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第6話 ユノという女

 

 今日は入学式の前にクラスを振り分ける前に行われる、能力測定とやらに参加するため、学園に足を運んでいた。

 ようはスポーツテストのようなものらしく、私ぐらいの年の男女が大部屋いっぱいに集められた。


 名前順に並ばされた私たちは順々に腕に腕章のようなものを巻かれていく。

 めんどくさいな~と思う私は欠伸を一つ。

 しかし、私を除く新入生たちは緊張した面持ちで自分の番を待っていた。


「ねね、何で皆こんなに緊張してんの? 」


 私はたまたま近くにいた女の子に話しかける。

 おさげのその女の子は一瞬何言ってんだこいつ……みたいな顔をしたが、何だかんだ教えてくれた。


「そりゃそうよ、ここで測定されるかしこさと魔力、この数値があたしたちのクラス決めに影響してくるの。Sクラスに行ければ安泰だけど……Dクラスになんてなったら終わりよ。聖女への道は閉ざされてしまうわ」


「せーじょ? 」


「貴女一体何しに来たの……。聖女ってのは回復魔法のエキスパートで、ああ男性なら神官って呼ばれるわね。聖女になって勇者様の手助けをし、魔王討伐を目指すのが私たちの使命じゃない! 」


 前半の聖女云々はどうでもいいが、魅力的なワードに私は反応してしまった。


「魔王!? この世界には魔王がいるの!? その人って一体どこにいるの? 」


 私は思わず彼女の肩に強く手を置いた。

 魔王、きっとこの世界で一番強いやつに違いない。

 やばい、俄然ワクワクしてきた。


「どこって……貴女一体今まで何を見てきたの? 魔王は嘆きの谷にいるんじゃない。こんなの2才の子でも知ってるわ」


「嘆きの谷ね!! 了解ありがとう! 」


 列を離れてさっそく嘆きの谷に向かおうとしたとき、「はい次、ユノ=ルーンベルグ様ー」という私の名前を呼ぶ声がした。


 ちっ、タイミングの悪い。

 私は渋々列に戻り、測定場所へと進んでいく。


「ユノ=ルーンベルグ様!? 」


 私の名前を聞いた瞬間、女の子の顔色がさっと変わった。


「そーだけど? 」


 すると女の子はおもむろに座り込み、地面に頭を擦りつける。


「申し訳ありません、貴女がユノ様とは知らずにあたし、何て失礼なことを……」


「え? え? 」


 状況が良く呑み込めず、私はうろたえる。

 ユノ様って……私たちそんなに年変わらなそうなのに。


「お願いです、何でもしますからあたしの家族には手を出さないで下さい……そのためならわたし奴隷にも犬にもなります……」


 この子……何を言ってんの? 


「え、別にいーよ、気にしてないし。色々教えてくれてありがとね」


「「え? 」」


 その女の子だけでなく、遠巻きに私たちを見ていた他の新入生たちの声がハモる。

 え、そんな変なこと言ったかな私。


 あのユノ様が感謝の言葉を口にした……?


 嘘だろ……雪でも降るんじゃないか?


 ヒステリーを起こさないユノ様なんてあたし初め見たわ……。


 次に次に出て来る私への驚きの声。

 おいおい、ユノってどんだけ性格悪かったんだよ……。


 居たたまれなくなった私は、逃げるようにして指定の位置に向かうのであった。


 どうやら私が転生した女は想像以上の性悪女だったようだ。

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