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異世界に誘われた陰陽師・番外編  作者: 垢音
~本編の裏話~
6/27

親友と呼んでいいのか分からない?

「おい!!! ベール勝負しろ!!!!!」




 それは食堂での出来事。

 薬師長のフリーゲが遅めの昼食をとっていた時にそれは起きた。水の騎士団長のセクト・ラーベルと暴風の騎士のベール・ラグレス、その2人は何故だか喧嘩腰だ。




「良いですよ、何を賭けます?」




 仕掛けられたと言うのにベールは笑顔で対応。しかし、その笑顔には「どうせ負けるんですから」と言う副音声が聞こえてきたように思う。思わず面白半分、興味半分で静かに2人の傍に寄れば同じ行動を起こしているのは騎士団の面々。




(……お前等、暇だな)




 そう思うが口には出さない。そうしている間に2人の間ではゲーム内容が決まろうとしていた。




「魔法で勝負!!!」

「前に負けましたよ」

「槍と剣でなら!!!」

「さっきの訓練で敗北してましたよね?」

「…………酒なら!!!」

「この間、誘われて飲んだ時にダウンしたのは誰ですか?」

「……………」




 次々と上がる提案にベールが丁寧に答え、セクトの傷口を広げに掛かっている。その様を声を漏らさないようにして我慢するフリーゲと、「団長……」と涙ながらに応援するのはセクトが接する部下達だ。




「………ジャンケンで勝負しろ!!!」




 こうして始まったセクトとベールのジャンケンでの勝負。フリーゲは休憩するつもりで来ていたが思わぬ所で面白そうな事をするな、と思い急いで昼食を食べ成り行きを見守る形をとった。




     ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「ベールの評価がかなり変わってるんだがその事はどう思うんだよ!!!」

「何の話です?」




 あいこが続く。こんなにも続くのかとフリーゲを含め、2人を囲むようにして見守る騎士団達を他所にセクトが話を進める。




「嬢ちゃんを追い掛け回すストーカーか!!!!!」




 それにピクリと反応したのがいけなかったのか、ベールが負ける。

 おおっ!!!、と周りから絶賛の嵐をされる中でフリーゲは思わずその内容に首を傾げた。




(追い掛け回す………ストーカー?)

「セクト。ちなみにそのストーカーと言うのはどういった意味なんです?」




 疑問を口にしながらベールは白い手袋を外す。キラリと光る眼鏡の奥の瞳は、殺気を放っているようにも思ったが(たかがゲームで……)とフリーゲは気にしないフリをした。




「人の事付け回したり、困らせたりする相手の事だ!!!」

「……………ほぅ」




 ビクリ、と食堂全体の気温が一気に下がった様な気がした。

 それに押されたのかセクトも驚き、その隙に負けている。




「あっーーーー!!! きったねぇーーーー!!!」

「先に揺さぶったのはそっちですよ♪」




 とびきりの笑顔で言うも、目が笑っておらず寒気を再び覚えさせる。舌打ちするセクトは「さっき嬢ちゃんに相談されたんだよ!!」と言いながら、ジャンケンを続ける。


 10回勝つまで止まらないジャンケンであり、負けた方は勝った相手の言う事を聞くものと言う簡単なものだ。


 セクトは5回勝っており、ベールも同じく5回勝っていた。このままでは負けるかもと思ったセクトは先に揺さぶりをかけた。いつも涼し顔して何気ない事でも簡単にこなし、完璧超人のベールに少しでも痛い目を見て貰おうとしての策。




「………麗奈さんに、ですか」




 その時、さらに頭のスイッチが切り替わる。

 スゥと目を細め手加減をしようと思っていたが、それを取りやめ本気で叩きのめそうかと思案する。セクトの癖を見ていれば次に何を出すかなど、ベールにとっては予想済みであり分かる事だ。




(………罰ゲームは何をしましょうかね)




