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第八話★

 「いい加減になさってください」


 腕を胸の前で組み、猫の俺を見下ろして言うビスナ。いい加減にしてほしいのは、こっちだ。

 ポンっと俺は、銀色の猫から人へと姿を変えた。猫に変身時、ピアスに収納される魔法の服を着用している俺は、素っ裸ではなく王宮内で着用する服を着ている。


 「さっさとこちらにお着替え下さい」

 「会いに行くぐらいいいだろう?」

 「よくありません。あの場所は動物侵入禁止です。それにあの姿で逢瀬を重ねたとしても意味はないでしょう?」

 「こっちの姿で行けないのだから仕方がないだろう?」


 そう言うと、大きなため息をビスナはついた。


 「そんな事をしている時ではありません! 陛下の一大事なのですよ。ちょうど聖女様がお越しになるのですし、陛下を診て頂きましょう」

 「だから聖女を待たずとも彼女でも出来ると言っている」

 「なぜあんな小娘がいいのですか? 私はあなたの嘘に付き合って、彼女を王宮薬師にしました。これで十分でしょう」

 「嘘だと思ったのか!」

 「当たり前です! 毒を魔法で除去するなど、聖女しか出来ませんよ! もう諦めて下さい!」


 それが本当ならリリナージュが聖女って事になるんだけどな。


 「もし本気で魔法だとお思いでしたら残念ですが、騙されているのです。彼女は、私でもビックリするぐらいの腕でした。街にも調べに行きましたが、卸していた薬は一級品。薬師としての腕は確かです。でもそれとこれとは別です」


 なぜ猫を騙す必要がある? 猫が俺だと知っていれば別だが、どうみても違うだろう。だとしたらあの魔法は本物。こうなったら聖女の方で、魔法を使えないと証明させるしかないようだな。


 「わかった。今日来られる聖女とやらに会おう」

 「ありがとうございます。ところで体調は本当に大丈夫ですか?」

 「あぁ。今のところな」


 いつ毒を盛られたのか正直わからない。食事は全てビスナが毒味している。その彼はこの通りピンピンしているのに、趣味の狩りに向かう為に馬車に乗り移動してすぐだった。

 毒だ! やばいと思った。このままだと、命を守る為に猫になる!

 そう思った俺は、ビスナに馬車を止めさせた。時間差でくる強い毒など早々ない。しかも味も色も変わらないなんて! 食べ物に混ぜられていたのではないのか? いやそれより、父上も同じ状況もあり得る!


 「父上を見に行ってくれ。私はそこら辺に隠れているから」

 「しかし……」

 「頼んだぞ」


 馬車から少し離れて、人目が付かない所で俺は猫に変身した。服は、変身用ではなかったので、ビスナが回収。


 「大変です。目を放した隙に殿下がいなくなりました。私は陛下の安否を確認してきますので、ここをお願いします」

 「え!? あのビスナさん?」

 「人の気配もありました。申し訳ありません。宜しくお願いします」


 ビスナにすまないと思いながらも、この姿が見つからない様にその場所を一旦離れる事にした。猫の姿になれば、人間の時よりも毒が緩和される。どんな毒かはわからないが、それでも時間の問題だった――。

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