第十二話
トントントン。
「リリナージュさん、いらっしゃる?」
「あ、はい」
薬師副長のネツレスアさんだわ。あの人が目を覚ましたのかしら?
「ちょっといいかしら」
「はい」
雰囲気からして違うみたい。
医務室に連れて行かれた。そこには、さっきの男の人がベットに横たわっている。
「気を失っているだけかと思ったのですが、体が冷えて低体温症みたいなの。あの時あなた、何か薬を使ったかしら?」
「え? いえ、すぐにネツレスアさんが来ましたし、何も……」
おかしいわ。毒を除去したのに、治るどころか悪化したというの? でも毒ではないわ。私は、毒がわかる体質。もちろん毒に耐性もある。
うーん。こんな事ってあるのかしら?
「あの……触れてもいいですか?」
私が聞くとチラッとネツレスアさんは、ある男性を見た。薬師長のジェールエイトさんだ。食事の時にしかお会いした事がないけど、銀の髪に白髪混ざっているから結構歳だと思われる。明るい赤い瞳でそれより暗い赤のピアス。まあ髪が明るいから暗く感じるのかもしれないけど。属性は火ね。
ジェールエイトさんは頷いた。
「いいわよ」
「はい。ありがとうございます」
私はただの薬師だけど、薬師長のジェールエイトさんは医師免許を持っていると思う。ネツレスアさんも持っていると言っていたから。
私は男性の体に触れてみた。うん。毒はないわ。ちゃんと除去できている。本当は、あまりやりたくないけどやってみよう。
男性の体に私の魔力を流し込む。こうやって体の中を知る事も出来る。おばあちゃんの時が最初で最後だと思ったのに。
彼の体の内臓に、魔法が掛かっている。これって……冷やされている? だから低体温になったんだわ。相手が魔法ならなんとかなるわ。
私は、徐々に消え去る治癒魔法を使った。って、私が使えるのはそういう系統。なのに薬師なんかやっている。
それでも、助からない命もある。魔法でも薬でも。人間には寿命があるのだから。変な言い回しだけど、私としてはもう少しおばあちゃんに長生きをして欲しかった。
私の魔力の方が上ならば、冷やしている魔法を悪い物として徐々に除去してくれるはず。そしてゆっくりと回復する。その方が体に負担はかけないし、私がしたと気づかれない。
除去が終われば、私の魔力も抜ける。そうしたら私もわかるから状況を把握できるわ。
「彼も薬が効かない病気か……」
ボソッとジェールエイトさんが呟いた。
も? 彼と同じ症状の人が他にもいるのかしら?
というか、この王宮で何が起こっているのよ!




