第十九話
どうしたらと思っていたら連れて行かれたのは、医務室だった。そこには、薬師長のジェールエイトさんとレイサード様、そして聖女がいた。
聞けば偽物聖女らしい。そして驚く事に、犯人の第一候補がアルザンヌさんだという。なぜそうなったのか。
偽聖女は俯いている。長い灰色の髪から見えるピアスの色は白。
その彼女は、私達の隙を見て逃げ出すも廊下に倒れていた。またもや毒に侵されている! でもカラクリはわかったかも。
私は、彼女の耳に触れた。白かったピアスは色が抜けている。そうただのガラス玉だ。そして、ほんのり濡れていた。
白かったピアスがガラス玉に変化した事になる。倒れた彼の内臓も冷やされている。この魔法は、氷結。
彼女にも魔力を流してみるが、内臓は大丈夫だった。つまり暫くすれば目を覚ますはず。
偽物とはいえ、部外者だと思われる彼女までどうして?
□
私は、朝食の時間になったので、食堂に向かった。
「いいご身分ね」
ボソッと、アルザンヌさんに言われた。まあ仕方がないよね。あれを信じたのならそういう事になりますから!
というか、私の事を話したのか、ちらちらとこっちを皆が見ている。勘弁してほしい。ビスナさんのバカー!
「みなさん、おはようございます。朝食を頂く前にお話があります」
薬師長のジェールエイトさんがそう言えば、みな注目する。
「先ほど、お越しになった聖女様が、お倒れになりました。毒が盛られたのです。ですので荷物検査をさせて頂きます」
その言葉を聞いたとたん、なぜかほとんどの人が私を見た。
「犯人は、彼女だわ! 毒魔女っていう話よ」
「あぁ、毒魔法を使うらしい」
え? 毒の魔法!?
「毒の魔法ね。だったら探しても毒なんて見つからないんじゃない?」
そう言ったのは、アルザンヌさんだった。
もしかして、毒魔女の話もアルザンヌさんが流したの? 知っていたの?
「ビスナ様に取り入って、色々情報を流してもらっていたのでしょう? だったら聖女様が来るのも知っていたのでは? 聖女が来ると聞いても特段驚いた様子もなかったし」
「アルザンヌさん、おやめなさい」
そう言ったのは、ネツレスアさん。今話題に上がったビスナさんと一緒に現れた。
辺りはざわめく。
「勘違いしているようですので、訂正させていだきましょうか?」
と、なぜかビスナさんは言った。いいでしょうか? と目で訴えてきているけど、訂正するなら訂正してほしいわ!
そう思って頷いたんだけど……。
「彼女と逢瀬を重ねていたのは、レイサード殿下です」
とまた、突拍子もない事を言うんですけど!




