ユリウスの好きな物
正式名称はラーグルング国。
他では第2の精霊の国、魔法の国などと呼ばれているがちゃんと正式に言って欲しいなとこの国の陛下たるユリウスは思っていた。
「はぁ、疲れた………」
机に積まれた資料の山を見ながらげんなりした様子で呟く。宰相のイーナスの頼まれたのは良いが量が……と1日で終わらせる量ではない、とそう言いたくなった。
「あーもう、絶対に閉じ込める為に無理な事を頼んだな」
疲れた頭には睡眠だな、とソファーにゴロンと横になる。と、すぐにコン、コン、とノックする音が聞こえ「どうぞ~」と言えば中に入って来たのは麗奈だ。
「ん?どうした?」
「……仕事中だったかな」
「いや、いい。ってか休憩したくて出来なかったんだ」
だから今休憩してる、とダランとしながら答える。ゆっくりと近付く麗奈に珍しそうに視線を向けるユリウスはどうした?と聞いてみる。ワザワザこの執務室にまで用があるのかと思っていると……なんだか甘い匂いがしてきた。
「………お菓子?」
「うん。新作なんだけど……ほらユリィ、お菓子好きみたいだからさ」
良かったら一緒に食べない?と、ちょっとだけ顔を赤くさせながらも誘う。それに瞬きを繰り返し、ふっと笑みを零すユリウスは長机にお菓子を置いた麗奈を見てすぐに自分の方へと引き寄せる。
「っ、ちょっ!!!な、なにっ」
「良いだろ、別に……」
しっかりと抱き寄せクン、クンと匂いを嗅げば甘い匂いが広がる。くすぐったそうに体をねじるが、逃がさないようにされそのまま大人しくなるのを待つ。
「ちょっ、お菓子冷めるでしょ」
「お菓子より麗奈」
「なっ、寝ぼけてるよね!!!!」
いやどっちもだけど、と口には出さずにいたユリウス。このまま不機嫌になるとお菓子を持って来れなくなるので、すぐに開放すれば慌てて2人分用に切り分ける。
ユリウスに取り分けて食べたのはレモンを使ったパウンドケーキ。食べ進めて行く内に、レモンが入っているのか酸味が広がり眠りかけていたユリウスには大いに助かった。
「ふぅ、美味かった………」
「な、何……どうしたの?」
そう言って麗奈にもたれかかればドキリとなり、そっぽを向きながらも質問をした。聞けば最近、イーナスからの課題が多くて剣の練習が出来ないと嘆いており、加えて麗奈のお菓子が食べられなくて困っていたと言うものだった。
「ご、ごめん……同じのだとつまらないと思って、工夫してたら遅くなったの。そんなにお菓子好きになったの?」
「んー。麗奈に貰った最初の焼き菓子………クッキーだったか?あれ、また欲しい」
「え、他じゃなくて?」
「そう。クッキーがいい」
「ずっとそれだとつまらないよね?」
「全然」
「………そ、そう」
じゃあ、次はクッキーだねと言えば途端に笑顔になる。まさかここまで好きになっていたとは知らず、麗奈も嬉しくなりまた持って来てくれる約束を取り付けた。
ユリウスが麗奈と初めて食べたクッキー。
彼にとっては偽名を使って麗奈と話をしていた時、お土産を持ってきたユリウスを1位日中待たせた事がありそのお詫びと言って持ってきたもの。
その時の、甘い香りとサクッとした生地に薄いのに味がしっかりしている。初めての感覚に目を輝かせて夢中で食べたのを思い出す。だから、ユリウスにとってはクッキーは麗奈と話すきっかけを作ったお菓子であり、好きな物の上位だ。
(クッキーと麗奈が、俺の好きな物)
ゆきにはすぐにバレており、キールには看破されイーナスにはニヤニヤとされた。……そんなに俺は分かりやすい顔をしているのだろうか?




