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賢治「可愛いだろ」
こざくら「そんな。可愛いだなんて……いや、あたしじゃなくて狸が」
賢治「今、どうしてるかな?(寂しそうな顔)」
こざくら「会いたいの? 狸に」
賢治「うん。森に来れば会えるかなと思って、叔母さんについてきたけど。無理だよね」
こざくら「どうして?」
賢治「狸はもう僕の事なんか忘れてるよ」
こざくら「そんな事ない!!」
賢治「え?」
こざくら「狸だってきっと会いたいって……いや、そう思ってるんじゃないかなって……気がするなあ……」
賢治「君。面白い子だね」
こざくら「そうかな?」
御神木の近くからぼたんが声をかける。
ぼたん「あのお、虫食い穴ってこれですか?」
全員がぼたんの方を向く。さくらがぼたんの指さす先にある木の幹を覗き込む。
幹に小さな穴が開いている。
桜「これは?」
桜はルーペで穴を覗き込む。
桜「これは虫食い穴なんかじゃないわ。ドリルで開けた穴よ」
桜は穴に鼻を近づける。
桜「除草剤だわ」
桜は賢治の腕を掴む。
桜「ケンちゃん。すぐに帰るわよ」
賢治「え? なんで?」
桜「これは犯罪だわ。すぐに警察にいかないと、他の木も狙われるわ」
こざくら「あの……」
ぼたんがこざくらの腕を掴む。
ぼたん「俺達も帰るぞ」
こざくら「え? ちょっと!!」
ぼたんはこざくらを引っ張っていく。