第二十七話
「何か忘れてないか?」
ホッと一段落着いたとき、レイサード様がそう言うと「あ」とビスナさんと声を揃え言った。そして、大事な話があると連れて行かれた。
「あぁ、なんだ……その」
なぜかレイサード様が、らしくない態度でオドオドしている?
「はぁ……。どうしてそこで、怖気つくのですか」
「当たり前だろう! 嫌われるかもしれないのだぞ?」
「大丈夫だと思いますよ。タイプ的に王妃と似ているかと……」
「そうか? では大丈夫か?」
何かよくわからないけど、褒められている感じではないかな?
「シルーは好きだよな?」
「え? あ、はい」
「もし俺がシルーだと言ったらどうする?」
「……うん?」
「この様子ですと、見せた方が早いかと」
何を言っているのかしら?
「だな……」
そうレイサード様が言うと、彼は消えて目の前にシルーが現れた!
「にゃー」
シルーは、いつも通りスリッと足にしてきた。そっと抱き上げる。耳には白いピアス。そう白なんだ……。
私はずっと、白っぽいガラスだと思っていたけど、レイサード様と同じ白いピアス――。
「え~~!!」
「やっと、理解しましたか」
「ビスナさん、これどういう事!?」
「獣人族なのです。獣に変身できる能力を持つ者は、ビアスが白くなる」
なるほど。だから白はあり得なかったのね。
それにしても、どこから見ても色を抜かして、普通の猫だわ。私は、シルーをあちこちから見た。
「さすがにやめて下さい!」
「え……あ、そうだった」
「………」
シルーだけど、レイサード様だったわ!
「完璧な変身ね!」
「あの……魔法ですが能力の一部なので、それ以外の姿にはなれませんよ」
うん? あ、そっか。それにしても凄いなぁ。
「大丈夫そうですね。では、殿下の事は追々と言う事で、陛下を診て頂けませんか?」
「追々とはなんだ!」
ひょいと私の手から床へ降りると、レイサード様は人間の姿になってビスナさんに抗議した。
「まずは出来る事からという事です」
「えっと。陛下ってご病気なんですか?」
「俺と同じ毒に侵されている。たぶん」
「え!? じゃ仮死状態?」
「いや、変化して仮死状態は免れているが、動けない状態だ。治してもらえるか?」
「はい。出来る限りやります!」
そう言って二人について行くと、クロヒョウが横たわっている部屋に連れて行かれたのです。も、もしかして、陛下ってクロヒョウに変身するんですか? お、大きいですね……。
そっと近づき触れると確かに同じ毒を感じる。
「キュア」
こうして陛下も無事に回復されたのでした。




