17 本当の黒幕がやっと捕まったようです
グレンウェル公爵の罪はすぐに白日の下となった。
国の金を動かしてアンドリュー殿下を廃嫡させる為に様々手を尽くしたらしい。私への態度もある程度指示がいっていた、私が……思いの外粘ってしまったけれど。
そして、それに至ったのは簡単な話だった。どうしてもネルコム侯爵領が欲しい隣国は、その分け前をグレンウェル公爵に1割渡す、という取らぬ狸の皮算用をしたわけだ。
しかし、それで動いてしまう程度にはネルコム侯爵領は豊かだった。長い事計画を立てて、国に打撃を与えない程度にアンドリュー殿下に小遣い(それでも総計すれば莫大な金額だが)を渡し、アンドリュー殿下が完全に落ちた所でクレイ殿下を暗殺。グレンウェル公爵はクレイ殿下派なので、犯人は失脚したアンドリュー殿下側の誰か、もしくは王弟殿下の手のもの……と、混乱を起こすことができる。
その隙に攻め込まれれば……国は大混乱だろう。王太子の死からの疑心暗鬼の最中に戦争という、最悪の事態だ。
グレンウェル公爵家は公爵が処刑、家族は生涯幽閉だが、望めば毒を煽る事を許された。密かに、だが、確実に隣国には伝わるように……国民の混乱は最低限で済むよう、私とアンドリュー殿下の婚約破棄との繋がりは公表せず、国庫の金を横領した罪として、裁かれた。
「という事だった……、お前には10歳の時に、……何も分からない子供に婚約をさせてすまなかった。貴族というものは、こう在らなければならないのが悲しいところだが」
お父様から事情を聞き、隣に座るお母様と手を握って全てを受け入れた私は、なんだか泣きたいような終わってよかったような気持ちで微笑んだ。
「いいのです。それに、努力した3年間は無駄ではありません。私は……、たくさんの人に恵まれました」
「そうだな、それに賢く、美しくなった。どこに嫁に出しても、婿を取らせても恥ずかしくない。まだ暫くは落ち着かない日々になるだろうが、お前の将来は好きに決めなさい」
いきなり好きにしろと言われると困ってしまうが、私はふとクレイ殿下の顔を思い浮かべてしまった。
(やだ、なんでクレイ殿下を……)
なんでも何もない。彼は、ジェニットと同じように、私を傷つけた人に対して怒っただけじゃない。
私に目を向けてくれた人だからだ。
3年間努力した。それは自分で決めたからだけれど、それを傷つけられた事に心を痛めて謝ってくれた。私ですらジェニットに言われるまで目を背けていた私の心を見てくれた。
まだ、この気持ちを大事にしていてもいいだろうか……たくさんの釣書にはごめんなさいとお返事を返して、落ち着いた時に……、クレイ殿下が、どうするのか待ってみてもいいだろうか。
3年……いえ、もっと長い間我慢してきた。待ったし、振り向いてもらえるように頑張れた。
ならば、待ってみよう。お命に関わる事だ。政略結婚されるかもしれない。
クレイ殿下の今後が決まってからでも、私の今後を決めるのは遅くない。