 その後、セクトの出すもの全てが負けベールの圧勝となった。

 盛り上がる周りを他所にベールは密かに笑い、勝者の特権である言う事を聞かせる内容をどうしようかと楽しそうに考える。




(キールが居なくて助かったわ………)




 フリーゲは突然スイッチが入ったようになるベールの変化に覚えがあった。親友のキールも麗奈の事となると人が変わったようになる。……これはその傾向だと認識し、今も麗奈に構っているであろうキールが居ないことに感謝する。



 ここに居た場合、食堂が無くなるという事態になりかねないからだ。





      ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




ー麗奈視点ー




 今日は何故か寒気を覚える日だなと思った。

 誓いを立てて、2週間が過ぎで何とかキールさんとラウルさんに顔を合わせても恥ずかしくないようになり良かったと安堵していた。セクトさんと柱の見回りをしながらの魔物退治をしていた時に相談したのだ。


 最近のベールさんの行動について。

 イーナスさんの試験を切り抜けて、ラーグルング国で暮らすようになって数日が経った時。味方になると言ってくれたベールさんには感謝しかない。あの後で図書館だけでなく、騎士団の訓練場、ユリィの執務室、各騎士団の屯所と言った場所を教えて貰った。


 だからベールさんが会う度に服をプレゼントしてくるのに申し訳なく、どうにかして止めて貰おうと言ってみるもベールさんからの返答は「麗奈さんに似合うと思ったんですけれど」と、何故だかこちらが悪い感じに取られる。



 あれ、私はおかしいのか?



 頭の中でそう考えるもベールさんに色々と丸め込まれているような気がして思わずラウルさんに相談したのだ。そしたら、セクトさんとベールさんは親友だから何かしら弱点は知っているのでは? と言う回答を得られた。


 だから、見回りついでにセクトさんに相談してみたら――




「おう、任せろ!!! アイツは俺が叩きのめす」




 とんでもなく違う発言を聞いた気もするけど……と、思うもセクトさんが任せろ言うのでそのままにした。

 その日の夜、セクトさんが気まずそうに……目を伏せながらも、ベールに頼まれた仕事があるから私にも手伝って欲しいと言う事で訪ねてきた。




「私で……役に立ちます?」

「あ、あぁ……むしろ嬢ちゃんにしか頼めないって言うか、その、頼む」




 頭を下げられてしまい、手伝えるならと言う事で承諾した。その時に、指定にと言われて渡された手提げ袋を持たされそのままベールさんの屋敷に向かう事となった。


 …………えぇ、そうだね。何かおかしいと思ってたよ。

 セクトさんはこっちと全然顔を合わせてくれないし、仕事関係だと思っていたのにベールさんは家でくつろぐような軽装な服装だし、怖い笑顔で「着替えて下さいね?」と言われそのまま衣裳部屋に押し込まれて、中身を見て絶句したよ!!!!



 姿見で改めて来た自分を見て、物凄く恥ずかしい!!!!

 膝丈よりも少し上だけど、屈んだり体を折り曲げたりしたら下着が丸見えだよね!!!

 そんでもって苦手なフリル多めのピンク色のドレス………!!!



 ベールさんは私を羞恥心で晒すのが嬉しいのか……!!!

 これがドSって言う事なの!? 

 ゆきが居たらまだ良かったのに、今日はターニャ達とお泊り会。私も行けば良かったよ!!!!!!





「………窓から逃げよう」




 そう思って窓に向かうも、一瞬立ち止まる。セクトさんも青い顔をしていたし、このまま抜けたら矛先は彼に当たるだろう。




「……………」




 窓からの逃走を止めて大人しくする。諦めて2人が待っているベールさんの自室へと向かう事にした。もしかしたら相談したからなのかも、と思いセクトさんには悪い事をしたなぁと現実逃避をしつつ裾を抑えながら向かう。




      

       ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ーベール視点ー



 ふふふっ、勝者として味わうお酒がこんなにも美味しいとは思いませんでしたね。敗北者のセクトは正座です。

 私に勝負を仕掛けようなんて早いんですよ。まずは自分の行動を改める所から始めて下さいね。




「……嬢ちゃん、遅いな」

「逃げられないので平気ですよ」

「…………なにしたんだよ」




 疑いの目を向けられるも特別な事はしていないです。

 恐らく麗奈さんは正面玄関以外での逃走を計ろうとするでしょうね。でも、彼女の事ですからセクトの事は気になって仕方がない。


 つまりは……人質としてここに居るんですよ、セクト。




「はぁ……お前、何でそんなに嬢ちゃんに固執するんだよ」

「反応が面白いからですね」

「……笑顔で言うな、笑顔で」




 呆れた表情をされても、ねぇ。

 あんなにコロコロ表情を変えて来る人っていないですよ?

 ゆきさんにも試しにドレスを渡して着てもらいましたが………普段着ない服だからなのか、彼女は喜んで着てくれます。丈の短いスカートも、使用人達が着る服もデザインが奇抜な物でも何でも着てくれます。


 着せかえをしている気分になり、それはそれで嬉しいんですが………。その反応を見たからなのか、麗奈さんのように顔を真っ赤にして否定したり試しにと渡したベビードールも中々着る気配が無い様子。


 あ、これはゆきさんが逐一報告してくれるので覗くような外道はしませんよ。そんな事したらラウルに氷に変えられるでしょうしね。




「物珍しさから麗奈さんに構っていますよ」

「それが何でストーカー扱いになるんだよ。……困ってたぞ嬢ちゃん」

「………そんなにですか?」

「ゆき嬢ちゃんは物珍しさから色んなものに興味あるけど、嬢ちゃんの場合は珍しいものに関しては慎重だ。しかも、服をプレゼントしてくるお前に対して申し訳ないって言ってたぞ」

「確かにそう言ってましたね。でも、麗奈さんもゆきさんもイーナスから給料を貰っているんですから大したことはしてないですよ。麗奈さん、自分から服を買うようには見えませんでしたし」

「だからって嬢ちゃんに着れる服と、そうでないのを見極められないお前じゃないだろ」





 そうですか………。反応を見れば分かりますし、あんな風に恥ずかしがるを見るともっと違う反応をとエスカレートするんですよ。


 ………それが原因ですかね。




「あ、あの。ベールさん、セクトさん……」




 ノックをされた後で麗奈さんの声が聞こえてきました。よしよし、屋敷を案内した甲斐がありますね。迷わずここまで来てくれたのですから褒めないと……。




「平気ですよ、麗奈さん。入って下さい」

「し、失礼………します」




 ぎこちなく入りスカートを必死で押さえています。下着が見えるのを防ぐ為でしょう……他では見せられない顔ですね。




「では私の隣にお願いします」

「ちょっ、ちょっと待て!!!」




 抗議しようとも無駄ですよ、セクト。

 キッと睨み付けて黙らせれば、グッと悔しそうにしている様子。しかし、意を決して出された飲み物を一気に飲み干して麗奈さんと私の間に立ち塞がります。




「これ以上はふるさね……!!!」




 バタン、と勢いよく倒れますね。あんなに慌てて飲むからですよ……自業自得です。




「セ、セクトさん!?」




 慌ててセクトの様子を見に行く麗奈さん。あ、膝枕………後で覚えてなさい。




「彼、お酒に弱いんですよ。匂いを嗅いだだけで倒れますから………あんなに一気に飲んだから倒れるに決まってます」

「えっ……お酒に、弱い?」




 よく見れば顔は赤いし口が回っていない。そして、お酒の匂いがするのが分かり麗奈さんはほっとした様子です。面倒だと思いつつ、セクトを背負いベットに転がします。




「何処行くんです、麗奈さん」




 ギクリ、と体を震わしぎこちなく振り返る。子供が言いつけを守らなかったような表情ですね………何でだろうか、凄く構いたくなります。




「セクトがこうでは罰ゲームになりませんから………麗奈さん、代わりにお願いして良いですか?」

「え、罰ゲーム……?」




 おっと、それだけで怯えられても………。

 そんなに首を振って熱心に拒否をしてもダメですよ。私は仕方なく麗奈さんにお願いをするんです。そう………仕方なく、ね?




