神楽先生と編制を学ぼう 歩兵中隊編
陸軍地位向上委員会も終わらないうちに新企画です。
神楽「というわけで神楽先生と編制を学ぼう！コーナーの始まり始まり」
深海「今度はなんだ？一体？」
荻原「また新しいコーナーみたいですね」
神楽「ふっふっふっ。このコーナーは帝國世界の陸軍編制を紹介しつつ、これから戦記ものを書こうという皆さんのために陸軍編制の基礎を紹介しようというコーナーさ」
荻原「なんか上から目線？」
―陸軍軽歩兵中隊編制―
深海「陸軍の基本は歩兵だ。戦車も砲兵も空軍も海軍も、１人でも多くの歩兵を１メートルでも先に前進させるためにあると言っても過言ではない」
神楽「というわけでまずは歩兵部隊。最初に基本として帝国陸軍の軽歩兵中隊の編制を見て見ましょう」
荻原「軽歩兵ってなんですか？痩せた人しかいないんですか？」
深海「軽歩兵というのは、装甲車ではなく普通のトラックで移動して戦闘時には徒歩で戦う歩兵のこと。装甲車に乗って戦う機械化歩兵の対義語として使われる」
荻原「機械化歩兵だと人造人間とか居そうですね」
陸軍軽歩兵中隊
中隊本部
├第一小隊
│├小隊本部(小隊長、小隊軍曹、通信手)
│├第一分隊(小銃分隊)
│├第二分隊(小銃分隊)
│├第三分隊(小銃分隊)
│└第四分隊(重火器分隊)
├第二小隊(第一小隊と同)
├第三小隊(第一小隊と同)
├歩兵砲小隊(81ミリ軽迫撃砲×4)
└対戦車小隊(四七式対戦車誘導弾×4)
神楽「こんな感じ」
荻原「こんな感じと言われても」
深海「中隊は陸軍部隊において1つの基本単位だ。特に無線や通信技術の進んでいない時代において中隊は1人の指揮官が実際に戦場で掌握できる部隊の上限だった」
神楽「英語ではカンパニー。一緒にパンを食む者達という意味で、会社と語源は同じ」
深海「指揮官は一般的に大尉が勤めるけど、大尉は陸軍は英訳でキャプテン」
神楽「海軍は大佐がキャプテン。つまりは艦長のことね」
荻原「陸軍の中隊長は海軍の艦長と同じくらい重要だった、ということですか？」
深海「つまりそうだね。前線で直接部下を指揮する指揮官は陸軍では中隊長で…」
神楽「海軍では艦長だった」
深海「重要なのは今も同じ。なぜなら中隊は補給や整備などの後方支援を行う機能を持ち、独立して行動することができる部隊単位だからだ。だから軍隊は基本的に中隊単位で動く」
荻原「なるほど」
小銃分隊
分隊長
小銃手×6
機関銃手(ミニミ軽機関銃)
無反動砲手(カールグスタフ無反動砲)
無反動砲弾薬手兼小銃手
＊二〇式軽機関銃装備部隊の場合、小銃手のうち１名は機関銃弾薬手兼小銃手、1名は狙撃手となる
重火器分隊
分隊長
擲弾筒手×3
擲弾筒弾薬手兼小銃手×6
機関銃手(二二式機関銃)
機関銃助手兼小銃手
機関銃弾薬手兼小銃手
深海「それでは下の方から解説してみよう、基本的に軍隊の最小単位は分隊だ。人数は十人前後で普通はベテランの軍曹が指揮する」
神楽「だけど実戦では分隊をさらに複数のチームに分けて運用することもある。組とか班とかいう形でね」
深海「それで複数の班が互いに支援しながら前進するんだ。一方の班が援護射撃をする間に他方の班が前進する。一定距離進んだら交替して、一方の班が前進する。分隊はこれを繰り返して前進するんだ。これが歩兵戦術の基本、ファイア・アンド・ムーブメントさ」
