第7話 かしこさ:2
肝心の能力測定は私がぼーっとしている間にてきぱきと検査員の人が終わらせてくれた。
「ユノさんはあのルーンベルグ家の一人娘ですものね、心配せずとも素晴らしい数値が得られるでしょう」
私の間抜けな表情を何か勘違いしてるらしい検査員のおばちゃんが微笑む。
すいません、別に数値の結果が気になっているわけではなくどうやって魔王の住むところに行こうか考えてたんです。
それにえっと、あのルーンベルグ家と言われてもピンと来ないのですが……。
さっきの生徒たちの反応を見るに、有名なのだろうか?
「はははー、そうですかー」
当たり障りなく笑って見せると、突然目の前にホログラムのようなものが浮き出てきた。
「さあ結果が出ましたよ、えっと……え? 」
おー、凄いこれが魔法の世界なのか。どれどれと結果を見てみる私。
名前:ユノ=ルーンベルグ
年齢:17
性別:女
職業:聖女候補
Lv:測定不能
体力:測定不能
魔力:測定不能
かしこさ:2
あれれ……ほとんどの項目が測定不能なんですけど。それにかしこさ2って……あまり良くない結果なのは私にも分かる。
「えーっと、このかしこさが2というのは」
「五歳児の平均が大体50ですね」
つまり、私めっちゃ馬鹿ってこと?
まぁ確かに高校生だった頃は赤点ばっかり進級ギリギリではあったが……。
すると、隣の測定ブースから歓声があがった。
思わずそちらに視線を移すと、腰の辺りまである金色の髪をさらさらとなびかせ、人形のように整った顔立ちの少女が唖然とした表情で検査を受けていた。
「魔力、かしこさ共に999!? まさかこんな人間がいるなんて……」
彼女の検査をしていたらしき男がでかい声で叫ぶ。個人情報ぐらい黙っとけと思うのは私だけだろうか。
「999……!? 嘘だろ、いったい誰が……」
「マリーという女らしいぞ、ほらあの平民の」
モブたちがざわざわと話をしている。
マリー……。
ああ、聞いたことあると思ったら乙女ゲームの主人公でこの世界の主役の女の子か。流石は主人公補正、ステータスもぶっ飛んでる。
で、本当はこの子をいじめるのが私の役割なんだろうけど……。
めんどくさい。
なんで私がそんな生産性のないことをしなきゃいけないのか……。人をいじめる暇があるなら素振りの100回でもした方が良い。
マリーは視線を集めていることに気づいてか、顔を真っ赤にして目線を泳がせた。
うん、注目を集めるのは主人公として仕方ないことだよね、大変そうだけど頑張って!
「で、私のクラスは……」
「もちろんDです」
デスヨネー。こうして私の聖女への道は無事に閉ざされたのである! めでたしめでたし。