陸軍地位向上委員会1
荻原「?なにか新しい企画が始まるみたいですよ」
神楽「なになに?陸軍地位向上委員会?」
深海「そう。陸軍地位向上委員会だ」
―1.不遇な日本陸軍、陸上自衛隊
深海「この企画は架空戦記等で不遇な扱いを受けている陸軍、そして現実の防衛政策において不遇な扱いを受けている陸上自衛隊の立場を擁護し、地位向上を目指そうというものだ」
荻原「はぁ。陸軍って不遇なんですか?」
神楽「確かに。筆者は市販の架空戦記にはあまり手を出していないけど、ここ“小説家になろう”の諸作品を見ても、その傾向はあるよね」
荻原「どういう風にですか?」
深海「簡単に言えば“海軍善玉論”“陸軍悪玉論”だね。正義の海軍、悪党の陸軍。そんな構図」
深海「本来なら“開戦責任は陸軍にあり”という話なのだけど、なぜか“敗戦責任”まで含むように理解されるようになった」
深海「“先進的で新技術にも通じる海軍”“頑固で改革を拒絶する陸軍”とか、“合理的な作戦を進める海軍”“精神主義に毒された無謀な陸軍”とか、そういう対比がなぜか出来上がっている」
神楽「統計データがあるわけじゃないけど、歴史改変系架空戦記って大抵“改革を海軍が主導し、陸軍が抵抗勢力になる”ってパターンな気がする」
荻原「それじゃあ、陸上自衛隊の不遇というのは?」
深海「日本が島国なせいか、“自衛隊は海空重視であるべき”と考える人が多い。事実、実際の防衛計画においても陸上自衛隊は優遇されているとは言いがたい」
神楽「海空自衛隊が一応は主力の近代化を達成しているのに対し、陸上自衛隊はお寒い状況だもんね」
深海「そして常に“日本は島国だから、海空自衛隊があれば十分”とか“ゲリゴマや島嶼侵攻への対処を重視した機動力のあるコンパクトな陸自を目指すべき”とか暴論が平然と語られる。そして、実行される」
神楽「挙句の果てに“戦車や大砲は冷戦型装備だ!それを手放さない陸自は抵抗勢力だ!”だからね」
深海「民主党政権が進める次期防衛大綱もその傾向が強まるようだ。西方重視の名のもとにまた本土師団が削られる。幸い陸自唯一の機動打撃部隊である第7師団は無事らしいが」
神楽「かつて機甲師団解体を主張していたのに比べればマシになったけど、やはり本土の戦力低下は悩ましいね。既に山陰地方の防衛は放棄されたとも言われるくらい危機的状況なのに」
荻原「放棄ですか…」
深海「朝鮮半島に面している割には戦力低すぎでしょ。第13旅団は」
―2.不当な批判を是正しよう
神楽「そうでどうする?」
深海「俺が言いたいのは次の2点だ。まず旧日本陸軍は言われるほど後進的な軍隊ではないし、海軍に比べてむしろ先進的、合理的な点もあったこと。そして現在の日本の防衛において海空自衛隊の防壁は決して鉄壁といえるものではなく、むしろ陸上自衛隊の存在によってはじめてその威力を発揮できる存在であること。これを立証したい」
神楽「なるほど」
深海「次期防衛大綱が近いので後者を優先しようと思う」
荻原「でも作者の執筆ペースだと、掲載した頃には防衛大綱問題は昔のことになってそうですね」
深海「…」
神楽「あるある」
深海「とにかく…次回を待て」
―3.そして日本の陸上防衛力は崩壊した
荻原「…あれ?次回を待つんじゃなかったんですか?」
神楽「その予定だったが…」
深海「作者が掲載すべきかどうか悩んでいる間に、とんでもない報道が出てきたもんでな」
荻原「といいますと…」
神楽「曰く“次期防衛大綱では戦車定数を現状の600輌から200輌削減し、定数400輌とする”」
荻原「それがとんでもないんですか?」
深海「とんでもないさ」
神楽「とんでもないね。必要量に比べて全然足りない」
荻原「どれだけ足りないんですか?」
深海「現在、陸上自衛隊の15個師団及び旅団中、機甲師団の第7師団を除くと、その配下の普通科連隊数は40個。それに1個ずつ14輌編制の戦車中隊を配属するとすれば戦車数は560輌。それに機動打撃力を担う第7師団に226輌。その他教育部隊を勘案すれば800輌から900輌が最低限必要だろうね」
神楽「そして現在の自衛隊は一部の地域を半ば見捨てる形で戦車定数600輌を呑んだんだ。これ以上、削る余地なんてまったくない」
深海「もし戦車数が400輌となれば、第7師団と教育を抜けば残りは精々100輌。師団・旅団あたり1個中隊すら配備できない。これは由々しき事態だぞ」
神楽「詳しいことは次章に譲るが、地方張り付け部隊がここまでスカスカになるということは、例え上陸してきた敵部隊が小規模であっても地方の師団や旅団が自前の戦力だけで解決することが難しくなる。そして初期消火に失敗すれば、敵部隊撃滅には全国からの部隊転用を待つ必要がある」
深海「つまり相手が小規模であっても長期戦に持ち込まれるということだ。勿論、それでも純軍事的には十分に勝機はある。純軍事的にはな」
荻原「純軍事的じゃない場合とは?」
神楽「クラウゼヴィッツは言った。“戦争は政治の延長である”と」
深海「中東最強を誇るイスラエルが一番恐れたシナリオはアラブ軍がイスラエルの領土の一角でも占領し持ちこたえ、その間に国連で即時停戦が決議されることだ。そうなるとアラブ軍を領土から追い出すには外交交渉で譲歩を重ねる必要がでる」
神楽「短期間での解決に失敗した場合、自衛隊側の攻勢準備が整うまでに敵国は外交で攻勢を仕掛けてくるだろう。長引く有事に国民の不満は積もる。その間に敵国が甘い言葉をかけてくる。“そっちが譲歩をすれば、こちらは兵を引くよ”挙句の果てに国連で即時停戦決議でも出されたら自衛隊はなにができるだろうかね?」
荻原「それってかなりヤバくないですか?」
神楽「ヤバイよ。めっちゃヤバイよ」
深海「ということで、今度こそ次回を待て」
作者「登場兵器紹介の艦艇編2と3、歩兵の兵器編1を改訂」
深海「なんでまた」
作者「歩兵の兵器編は従来までの二二式軽重よりも九九式軽機関銃改と二二式汎用機関銃の組み合わせの方が“それっぽい”かなと思いまして」
深海「“それっぽい”かな、って」
神楽「まぁ架空戦記なんてそんなもんさ」
深海「艦艇編の方は?」
神楽「夕霧型の隻数が増えて、舞風型が減ったなぁ」
作者「第二次大戦後から現代までの海軍史をまとめたので、それにあわせて修正しました」
深海「…そういうのは本編執筆前にやるもんじゃないか?」
作者「てへ!」
深海「てへ!じゃねぇぇ!」
作者「まぁ本編の記述にはなんの影響もないし」
深海「本編の記述になんの影響もない設定を弄くる前に本編を進めろ!」