16
40 森の中
森の中をこざくらとぼたんが歩いている。
ぼたん「しかし面倒な事任されちゃったなあ」
こざくら「ボタン。嫌なの?」
ぼたん「そりゃ嫌さ。それに人間怖いし」
こざくら「あたしはちょっと楽しみだな」
ぼたん「なんで?」
こざくら「怪我が治るまで人間の家にいたけど、楽しかったよ。人間の暮らし」
ぼたん「そうかい?」
こざくら「食べ物も美味しかった。寝床もふかふかして気持ちよかった。
遠くの景色が映る箱とかあって楽しかった」
ぼたん「そうかい(不満顔)。
でもな、人間は俺達、狸を捕まえて皮を剥いだり食べたりするんだぞ」
こざくら「でも、人間はみんな同じじゃないでしょ。優しい人間だっているし」
ぼたん「まあ、そうだが……」
こざくら「それに賢治君、優しかったし」
ぼたん「賢治?」
こざくら「あたしを助けてくれた人間の子よ」
ぼたん、ムッとする。
41 玄武神社・入り口
こざくら「これは!?」
鳥居の下で驚き立ち尽くす。
玄武神社の御神木が枯れている。
42 同・境内
御神木に梯子がかけられ、賢治が木の幹を観察している。
根元では桜が梯子を支えている。
こざくら「樹医って、あの二人じゃない?」
ぼたん「他にいないし、そうじゃないかな?」