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化け玉  作者: 津嶋朋靖


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96 参道

  マンサクが参道の側溝から出てくる。

  側溝からボタンとマンサクの両親が這い出す。

  電柱の陰で泣いているボタンを見つけて駆け寄る。

マンサク「兄ちゃん、兄ちゃん」

  ボタン、気が付く。

ボタン「コザクラが、コザクラが」

マンサク「コザクラ姉ちゃんがどうしたの?」

ボタン「化け玉を飲んで……」

マンサク「ええ!?」

  狸達が青ざめる。

ボタン「ん?(不意に顔を上げる)」

  参道の向こうからトボトボとやってくるこざくら。

ボタン「コザクラ!!」

  狸達がこざくらに駆け寄る。

こざくら「ボタン?」

ボタン「キューンキューン」

こざくら「あああ(困惑)」

マンサク「キューン」

こざくら「分からない。みんなの言葉が……」

ボタン「キューン」

こざくら「ううう……(涙を流す)」

  後から桜がやってきて、こざくらの肩に手をおく。

こざくら「おばさん!! あたし……みんなが何言ってるのか分からない(桜に抱きつく)」

  桜は優しくこざくらの頭を撫ぜる。

  ボタンが人間に変身してこざくらに歩み寄る。

ぼたん「コザクラ……いったい何が?」

こざくら「ボタン……あたし、狸に戻れなくなったよ!!」

ぼたん「嘘だろ?」

こざくら「……(悲しく目を閉じる)」

ぼたん「だったら、俺も……」 

  ぼたん、化け玉を鎖から外す。

  飲み込もうとする。

桜「やめなさい!!」

  桜とこざくらがぼたんを抑える。

桜「それを飲むと二度と狸に戻れないのよ。それでもいいの?」

ぼたん「戻れなくたっていい!! コザクラと居られるなら、そのくらい……」

こざくら「お父さんお母さん、それにマンサクを悲しませていいの?」

ぼたん「それは……」

マンサク・両親「キューン」

  マンサクと両親を見て逡巡するぼたん。

こざくら「それに……ボタン。あなたには、森を守ってほしいの」

ぼたん「こざくら……(瞳からジワッと涙が溢れる)」

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