兵になれるわけがないだろうよ。最初から使い捨てにするつもりだ」
「くっ…… たが、まだ死ぬつもりは無いぜ」
「当然だな…… 探すぞ!」
話していた怪しげな一団が駆け出すと…… 怪しげな一団がいた路地の影が揺らぐ。
「いった……?」
その影から、ローブのフードを目深に被る小柄な人影が現れる。
(油断するな。さっきの話が本当ならば、あやつ等は諦めずに死にもの狂いで我等を探しているはずじゃ)
「はい……〝ご先祖さま〟」
小柄なローブ姿の人物が一人で呟く。
(ともかく、【ウィザード】まで戻る事が先決じゃ。見つからぬ様に気を引き締めよ)
「はい…… 行きます!」
小柄なローブ姿の人物は、なにやら呪文を唱えると…… ローブが周囲の背景に溶け込んだ。
「だいじょうぶかな…… よし」
周囲の背景と同化したローブの裾を確認して、小柄なローブ姿の人物が路地から抜け出した。
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「何かな…… 騒がしいけど?」
スラムコロニーの入口で、一人の女性が異変を感じていた。
「スラムで何かあったのかしら?」
女性の名前は【ターニャ】…… この世界でもカナエの〝親友〟である。
「カナエの行方を調べる為に、立ち寄っただけなんだけど…… あたりだったかも?」
ターニャは、長い眠りから目覚めたカナエの行方を追っていた。
「発見された遺跡に行ったら、遺跡ごと消えるなんて…… 何してんのよ!」
「きゃあ!?」
「え?」
行方知れずのカナエに、怒りがこみ上げたターニャが思わず怒鳴ると…… 背後から小さな悲鳴が上がった。
「あっ、ごめんさい。大丈…… あなた……〝憑いてる〟わね」
悲鳴を上げた人物に手を差し伸べ様としたターニャだが…… 腰の得物に手を伸ばして構える。
『我が見えるのか?』
「魔力種族と長い付き合いだからね。で、何者かしら? 悪霊の類いなら容赦しないけど……」
「【ゼロード】様は悪霊ではございません!」
「ゼロード…… 様? 危ない!?」
『させん!』
ターニャ達を狙ったナイフを、小柄なローブ姿の人物から飛び出す様にして、現れた魔導士の様な姿の人物が障壁で弾く!
『【マリー】よ。走れ!』
逃げようとした小柄なローブ姿の人物に、複数の怪しげな者達が襲いかかるが……
「たく!」
ターニャが怪しげな一団達を蹴散らす!
「え!?」『おぬし』
「何だか知らないけど…… 小さい子に集団で襲いかかるのを黙って見てられるか!」
ターニャは、小柄なローブ姿の人物を背負って走り出す。
邪魔する怪しげな一団を蹴散らしながら突き進んだ……
「これは…… 機神? しかも、かなりの年代物かしら?」
その先で…… 自分の〝愛機〟となる神殺しと呼ばれる〝魔法使い〟を見るのだった。




