炎の騎士は今日も大忙し
「ふぅ、こんな感じだな」
日が長く夜が短いこの世界では、気候の温度差はそこまで激しくない。しかし、自分の住んでいる屋敷のガーデンハウスは別だ。
ラーグルング国の4騎士の1人にして、リーグの次に若い騎士であるヤクル・ウリスは息を吐き汗を拭う。少し疲れたが花達の元気な姿に自然と笑みを零す。
「でえぇ………つーかーれーだぁー」
バタリと倒れるのは最年少騎士のリーグ。ヤクルは「騎士が情けないな」と嫌味を言えば「騎士関係ないじゃん」と、睨みながら反論してくる。
「何で僕までこんな事を……」
「いつも花畑で休憩してるんだ。たまに花達に感謝しろ」
「………似合わない」
ボソッと言ったリーグの一言に、ヤクルは青筋を立て「お望みとあらば斬るが?」と戦闘態勢に入る。空気がピリピリとする中で「お疲れ様ー」と2人に麦茶を持って来たゆきが戸惑う。
「あ、えっと………出直そうか?」
「お姉ちゃん、飲み物ほーしーいー」
「はいはい」
さっきまで倒れていたのが嘘のように、すぐに立ち上がりゆきの傍へと走り出す。ヤクルは相変わらず好き嫌いが激しい奴だな、とイライラを抑える。
「何度見ても驚くよね、ここ。まさか家と、城の敷地にあるあの花畑全部がヤクルの家の人達総出で育ててるなんて」
「俺は休みの時にしか手伝えないがな」
周りからは家のみで!!と全力で止められたが、と愚痴を溢すもゆきは(仕事忙しいなら仕方ないんじゃ……)と思いつつ口には出さないでいた。
「ゆきも俺の休みの時に悪かったな。毎回ここを手伝ってていいのか?」
「良いの良いの。好きでやってるから」
「麗奈お姉ちゃん、今日も柱の見回りだし………ねぇ、休んでる?」
「それは大丈夫だと思うんだけど」
念の為、ゆきはイーナスとキールに、麗奈を見張るようにとお願いしている。あの2人の怒りには何度か触れているからか、素直に聞いている、とフリーゲが伝えに来たので困った時には頼ろうと思ったのだ。
「麗奈ちゃん、イーナスさんとキールさんには逆らえないし……いざって時は陛下にお願いしようかなって。フリーゲさんも面倒見てるからって気にするなって」
「「あぁ………」」
納得した。
自分も含め、イーナス達は皆大人であり成人したとは言え自分達はまだまたま子供扱い。麗奈が怯むのも、仕方ないななど思っていたら本人が登場して……気まずい空気に。
「帰ろうか?」
「う、ううん!!!違うの麗奈ちゃん」
「麗奈お姉ちゃんも土いじりするの?」
「手伝える範囲があればと思ってたんだ。ヤクル。何かある?」
「今は休憩してるから、もう少ししたらお願いする」
「はーい」
「何がはーい、だ」
ピキッ、と、一気に場が氷り恐る恐る振り返ればユリウスが怒った様子で麗奈の背後に立っていた。
「ど、ど、どうしたの、ユリィ?」
「…………裕二さんから聞いたんだが、夜中も見回りしてたみたいだな」
「あ、えっと………」
「前にも言ったよな?柱の管理は仕方ないけど、見回りはヤクル達にして貰うから平気だって」
「…………」
「夜中から今までずーっと起きてた、って事で良いんだよな?」
「は、はい………」
いつの間にか正座でユリウスの話を聞き、怒りを露わにするも大声では言っていない。リーグは思わずゆきの後ろに隠れ、ヤクルがそれ位にしとけ、と中断させる。
「全く無理するなって、言うのが分からないのか」
「麗奈は頑張り屋だから止めるのに苦労するんだよな?」
「ヤクル。庇うな」
「ユリウスも歯止め効かないんだから、周りに怒られてるだろ」
「……それは……そうだが」
途端にユリウスが口ごもる。マズイと思ったのか、顔を逸らしているのがその証拠だ。
ちょっとの休憩のつもりが、麗奈の仕事熱心さに怒りを露わにするユリウスに遭遇。ゆきは何故かその間、ニコニコと微笑ましく見守られヤクルは喧嘩を止めながら、花達の世話を効率よくする為にはどうするか、と色々と悩むのであった。
ここまでが活動報告に載せてた話です。