第二話
私は今日も猫のシルーと森の中で、薬草摘みをしていた。
「にゃ~」
と、突然シルーが駆け出し私もそっちへとついて行った。一体どうしたのかと思ったら一人の男性が歩いていた。
青い髪の剣士様だ。歳はたぶん20代と若い。こんなところで何をしているのかしら?
その兵士にシルーが近づいて行った。
「おられましたか! お探ししました」
そう言って、シルーを抱き上げたのでビックリ!
あの猫は、彼にとって敬う存在の猫だったようです。その兵士が辺りを見渡すので、とっさに隠れてしまった。だって今の私は、リリナージュの姿。
自分から彼の元に行ったのだからこれでいい。
ちょっと寂しくなるけど、元に戻っただけ。……でもまた一人ぼっち。
□
次の日、私は薬草摘みに行く気になれず家でボーっとしていた。
トントントン。
驚く事に、誰かが訪ねてきた。驚きはそれだけじゃなく、訪ねてきた相手が昨日シルーを連れて帰った人物だったのです!
「リリナージュさんですね?」
「はい」
本来の私は、淡い黄色の髪に金の瞳。金の瞳は珍しいので間違えようがないでしょうけど。この人とお会いするのは初めてのはず。というか、何しに来たのでしょう?
って、シルーのお礼って事はないよね?
「先日は、殿下の猫を助けて頂きありがとうございます」
「え? 殿下の猫!?」
あの銀の毛並みの猫は、襲われたというレイサード殿下の猫だったようです。王族は、凄い猫を飼っていた。
「お礼がしたいと申しておりますので、王宮へお越し願いませんでしょうか?」
「え? 私が?」
「はい」
「でも……」
毒魔女と言われている私が伺っていいものなのか……。
でも殿下直々のお誘いを断る事などできないよね?
「あ、失礼しました。私はビスナと申します」
「あの……殿下はご無事だったのでしょうか? 襲われたと聞いたのですが?」
よく考えれば、猫どころではないだろうに。
「えぇ。ご無事です」
と、それだけしか返ってこなかった。いやそう聞いたのだからそれでいいんだけど、ただこの人が殿下の使いだという確証はない。シルーを連れて帰って行ったのは彼だからつじつまはあっているのだろうけど。
まあ、私を連れ出した所で彼に得な事など何もない。
ついて行けば、シルーにも会えるだろうし行きましょう。
「用意します」
「はい。外でお待ちしております」
こうして私は、殿下の猫を助けた事により、王宮へと出向く事になったのです。