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21 宮村家・賢治の部屋(翌朝)
賢治が畳の上で座ったまま寝ている。
段ボール箱の中でコザクラが目を覚ます。キョロキョロと周囲を見る。
コザクラ「キュン!!(賢治に気が付く)」
賢治の腕をつついてみる。
賢治は目を覚まさない。
コザクラМ「そっか。この人間、あたしを助けてくれたんだっけ」
賢治の腕にある絆創膏を見つける。
コザクラМ「あたし、助けてくれた人に噛みついちゃったんだわ?」
コザクラは賢治の指先を舐める。
賢治「ん?(目を覚ます)」
コザクラが指を舐めているのを見る。
賢治「お腹空いたかい?」
コザクラの目の前に柿を置く。
コザクラ「……?」
賢治「さあ、お食べ」
コザクラは少しためらってから柿の匂いを嗅ぐ。柿を食べ始める。
賢治はニッコリ笑ってコザクラを撫ぜる。
22 多摩川河川敷
背の高い草に覆われた河原をハギ、アヤメ、三匹の子狸が、このあたりの狸、ススキと会っている。
ハギ「うちの娘見なかったか?」
ススキ「いや、見かけなかったなあ」
アヤメ「そうですか」
ハギ、アヤメは悲しく溜息をつく。
子狸達はすすり泣いている。河原に風が吹き、草叢をさやさやと揺らして流れていく。