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30 賢治の部屋(夜)
暗い部屋。窓から月明かりが差し込む。床に敷いた布団に賢治は寝ている。
その横の段ボール箱で寝ていたコザクラが起き上がる。
布団の上に這い上がり賢治の頬を舐める。
そのまま布団の上で寝そべる。
31 桜の家・玄関(三日後昼)
コザクラを抱いて賢治が立っている。
桜「足はもうよくなったのね?」
賢治はコクっと頷く。
桜「別れるのがつらい?」
賢治「このまま、飼っちゃいけない?」
桜「こっちへ来て」
32 同・リビング
桜は庭に面したガラス戸を開く。庭の向こうに森がある。桜が狸笛を吹く。
その横で賢治がコザクラを抱いている。
森の中からボタンが飛び出してくる。
ボタン「キューン」
コザクラ「!?」
桜「森の狸達はね。この子を心配して探していたのよ」
賢治「そうだったんだ」
桜「ケンちゃんがこの子を飼ってしまったら、森の狸達が悲しむの。分かるでしょ」
賢治「うん(悲しげな顔)」
賢治はそっとコザクラを降ろす。
賢治「さあ、狸さん。森へお帰り」
コザクラが賢治に飛びつく。
賢治、思わずコザクラを抱く。
コザクラ「キューン(賢治の頬を舐める)」
賢治に抱かれるコザクラを見るボタン。
ボタン「……(不満顔)」
33 森の巣穴の中
ラン「お姉ちゃん!?」
巣穴にコザクラが入ってくる。
ユリ・キク「お姉ちゃん!!」
子狸達が駆け寄る。
コザクラ「心配させてごめんね」
ハギ「コザクラ!! よく帰ってきた!!(娘を抱きしめる)」
コザクラ「お父さん。苦しいよ」
アヤメ「ううう(うれし泣き)御神木様。ありがとうございます」
ボタンの声「コザクラ」
コザクラ「ん?(振り向く)」
巣穴の入り口からボタンが覗いている。