神楽「これは上位の部隊になっても同じ。例えば小隊なら分隊が交互に援護しながら前進し、中隊なら小隊単位で相互に援護しながら進む」
深海「それでは分隊を見て見よう。現在の歩兵分隊の基本装備はアサルトライフルだ。それに分隊支援火器一丁に携帯対戦車火器を保有するのが普通だ」
荻原「分隊支援火器とは何ですか？」
神楽「軽機関銃だと思えばいいよ。もともと機関銃は重くて大きいから、もっと上の部隊に配備されていた」
深海「旧日本軍だと重機関銃は大隊の機関銃中隊に集中配備されていたね」
神楽「第一次世界大戦の頃までは大部隊が密集体形で前進するのが普通だったからそれでもよかったんだけど、機関銃が戦争で本格的に使われるようになるとそういう訳にもいかなくなった」
深海「それまで小銃を主力兵器として銃剣突撃で勝負を決する歩兵戦法は機関銃を配備した塹壕陣地の前に完全に崩れ去った。突撃する歩兵部隊は機関銃の前には的でしかなかったからね」
―散開戦術と軽機関銃―
神楽「というわけで新しい状況にあわせて歩兵の戦闘法に大きな変化が生じた。それまでは密集体形の大部隊で銃剣突撃を仕掛けて正面から突破を図るのが普通だった。しかし機関銃の前に脆くも崩れ去った」
深海「そこで新たな戦法が考えられた。機関銃の射撃を浴びないように小部隊に分かれて地形や障害物に身を隠しながら接近し、敵の防御の弱点を見つけてそこから突破する方法だ。だが、この新戦術には1つ大きな問題を抱えていた」
神楽「小銃しか持たない歩兵部隊は少数ではあまりにも脆弱だった。そこで戦闘力を底上げする必要がある」
荻原「そこで軽機関銃ですね」
深海「その通り。軽機関銃は射程や連射性、精度を抑えて少人数で運搬・使用できるようにした機関銃だ。それを歩兵の小部隊に配備して火力の底上げを図ったのさ」
神楽「最初にそれを取り入れたのはフランス軍で、日本軍はこれを戦闘群戦法と呼び、歩兵火力の中心は機関銃になった」
荻原「戦い方が大きく変わったんですね」
深海「そうだね。火器の威力と射程が向上するとともに、歩兵は攻撃を避けるために分散して戦うようになる傾向がある。そして小部隊でも戦闘ができるように、重火器で次々と強化された。中隊の編制を見ると、各部隊に支援火器部隊が置かれているだろ？」
神楽「劇中の陸軍の場合、歩兵小隊には重火器分隊が置かれている。50ミリ口径の小型迫撃砲である擲弾筒3門と7.7ミリ口径の汎用機関銃1丁が配備されている。ちなみに機関銃助手ってのは三脚を運んでいる」
深海「状況に応じて二脚と三脚を使い分けるんだね」
神楽「歩兵中隊には81ミリ迫撃砲装備の歩兵砲小隊、対戦車ミサイルもしくは無反動砲を装備する対戦車小隊が配備されている。こうして各部隊に支援重火器部隊を置いて単独でも十分な火力を発揮できるようにしているのね」
深海「自前に重火器を持っていれば砲兵の支援より密接かつ迅速な支援もできるしね」
神楽「こうした第一次大戦後の歩兵部隊の流れは日本陸軍も取り入れられている。日露戦争時とは変わらない白兵戦術に固執したとかよく言われるけどね」
深海「大戦間に日本軍歩兵部隊の火力は一気に強化されたからね。軽機関銃、擲弾筒、歩兵砲、連隊砲。旧日本陸軍を批判する人たちはこうした動きをちゃんと知った上で言っているのかね。なろうの架空戦記を見ても歩兵砲の活躍なんて見たことないしね」
―陸軍機械化歩兵中隊編制―
