麗奈の好きな物、リーグの好きな事
活動報告に載せていたものをそのまま載せています
「クッキー?」
麗奈とゆきがラーグルング国に来て、早2週間経つか経たないかの時。試験を控えた麗奈は気が滅入るのはマズいと考え、食堂の厨房を使う許可を貰えたのだ。
じゃあ。と麗奈は食堂の三角巾とピンクのエプロンをし腕まくりをして気合十分といった感じ。ゆきは久々に麗奈の手作りクッキーを食べられるとワクワクした気持ちで食堂の人達も混ざって見ていた。
そんな時、リーグが食堂に来たのだ。理由をゆきから聞いたリーグは首を傾げながらも不思議そうに見ていた。
「うん。麗奈ちゃんの作るクッキーはすっごく美味しいんだよ♪」
「…………」
チラッと麗奈を見るとクッキー作りに集中しているのか、こちらの会話には入って来ない。食堂の人達も何だがワクワクした感じで見ており、もっと近くで見ようと動けば型を使ってクッキーの生地を押している所だった。
「……お姉さん、それは?」
「ん?あぁ、これは荷物から取り出したんだ。慌ててたからカバンに入れっぱなしだったんだよね」
卒業式を向かえる前、家でクッキーを作ったまでは良かったが寝ぼけてそのまま入れていた。見付けた時、何やってんだか……と思ったがまさかこんな所で役立つと思わなかった。
イーナスから言われた課題をこなそうとするも、ラウルからは顔色が悪いぞと言われてしまい気晴らしにとクッキーを作る事にした。型を抜き、取り外すと言う作業をしている間、じーっと見るリーグに麗奈は「やる?」と聞いた。
「良いの?」
「うん。手を洗ってエプロン着て一緒にやらない?」
「うん、やる!!!!」
考える間もなく即答したリーグ。それをニコニコしながら見ていたゆきは(兄弟みたいで可愛い♪)と思ったのは食堂の人達も含めてだ。
数分後。
生地と格闘するリーグに麗奈が丁寧に教え、クッキーを焼かれるのを待つ。リーグはその様子を見ていようと、オーブンの前から動こうとせずにじっと待つ。
麗奈達はその間に紅茶を用意したりしている内、オーブンから完成の音が知らされリーグが「お姉さーーん!!!」と大声で知らせてきた。
熱々の鉄板からリーグのくり抜いたクッキーを取り「リーグ、あーんして」と笑顔の麗奈に思わず首を傾げた。
「手伝ってくれたご褒美。冷めても美味しいけど、焼きたての味も知っておいて損はないよ?」
「…………」
何故かじっとゆき達に見守られながらなのが恥ずかしく、急いでパクッと食べる。舌を少し火傷したと思うも、それに勝って広がる甘さに目をキラキラさせながら味わう。
「お菓子作るの得意なんだ。リーグ君、またか作るときがあったら作り方教えるね?」
「うん!!!」
力いっぱいに肯定すれば「か、可愛いー♪」とゆきに絶賛され、思わずむすっとなる。騎士が可愛いとか何だそれ、と思うも食堂の人達にまでニコニコされてしまった。
(男に可愛いとかないでしょ)
(リーグ君、可愛いから平気平気)
互いに思う事はあっても口には出さずにいた。
それ以降、麗奈は何かしらに息詰まった時にはお菓子を作るがラウルも交えてお菓子教室なるものに広がるなど誰もこの時は思わなかった。
リーグの好きな物にクッキーが追加されるのは言うまでもなく、陛下にお土産として持って来るようになった。小さな小さな騎士の好きな事。
(今度、フィルお姉さんに持って行こうっと)
トコトコ歩くリーグは、今日も魔物退治に励み副団長のリーナから技を盗もうと努力する。誰かの助けになりたいと言う気持ちに、嘘はなくそれが自分の理念になると信じて。