2/4
月光
豫嬪は彼女に文字を教えた。この国の男に嫁ぐことがないとわかっていたからだ。この国で女が学問を修めるのは、あまり宜しいとは言えなかった。
砂漠ばかりの土地に嫁ぐ彼女に文字を教えたのは書物を読ませる為でもあった。
豫嬪は皇帝のお渡りがない夜は書物を読んで長く冷たい夜を過ごしていたのだ。
花を愛でるのも、芳醇な酒を煽るのも、豫嬪は好きではなかった。それは、豫嬪の父親が国子監の学者であったのも由来している。
豫嬪は生来の聡明さをもって宜花に学問の手ほどきをした。
皇帝は聡明な豫嬪を愛した。それは性愛的な欲情ではなく、最愛の女として良き相談相手として愛していた。純粋な気持ちで皇帝は豫嬪を愛した。
それを良く思わなかったのが他の妃嬪たちだ。特に第三夫人の栄嬪は豫嬪に激しく嫉妬した。
そして栄嬪は豫嬪を毒殺したのである。宜花が15歳の時であった。
10年の長い歳月が嫉妬に狂った栄嬪を魔女にしたのである。