44
96 参道
マンサクが参道の側溝から出てくる。
側溝からボタンとマンサクの両親が這い出す。
電柱の陰で泣いているボタンを見つけて駆け寄る。
マンサク「兄ちゃん、兄ちゃん」
ボタン、気が付く。
ボタン「コザクラが、コザクラが」
マンサク「コザクラ姉ちゃんがどうしたの?」
ボタン「化け玉を飲んで……」
マンサク「ええ!?」
狸達が青ざめる。
ボタン「ん?(不意に顔を上げる)」
参道の向こうからトボトボとやってくるこざくら。
ボタン「コザクラ!!」
狸達がこざくらに駆け寄る。
こざくら「ボタン?」
ボタン「キューンキューン」
こざくら「あああ(困惑)」
マンサク「キューン」
こざくら「分からない。みんなの言葉が……」
ボタン「キューン」
こざくら「ううう……(涙を流す)」
後から桜がやってきて、こざくらの肩に手をおく。
こざくら「おばさん!! あたし……みんなが何言ってるのか分からない(桜に抱きつく)」
桜は優しくこざくらの頭を撫ぜる。
ボタンが人間に変身してこざくらに歩み寄る。
ぼたん「コザクラ……いったい何が?」
こざくら「ボタン……あたし、狸に戻れなくなったよ!!」
ぼたん「嘘だろ?」
こざくら「……(悲しく目を閉じる)」
ぼたん「だったら、俺も……」
ぼたん、化け玉を鎖から外す。
飲み込もうとする。
桜「やめなさい!!」
桜とこざくらがぼたんを抑える。
桜「それを飲むと二度と狸に戻れないのよ。それでもいいの?」
ぼたん「戻れなくたっていい!! コザクラと居られるなら、そのくらい……」
こざくら「お父さんお母さん、それにマンサクを悲しませていいの?」
ぼたん「それは……」
マンサク・両親「キューン」
マンサクと両親を見て逡巡するぼたん。
こざくら「それに……ボタン。あなたには、森を守ってほしいの」
ぼたん「こざくら……(瞳からジワッと涙が溢れる)」




