第六話
「あの……レイサード殿下が襲われたって本当ですか?」
早速探りを入れてみる。
けど、ジーッと驚いた顔で私を見るだけ。
「襲われたって? どういう事?」
「え? 知らないの? 街ではその話で持ち切りだったけど」
「え? 本当に襲われたの?」
「全く知らないの?」
「殿下とか普段会う事もないし、私達は街に出ないから噂も耳にする事もないわ」
どういう事? てっきりみんな知っていると思っていた。聞きづらいじゃない。これじゃ話題を振れないわ。
それより毒を盛られたというのに、大々的に薬師の人を調べてないの? なぜかしら? 情報が少なすぎて、調べるの無理っぽい。うーん。薬師として働くだけではダメかしら?
「さあもう寝ましょう」
「はい」
「そうそう。さっきの事だけど聞いて回らない方がいいわよ。そういう人かと思われちゃうから」
ドキリとした。
「そ、そういうって?」
「噂話を調べに来たのかって事。前に居たらしいのよ。王宮内の事を根掘り葉掘り聞く人」
「そう。気を付けるわ。ありがとう」
ますます無理そうだわ。はあ……。
「ランプ消すわね」
辺りは暗くなった。まあ窓から入る外の明かりがあるから真っ暗ではないけどね。
□
ごくんごくん。
うっすらと開けた視界に、アルザンヌさんが水を飲む姿が見えた。
喉が渇いたようで、私に気を遣ってか暗闇の中で飲んでいる。明かりをつけてもいいよと声を掛けようかと思ったけど、彼女は飲み終わったらすぐに横になってしまった。ま、いいか。
「おはよう」
「あ、おはようございます」
「さあ、支度をしたら朝ごはんを食べに行くわよ。そこで自己紹介しましょう」
「はい」
身支度をして食堂に向かう。その間に聞いた事と言えば、王宮内用の薬は女性が、国外用の薬は男性が担当しているという事。そして思ったより多くなく、男性四人、女性は私を入れて六人。薬師副長は女性、薬師長は男性って事ぐらい。
食事前にあいさつの場を作ってもらい、私の自己紹介はサラッと行われた。その後、すぐに仕事開始。仕事場の清掃から始まり、昼食を挟んで夕方までただひたすら薬づくり。私も今日から皆と変わらすに仕事をする事になり、仕事中は私語厳禁。これでどうやって調べろというのかしらね。
久しぶりにへろへろになり一人部屋で休んでいた。
がりがり。
うん? 扉から?
「はい?」
誰かがノックでもしたのかと思って開けるも誰もいない。って、私の足に何かが触れた。驚いて見ると、銀色猫のシルー。
私はシルーを抱き上げた。
「元気だった? あなたのお蔭で仕事を得たわ。ありがとう。な~にこれ?」
紙を咥えていた。
見てみると――。
シルーは、あなたを気に入った様だ。相手をしてやってほしい。
レイサード
一言書いてあった文字は、スーッと消えた。これ魔法文字なの? 凄いわ。って仕事をしつつ、毒を持った者を調べ、猫の相手もしろというの? 私、そんなに器用じゃないんだけど。