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帰還命令

説明回が上手に作れなかったので、後倒しにする感じでプロット組みなおして時間がかかりました、すみません!

4畳程の新しいが狭い部屋の片隅で、男が手に持ったスマートフォンにブツブツと話しかけている。


「おっかしいよなあ……先月も天井だったのに……ぐぁー!!!また最低保証かよ!!0.8%だろ!250回まわしてんだからでてもいいだろ!!なんでこうもストライクな子が2か月連続で!!」


怒りの発露の後に、室内を占めるのは楽し気な音楽。

その現実が男をさらにむなしくする。


「……よし、もうここまできたら天井だ!あと50連回し切ってやるぞ!待ってろアキナちゃん!!」


しかし、意気込んだ男を待っていたのはガチャの画面ではなく、夢の世界の終わりであったl



-----------------------



「……いや、そこは天井まで回させろよ」


実装予定だった新キャラのガチャが回せる夢はなかなかエキサイティングだった。

そうだったわ、眼鏡・ショートヘア・青髪と、俺の好みにドストライクな子だったのになー。

まわしたかったなー。いや、まあ夢でもガチャできて得したと思おう。

電子マネーの残高に胃を痛める感覚をありがとう!

……やっぱり、うれしくないかもしれん。


「お目覚めでしょうか、カツヤ様。」


この声は……サーシャさんだったか?

体を起こし、あたりを見回すが誰もいない。


「ええっと……?」


「サイドテーブルをご覧ください。」


サイドテーブル……右側だったけ。

言われたとおり、ベッドの右手に置かれたサイドテーブルを見ると、大きな水晶玉がうっすらと光っている。


「通信球より失礼します、カツヤ様。お加減は如何でしょうか。差しさわりがないようでしたら、お食事のご用意が出来ておりますので、ご案内致します。」


この人、俺が起きるまで待ってたのかな?

なんか悪い事したなあ……


「ああ、ありがとうございます、頂きます」


その返事を待っていたかのように部屋のドアが開き、狐耳の巫女さんが入ってきた。

ケモノ系の人もいるんだな……


狐耳の巫女さんに案内されて、やはり馬鹿みたいに高い天井の食堂に行くと、長いテーブルの奥にヨーキが鎮座していた。左右には様々な人種の巫女さんがいる。これは……


「……ラスボス戦みたいだな」


「らすぼすせん……とはなんじゃ?」


やっべ、この距離で聞こえてた。地獄耳かよ。


「ああ、いや。前の世界の物語の話でさ、強大な存在っていえばいいのかな、そういう存在との戦いの一場面っぽかったから」


「ククク……相変わらず戯けた事を言いおる。争いたければ相手をしてやらんでもないが、今日は歓待の席じゃ、素直にもてなされておれ」


歓待の言葉に嘘はなく、フランス料理っぽい高級そうな食事が俺を待っていた。

っぽいとしか表現できないのはもちろん俺の食費はガチャに回っていたからだ。

イタリアンならわかるぞ。塩パスタとかエアパスタとかな!!


……いかん、涙が。


「ほう、泣くほどに旨かったか」


あ、いやそうじゃないけど、否定するのもなんだかな。


「あーうん、前の世界ではこんなご馳走食べたことなかったから。ありがとうヨーキ」


「ハハハ、まあ久しい客人じゃからな。料理係が張り切っておったようじゃわ……なんじゃ騒がしいのう」


ヨーキの言葉の最中に、駆け足で巫女さんが入ってきた。

この部屋だけで20人は配置されてるのにまだ居るんだなあ。


「歓待中申し訳ございません!フリンツ王国よりサーシャ様への緊急帰還令が出ました!」


「なんじゃと……?ははぁ、カツヤの影響か」


サーシャさんが地元に帰る事と俺に何の関係が……?

その疑問は、サーシャさんの返答ですぐに解けた。


「左様で御座いましょうね。辰神の眷属の出現理由と、撃退に伴うヨーキ様の影響の確認と思われます」


「そんなとこじゃろうなあ。あ奴らの杞憂では有るが、報告は必要じゃろうな……ふむ、まあ物はついでか…………サーシャ=エル=トアスよ、前へ」


ズンッ……

突然、体に、心に、重圧がかかる。これは……ヨーキから発されている……?

重圧に合わせて巫女さんたちが跪いていた。何人かの顔色が悪い。

声の雰囲気も……いや、雰囲気というよりは響き方が違う。エコーでもかかってるみたいだ。


「拝命します」


そんな中、顔色一つ変えずにサーシャさんがヨーキの前に出て、両膝を地面につく。


「任を与う。フリンツ王国へ我が健在を知らしめよ。その際、我が客人たるカツヤを伴い、世の理を学べるよう計らへ。良いな」


「我が身と我が魂はミオヤカム=ヨーキ=アマツタツノカミ様に有り。必ずや賜った任を果たします」


その返答が発された後、重圧が消えた。

唐突に儀式っぽいのが始まって終わった……てか、俺を伴いってなんだ?


「クク……カツヤよ、聞いての通りじゃ。サーシャが地元に一度戻る故な、ちょうど良い機会じゃからお主も同道するといい。」


「あ、はい」


プレッシャーの影響で言葉が出てこない。

危険はないのかな。また飛竜きたら嫌なんだけど。

いや、でも聞きづらいなー。めっちゃ厳かな感じになってる。

温泉で回復はやめつつガチャ回す計画が……いや、でも別地域には別ガチャがあるかもだしなあ。


「まあ、不安もあろうがここからフリンツのハーマールまでは儂の守護下故な、分体をつけてやろう。それで道中は間違いなく安全じゃ」


……いや、それガチャ見たいだけじゃ。

ん、てかわざわざ国までいかんでもいいんじゃ。


「あ、はい……てかそれ、通信のなんだっけ、水晶玉じゃだめなの?」


「言葉を送れるのは短距離用じゃなあ。長距離になると、色を送るくらいが限界になるんじゃよ。なので各国、色に応じた指令を予め決めておるんじゃ」


応答の早い狼煙みたいなもんか。便利なような物足りないような。


「ここへの転移石も持たせておくでな、いざとなったら使って逃げるといい。ふむ、あとは……ああ、儂の宝物庫を自慢するのは、フリンツから戻ってからでよかろう。今日はゆっくりと休むといい」


何さらっとマウント取る予告してんのこの神サマ……いや、でも旅先でレア引きまくれば……?

まあ、生きてさえいればガチャは回せる。

威厳があるんだか無いんだかよくわからない神様も守ってくれるらしいし、ポジティブに行くか。

この世界がどんななのか見てやろう。

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