第二十一話★
彼女がどうやって毒を食べ物に混ぜていたか。それを彼女の口からいや責めて認めさせなければならない。アルザンヌが、氷魔法を扱えると俺は知っているのだからな。
猫になった俺は、リリナージュの元へと走った。その時、彼女に出くわしたのだ。それで二人に追われる事になった。
アルザンヌが俺を追って来ているのは、王宮内に猫がいたから捕まえようとしたのだとあの時まで思っていたのだが、まさか魔法を掛けて来るとは思わなかった。
彼女は、俺の走る床を凍らせた。俺自体に掛けなかったのは、後の事を考えてだろう。お蔭で勢い余って滑って吹っ飛んだ。それでも走って逃げた。アルザンヌは、猫の俺を使って情報交換でも行っていると思ったのだろうな。
その彼女は、追ってこなかった。たぶんすれ違ったエーネルが運悪く、アルザンヌが魔法を使った所を見てしまった。お蔭で俺は逃げきれたが、彼は毒を飲まされた。
その事からも特段食べ物がなくても可能という事になる。
「もうわかっているだろう? 彼女は、すでに毒を除去されてここで横になっていただけだ。我々はすでに彼女から話を聞いている」
「あなたと会った事のないはずの彼女は、あなたの名前をご存知でしたよ?」
俺に続きそうビスナが続けた。
「そう。でも私は、彼女を知らないわ」
やはりそう簡単には認めないか。
「彼女がどうして、私達にお話しくださったかわかりますか? あなたが彼女さえも騙していたからです」
ビスナがアルザンヌを睨み付け言うも動じない。中々肝が据わった女だ。
「アルザンヌ、あなたが氷魔法を扱えるのを我々はわかっている。彼女のピアスは初め私と同じで白かった。でも白というのは、我々種族独特の色で、その時点ですでにありえなかったのだ」
アルザンヌが驚いた顔をした。そこまでは知らなかった様だな。
「聖女だから白くてもいいだろうと思ったのだろう? そう言われたと彼女も言っている。だがピアスを凍らせ白くさせたのは、違う目的があった。最初から彼女も始末するつもりだった。氷が解ければ毒が溶け出し、彼女は死亡する。傍から見れば、偽り聖女の自害だ」
もしピアスの色を気にも留めていなかったのなら少しの差だ、気づかなかっただろう。まあこのカラクリに気がついたのは、リリナージュだがな。さすが聖女と言ったところか。
これでもまだ認めないつもりらしく、アルザンヌは俺達を睨み付けていた。