神楽「歩兵の兵器編でも見たように第二次大戦後、APCやIFVが登場した。装甲により砲撃や銃撃から守られ、強力な車載火器の援護を得られる装甲車搭乗歩兵は機械化歩兵と呼ばれる」
陸軍機械化歩兵中隊
中隊本部
├第一小隊
│├小隊本部(小隊長、小隊軍曹、通信手、機関銃手、機関銃助手、機関銃弾薬手)
│├第一分隊(小銃分隊)
│├第二分隊(小銃分隊)
│├第三分隊(小銃分隊)
│└第四分隊(車両分隊)
├第二小隊(第一小隊と同)
├第三小隊(第一小隊と同)
└歩兵砲小隊(自走81ミリ軽迫撃砲×4)
＊二六式装甲兵車装備の中隊は三〇式自走対戦車誘導弾4輌装備の対戦車小隊を保有
小銃分隊
分隊長
小銃手×3
機関銃手(ミニミ軽機関銃)
無反動砲手(カールグスタフ無反動砲)
無反動砲弾薬手兼小銃手
車両分隊
分隊長兼小隊長車車長
歩兵戦闘車車長×3
操縦手×4
砲手×4
神楽「以上が帝国陸軍機械化歩兵中隊よ」
荻原「分隊の人数が減ってますね」
深海「少人数の方がフットワークが軽いからね。機動力を武器とする機械化部隊には利点だ。装甲車の乗車定員との兼ね合いもあるしね」
荻原「迫撃砲部隊も自走化されているんですか」
深海「機械化部隊に配備される戦闘車輌は基本的には全てキャタピラー装備の装軌車輌だ。戦車や歩兵戦闘車と一緒に行動できなければ意味が無いからね」
神楽「ちなみに対戦車ミサイル部隊が無いのは、四八式歩兵戦闘車に対戦車ミサイルを装備しているから。それ以前の装甲車は対戦車ミサイルを装備していないから、歩兵戦闘車を装備していない中隊は対戦車小隊を持ってる」
荻原「重火器分隊の代わりに装甲車の運転手の部隊が入ってるんですね」
深海「そうだね。装甲車と歩兵がそれぞれ独立した行動が可能だから、装甲車部隊が攻撃して敵の目を引きつけているうちに、歩兵部隊が迂回攻撃といった連携攻撃ができる」
―海軍陸戦隊歩兵中隊編制―
神楽「そして締めは兄貴らの属する海軍陸戦隊だ」
荻原「随分、小さい部隊なんですね。三個分隊しかないし、迫撃砲もない」
深海「陸軍軽歩兵小隊が46人、機械化歩兵小隊でも39人。それに対して1個小隊27人か」
海軍陸戦隊歩兵中隊
中隊本部
├第一小隊
│├小隊本部(小銃分隊、小隊軍曹、通信手)
│├第一分隊(分隊長、小銃手×3、機関銃手×2、無反動砲手×2)
│├第二分隊(第一分隊と同じ)
│└第三分隊(第一分隊と同じ)
├第二小隊(第一小隊と同じ)
├第三小隊(第一小隊と同じ)
└対戦車小隊(四七式対戦車誘導弾×4)
神楽「海軍陸戦隊は揚陸艦艇の大きさによる制限があるからね。それに少人数の方がフットワークが軽いから素早く動ける。強襲襲撃による迅速な揚陸作戦を指向するのが海軍陸戦隊」
深海「それに対して土地に張りついて粘り強く戦うのが陸軍ってか」
神楽「それに各分隊に機関銃と無反動砲がそれぞれ2つずつある。前にも言ったように、分隊もさらに複数に分かれて互いに援護しながら戦うわけだけど・・・」
深海「海軍陸戦隊の分隊は分かれても、かなり独立した行動が可能ってわけか。それぞれ機関銃と無反動砲を持っているから」
神楽「そゆこと。小銃手2名、機関銃手1名、無反動砲手1名のチームを組んで戦うの」
荻原「そういえば大連での市街地戦でも4人のチームで行動するシーンがありましたね」
神楽「では次回はコラムを挟んで、大隊の編制に書こうと思います」
