秘密の会議と少年の想い
ジェファーソン一家の息子3人のお話になります。
どうしよう……こんな事になるなんて思いもしなかった。
噂には聞いていたけど、まさか本当に斬るなんて。
子連れの女を真正面から斬り捨てるなんて、人間の所業じゃない。
……せめてもの慰めは、子供達の内3人は無事だということ。
ニコラス、早く3人を迎えにいらっしゃい。
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ニコラスが捕縛された?
なんで!
……異国民を隠匿した罪?
なんだそれ、この国にそんな罪あったのかよ!
それだけじゃなく……異国民との間に子供がいるから捕まえた、だと?
なんだよその跳躍理論。
男と女がいて、惚れあって一緒にいたら子供だってできるだろうがよ!
……え、ニコラスが……獄中で?
事故?どういう事?
号泣しすぎたまま水を飲んでむせて、嘔吐物で窒息……いや待て、そもそもなんでニコラスが号泣すんだよ?
かみさんの死と子供達の行方不明を知らされた?……そりゃ泣くわニコラスなら。
家族が一番大事な男だったんだぞ、ニコラスは。
だから、分散して逃げる算段をしてたんだ。
まず、身の危険マックスのかみさんが一番上の子と2人で隣国へ。
その後ニコラスが3か所に分けて預けた3人の子を連れてかみさんの後を追う手はずだった。
不幸中の幸いは、子供達の内3人が預け先で無事な事……それだけ。
一番上の子の行方だけは全くわからないけど……。
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完全に日が落ちてから。
わしは営業を終えたガストン食堂に猟師のブライアントと農家のディアスを呼んだ。
「サルヴァトーレさん……ご相談しようと思っていたところなんです」
5歳のマルコを預かっているブライアントが切り出した。
「私もです」
3歳のカルロを預かっているディアスも言う。
何も言わないが、1歳のピエトロを預かっているガストンも同じだろう。
「ああ、ジェファーソン一家があんな事になってしまったからな……だからとて、まさかマルコ・カルロ・ピエトロを親なしで橋の向こうに送り込むわけにもいかない」
ブライアント・ディアス・ガストンが揃ってうなづいた。
「わしは表だって動く事ができん。そこで……無理を承知で、勝手を承知でお願いしたい。3人をそれぞれ引き取って育ててはもらえんか」
わしは3人に頭を下げた。
「ご相談したい事ってのがそれだったんです。アンナとニコラスのかわりに育てさせてほしいとお願いしようと……」
「私もです」
「実は、私も」
なんと。
「お姉ちゃんが見つからないのだけは口惜しいですが、ぜひ下の3人は我々で手分けして預からせてください」
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食堂の息子の僕には、仲のいい友達がいる。
猟師のマルコと農家のカルロ。
仕入先としても最高な気がする。
時々お友達価格でいいものを安く売ってくれたり、珍しいものが獲れたからとタダでくれたりする……タダはダメだよって言うけど、相場がわかんないからやるよって言われる。
気のせいかも知れないけど、僕ら何となく似てるような気がするんだよね。
隣のエンリコじいちゃんに言わせれば「世界中には同じ顔した奴が3人いるそうだから、何となく似てる奴なら2~30人はいるんじゃないか?」だって。
……本当かな?
ピエトロが真実を知る日はいつになるのでしょうか……