第四話
「素晴らしい腕前だわ。満点合格よ」
この王宮薬師副長のネツレスアさんが、私が作った薬を見て言った。
「迷いのなく調合を行っておりましたし、手慣れていて今すぐにでも王宮で仕事ができますわ」
と嬉しそうに言っている。
喜んでいるところ悪いけど、私はここで働く為に試験を受けたのではないのです。ごめんなさい。
それにしてもやっぱり王宮よね。材料が一級品。高い材料を使っているわ。器材も一番いい物でしょう。これで失敗はほぼしないわよ。まあ腕の良し悪しで多少は、出来上がった品質に差が出る程度。
「そうか。それはよかった。では今日から働いてもらおう」
「おめでとう。リリナージュさん」
「ありがとうございます。……え!? ここ?」
私は、レイサード様とビスナさんの前で試験を行った。本当にすぐに合否が出たけど、最初からそういうつもりだったの?
「そうです。仕事がないのでしょう? レイサード殿下の計らいで、一人ぐらいなんとかなるのです。いかがです?」
ビスナさんは、にっこりと微笑んでいかがですと聞いて来たけど、目では拒否権はありませんと言っていた。いやビスナさんがそう言わずとも、レイサード様がそう言っているのに断れるわけがない。
悪い話ではないですし、断る理由もないですが……。
「あの、私の噂をご存知でしょうか?」
「毒魔女という事で森に追いやられたそうだな。毒も作れるのか?」
レイサード様の質問に正直に私は頷いた。毒魔女だから作れるのではなく、薬師として作れるという事だけどね。
「毒は薬師の者なら誰でも作れます。それから解毒剤を作るのですから」
「なら君だけ特別な訳ではないだろう」
「そうですね。知識がない者が恐れただけでしょう」
「では、一度自宅に戻り必要な物を取りに行きましょう」
ビスナさんに言われ私は頷いた。
「レイサード様、本当にありがとうございます。精一杯頑張ります」
「うむ。ではビスナ後は頼んだぞ」
「はい。お任せください。では行きましょう」
私は、荷物を取りにビスナさんと一緒に家へと戻る事になった。
「あなたが優秀でよかった。あなたに是非やって頂きたい事があります」
馬車に乗り込み家に向かう途中、ビスナさんがそう唐突に言った。その瞳は、断るなど許さないと言っている。
「な、なんでしょう?」
「レイサード殿下を狙った者を探し出してほしいのです」
「え!?」
襲った者を私が?
私が驚いて目をぱちくりとしていると、更に続け言う。
「殿下は、王宮内で毒を盛られたようなのです。外の者には不可能。この意味わかりますね?」
私は、こくりと頷いた。
王宮薬師の中に犯人がいると言う事でしょう。それを私に探し出してほしいという事ですか?
どうやらお礼をといいながら実は犯人捜しをして欲しかったみたいです。