秋捨て野
鳥も飛ばず 犬も吠えず
足音の絶えた草原に
ひとつ またひとつ
名前も知らぬ葉が落ちていく
ゆらり ゆらり
彼方より吹く風にそよぎ
右へ左へ揺れながら
最後の舞を踊り落ちていく
黄色や赤を通り過ぎ
茶色く焦げた葉が無数
どれも同じに見えるのに
落ちる姿は皆違う
何故だろう
色づく時は一緒でも
散りゆく時はばらばらで
独り寂しく離れていくよう
彼らが最後に見た空は
晴れだろうか 曇りだろうか
彼らが最後に感じた風は
金風だろうか 凩だろうか
今となっては もう知る術も無い
誰に知られることもなく
秋がまたひとつ捨てられていく