第12話 悪役令嬢VS魔王
蒸し鶏を食べてご満悦な女は、あの後図々しくも優雅にコーヒーを飲んだ後、やっと戦うことになった。
伸び伸び動けるような大広間に移動した僕たちはそれっぽく対峙する。雰囲気が出るように白い煙を焚き、何かそれっぽく禍々しいオーラを纏ってみる。
僕に女をいたぶる趣味はないが、まぁ扉を壊した分ぐらいは償って貰おうと思う。
（超分析！）
意外と堅実な僕はまず敵のことを知ることから始めるのだ。
……いつもはすぐに敵の情報が見えるようになるのだが、この女はやたら時間がかかるな。
お、来た来た。
名前:ユノ=ルーンベルグ
年齢:17
性別:女
メイン職業:狂戦士
サブ職業:聖女候補
Lv:99
体力:9999
魔力:9999
ちから:9999（魔力補正あり）
素早さ:9999
かしこさ:2
魅力:200
～保持スキル～
魔力放出
狂化
武神
不屈の心
野生の勘
嘘だろ……何だこの文字通り桁違いのステータスは。
魔王たるこの僕ですら魔力は700程度。いや、それでもこの世界では最高峰の魔力を有しているのだ。
やたら低いかしこさが目を引くが、それをカバーするには余りある能力値だ。
おまけにそのスキルも見たことがない未知のものばかりだし、普通一人一つしか持てないスキルを四つも保有している。
これはまずい。このままでは一瞬で消し炭にされかねない。
「ボケっとしてどうした？ 来ないのならこっちから……」
「くくく……良いだろう、その命知らずさに免じて吾輩の真の姿を見せてやろう。喜べ！ 女よ、この姿を見て生きて帰れたものはいない！！！ 」
僕は目を閉じて神経を集中させ、魔力を高めていく。
こうすることで僕ら魔族は真の姿を取り戻し、更に能力を高めることが出来る。……まぁそれでもこの女の能力には届きそうもないが。
「感じるぞ魔力の波動を！！！！！ さぁ後悔するが良い！ 吾輩を目覚めさ……」
すると、物凄い力でぶん殴られたのを感じた。
女の細腕から繰り出されているとは思えないほどの力に僕は勢い良く吹き飛ばされた。
壁に叩き付けられ、全身に痛みが走る。
「戦いの最中に目を瞑るなんて舐めているのか？ 」
冷たく言い放つ女。その目は猛獣のように血走っている。
「いや……、だから真の姿を……」
「知ったことか」
苦虫を噛み潰したような顔で吐き捨てる女。
「魔王の変身シーンを邪魔するなんてナンセンスだろ……」
「それなら最初から全力で来い、敵がいつでも待ってくれるなんて思うな。隙を見せるなんて殺ってくれと言ってるようなものだぞ」
そんなんありかよ……、強く頭を打ったらしい僕の意識は深い闇へと吸い込まれた。
