第十一話
「何をなさっているのかしら?」
驚いて声が聞こえた扉の方を見ると、アルザンヌさんが怖い顔つきで立っていた。いつもにこやかなだけに、凄みが効いている。
「なぜこの時間にあなたが……」
「やはりそういう関係だったのね」
そういう関係?
「フー!!!」
シルーがなぜか、アルザンヌさんに威嚇した。
ちょっとどうしたのよ。ってやっぱり会話がわかってるとか?
「そう言うのではありません。猫を保護して頂いたようなので、失礼します」
「あ……」
シルーを奪ってビスナさんは、部屋を出て行った。って、この状況どうやって説明するのよ。まだ疑いの目のままなんだけど!
「あの猫は何?」
「え? あ、えっと……」
まさかレイサード様の猫だとも言えないし、ビスナさんのだとしても……うーん、そうだ!
「実は私が飼っていた猫なの。ここに来るのにビスナさんに預かってもらう事になっていたんだけど、逃げだしてここに来ちゃったみたいなの。迷惑を掛けてごめんなさい」
私は、軽く頭を下げて謝った。
これならビスナさんがここに居た事も説明がつく。
「そう。あなたの猫だったの。なるほどね、だからたまに猫を連れていたのね」
「あ、バレていたのね……」
もう、シルーが毎日来るから……。
「迷惑よ、あなた」
「え?」
「ここ、王宮よ。遊びじゃないの。猫が大事なら家に戻りなさいよ」
そう言って、バタンと扉を閉めてアルザンヌさんも出て行った。
めちゃくちゃ怒っていたわね。彼女が怒るのもわかる。自分にも毛がつくものね。でもどうして知っていて、今なのかしら?
あれ? 彼女は何をしにここに来たの?
って、彼女にもう一度謝って許してくれるだろうか。同じ部屋だから気まずいままだと嫌なんだけど。
いやそんな事より、毒事件は本当だったのね。
よくよく考えると、シルーが聖女様とレイサード様の間を取り持つ猫って事よね? だとしたら、二人がくっつくのをよしとしない者の仕業って事ね。で、それって誰よ! そんな者が、この王宮内にいるの?
どうやって毒を飲ませているかわからないけど、シルーを殺そうとして前回はレイサード様、今回は薬師の男性が巻き添えを食ったって事よね。しかも今回は、堂々と仕掛けている。という事は、相手も焦っているって事よね。
あ、でも、シルーからレイサード様が聞き出していれば犯人特定出来るんじゃない? あそこで会った人物を聞けばいいのよ。
会ってそう伝えたいけど、聖女様が来るから私と会うどころじゃないよね?




