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桜「でも私は狸。人と一緒になれるはずがない。
だから私は自分の正体をあの人に明かした後、化け玉を飲んだの。
そうすれば、私が死んでもあの人の心に残れると思って」
こざくら「そんな……」
桜「でも、私は死なないどころか人間になってしまった。
それをいいことに、私は家族を捨ててあの人の元へ走ったの」
こざくら「どうして、そんな事……」
桜「他の化け狸に会えば、私の無事を伝えることはできる。
でも、そんな事をしたって私は狸に戻れないし、狸の言葉も話せない。
それならいっそ、死んだと思われていた方がいいと思っていたのよ」
こざくら「そんな……」
桜「たぶん、過去にも同じような事があって、化け玉を飲むと死ぬという誤解が生まれたのね」
こざくら「……(唖然)」
桜「あなたも、二度と狸に戻れないし、話せない。私のように(悲しげに)」
こざくら「ええ!?」
愕然となる。
一陣の風が吹く。




