第十五話
まさか、レイサード様とビスナさんが来るとは思わなかったわ。変な質問をされるし、変な質問をしてしまった。変に思われているかも。
「あら、おかえり」
「た、ただいま」
部屋に戻ると、アルザンヌさんがいた。今日終わるの早くない? まだ午前中なんだけど。心の準備が出来ていない。どうしよう。
「は、早いね」
「今日は終わりだって」
「そう……」
「どこへ行っていたの? ビスナさんの所?」
って、思いっきり思い込まれたままじゃないの!
「ち、違うから! ちょっと倒れた人がいて、ネツレスアさんに呼び出されたの」
「なぜあなたが呼び出されたの? 医師免許でも持ってるの?」
凄く驚かれた。まあこの年齢で持っている人はかなり少ないと思う。
「いえ。たまたま一番最初に発見したのが私で。何でも毒を盛られたわけでもないのに、低体温症になっているとかで……」
と言ってしまってからハッとする。これって他の人に話していい事?
「……ねえ、それって襲われたって事? それとも病気?」
「げ、原因不明ってジェールエイトさんは言っていたけど」
「本当に毒ではないの?」
「え? なんで?」
本当は、毒に侵されていたけど私が除去した。だから今起こっている原因は、別にある。そう魔法だ。
「あなたが第一発見者なら彼は何か言っていなかった? ほら襲われたとしたら何か伝えようとするでしょう? 普通は」
「え? あ、そう言えば」
「何か言っていたのね?」
私は頷いた。確かに言っていた。ネ……なんとかと。話さなくていいと言ったのに何とか絞り出していた。
「何て言っていたの?」
「ネって言った後、アと言っていたわ!」
「ネとア……」
アルザンヌさんは考え込んだ。そして凄い事を口にする。
「人の名前かしら? ネ……ネツレスア」
「え!?」
そう言えば、すぐに来た。近くに居たんだわ。そうだ。もしネツレスアさんが犯人だったら毒を仕込んだのに、除去されていれば違う手を打つかも。
あれ? でもそうなると、シルーを狙ったのではなくあの人を狙ったって事になるわよね。
だったらレイサード様の時もそうかもしれない。シルーに何かをして移しているのかも。だからシルーも毒に侵されていた!
あの床が零れていた水も関係あるのかしら?
あぁ、シルーから何か聞いたか、レイサード様に会った時に聞けばよかった。って無理か。
でも魔法って気がついていたようだから、シルーから何か聞いているのかも。でも四属性以外の魔法を持った人物って、私以外いないような事も言っていたわよね。
うーん。真相に近づいた様な近づいてないような。
「どうする?」
「え?」
「ビスナ様に言ってみる?」
あ、ネツレスアさんの事か。言っていた言葉だけ伝えるかな。
「そうね。伝えた方がいいよね」
私が頷くと、彼女は立ち上がった。一緒に行く気の様です。