  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





 顔に集まる熱は気のせいだと思いたいが、ベールが耳元でこうなった出来事を話していく。午前中に麗奈とセクトが見回りをし、相談にのって貰った事で昼食時よりも遅めの時間帯にベールと勝負事を仕掛けた。


 その結果、セクトはベールに敗北し勝者となったベールは3つだけ言う事を聞くと言うとんでもない特典を言い出した。


 1つ目は麗奈を屋敷へと連れて来る事。

 2つ目はベールの選んだドレスを着てもらう事。

 3つ目はお酒を注ぐこと。


 この3つを守れば良いだけだと言われるも、麗奈は何で自分もターゲットになっているのか分からない様子だ。




「セクトには酒で酔いつぶれたので罰としては良いでしょ。……だから、麗奈さんには罰としてお酒を注ぐと言う簡単な事をして貰おうかと思いまして」




 現在、ベールの隣に座らせされている麗奈。その説明を聞きながら何とかお酒を注いでいるが、腰を抱かれて距離がいつもよりも近いので零さないようにするのが精一杯。

 


「……聞いてますか?」

「ひゃい!!!」



 

 思わずお酒が入った瓶を落としそうになるのを反射的に持ち、ほっとした瞬間。瓶を置かれひょいと体を持ち上げられる浮遊感に「ん?」と思った時には、ベールに後ろから抱きしめられてしまい、完全に動けなくなる。




「いけませんねぇ………ちゃんと人の話を聞いて下さい」

「ご、ごめん、なさい………」




 弱々しく抵抗する様が素直に謝ってくる様子がおかしいのか、ベールは楽しそうにしている。




「まぁ、この罰は麗奈さんの行動の所為で言う事でセクトと連帯責任になります。……反省して下さい」

「うっ、で、でも………」




 恥ずかしい……、とか細く言われる言葉にベールの笑みはますます深くなる。イタズラ心をこうもくすぐられるのは、やっぱり麗奈さんだけだ……と感じポンポンと頭を撫でる。




「………う?」




 不思議そうに見上げる瞳と声に「反省しましたか?」とベールが聞けば無言で頷く。その後で「ベールさんの言う事はなるべく聞きます!!!」と、言い許して欲しいのか何度も頭を下げている。




「では、今まで通りに麗奈さんに服をプレゼントするので……出掛ける際には私があげたのを着て下さいね?」

「は、はい………」

「私と出掛ける時には指定するので、それ等に近いものを着て下さいね?」

「うえっ!?」

「………良いですね」




 驚く様子の麗奈に問答無用で無理を言うベール。

 拒否を示すように首を振るが、ベールが無言でいるので聞く気は無い様子。

 負ける訳には……と思った矢先、グッと引き寄せられ「言う事聞かないと、今以上にイタズラしますよ?」と耳元で言われギクリと体が強張った。




「…………」

「麗奈さん、良いですよね?」

「………………」

「そうですか。では――」

「わ、分かりました!!! 聞きます、聞きますからイタズラしないで下さい!!!」


 

 ピタッとベールの手が止まる。

 ふっと笑ったのと、「その手を放して下さい、ベールさん」と低く脅す様な声色のラウルと視線が絡む。




「ラ、ラウル……さん」




 驚く麗奈を他所にラウルは持って来ていた厚手の布を麗奈に、被せてそのまま抱き寄せた。睨んだままのラウルにベールはおかしそうに「お兄さんの迎えには早くないですか?」と、とぼけた様子で聞いてくる。




「兄さんは遅いし、麗奈に用があって部屋を訪ねても誰も居ない。食堂で何か盛り上がってた様子だったから、フリーゲさんに聞いたんです。………貴方の事です、ただ兄をイジメるだけでは足りないだろうと思ってここに向かいました」

「……勘が鋭すぎですよ」

「麗奈で遊ばないで下さい」




 その時の冷ややかな視線をベールはいつも通りに笑顔で受け流す。麗奈は緊張感からかどっと疲れた様子でおり、完全にラウルに体を預けた様子。




「降参です。お兄さんの連れて帰って下さい」

「麗奈を連れて帰るだけなので、兄さんは置いて行きます」




 え、と視線を彷徨わせる麗奈に気にした様子もなくラウルはそのままセクトを連れ出す事もせずにバタンと扉を閉めて帰って行った。




「あぁ、本当に連れて帰らないのですね」




 そう言いながらもお酒を飲んだ後、ふと後ろを見れば既に魔法を発動させようとしていたキールと視線がぶつかる。





「あの、人の家だって分かります?」

「分かってるよ? 君、前に魔法をぶつけて来たでしょ?」

「あの時のお返しですか? 根に持ちすぎですよ」

「君も性格が悪い。セクトに酒を誘っても君は絶対に潰れないだろうに」




 人間が作ったお酒では酔わないんだから……と、言われその事に気付かれていた事にベールは参ったとばかりに両手を上げる。




「そう言えば貴方の家は特殊でしたね」




 レグネス家はラーグルング国創立に関わった貴族の家。

 王家に忠誠を誓っているのはもちろんの事、王族でしか知ることが出来ない事を共有することが出来る。その昔は、その情報を狙ってレグネス家を狙っての暗殺も置きた位に殺伐とした日々が続いた。




「まぁね。だから、王家の許しが無くても私も見れるんだよ………禁止書庫に保存されている資料をね」

「…………それで、私達を糾弾でもします?」

「無意味でしょ、それ」




 ちゃっかりお酒を持ち、ガラスのコップを空間魔法で移動させてきたのか普通に、飲んでいるキールに「図々しいですね」と文句を言うも気にした様子もない。




「主ちゃんを使って楽しむのは良いけれど、あまり度が過ぎるとラウルだけでなく私も参加するよ」

「え、許可が必要なんですか?」

「度が過ぎるようなら、ね」

「………過保護ですね」

「君みたいな野生の獣を相手にするからだよ」




 そう言って「お酒ごちそうさま」と言って、すぐに姿を消す。本当に忠告しに来ただけなのか、と思いながらベット占領しているセクトは未だに夢の中であり溜め息を漏らす。




「ついでならセクトを持ち帰って下さいよ………」




 その日、ベールは仕方なくソファーで眠り翌朝にはセクトが慌てた様子で「嬢ちゃん……嬢ちゃんは何処に居るんだ?!」と、耳を塞ぎたくなるような大声で言いラウルに回収された事を言えば――




「げっ、それじゃあ俺はずっとベットを占領してたのか!?」

「まぁ……そうですね」

「うっわー、悪い!!! 今度なんか代わるぞ」

「………そうですか。では―――」




 自分が置いて行かれた事よりも、ベールを心配するセクトに彼が親友でいてくれる事がとても助かるなと思うも……それをベールが言う事はない。




「麗奈さんの服選びに付き合って下さい」




 と、言えば途端に嫌な表情をするも少し考えた後で了承するように頷かれる。




       ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 フリーゲが機嫌の悪いキールに理由を聞くも「ベールの奴、どうやって燃やそうかなって」と、物騒な事を言い本気で考え込む彼に……後日、酒を飲みに誘った。

 のだが………




「ひぅ、くそっ………俺ばっかり、俺ばっかり」

「はいはい。君は頑張ってるから……。ほら、追加」

「うへ~~~」




 慰めるつもりが、誘った自分が醜態を晒すと言う恥ずかしい思いをするとは……と頭を抱えるフリーゲ。そんな彼の心情を理解しているキールは今度は自分から誘い、久々の親友の愚痴を聞く毎日へと変わっていった。



 それが楽しいと思うも、それを相手には言わない。言わないのは相手も理解しているからであり、そう言う点はセクトとベールの様な関係にも似ているなと思うキールだった。

 


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