恋の行方
少しだけ、私の御話に付き合ってもらえますか?
これは、私の恋の話なのですが…………あぁ、無理に見ていかないで良いのです。ただ、少し話したくて…………
あるとき、私は一人の方に目を奪われました。
鋭い目付きに、傲慢な振る舞い。周りからの評判はあまり良くありませんでした。
けれど、私はそんな彼が好きでした。
友達からは趣味が悪いとか、考え直した方がいいとか、そんなことばかり言われました。
良い印象は受けないかもしれませんが、みんな彼を誤解していると思います。
私は知っています。彼は本当はとても優しいことを。彼は自分の友達には親切に、それでいて誠実に生きていました。確かに、周囲からは一つずれたような感じがありますが、決して曲がっているわけでも、ひねくれているわけでもありませんでした。むしろ、一本の曲げられない筋を持っていて、それを突き通した生き方をしている素晴らしい方だと思います。
彼に惹かれてからというもの、私は自然に目で彼を追っていました。友達も始めのうちは真剣に私を止めようとしていましたが、次第に無理だと悟ったのか、私に忠告をするだけとなりました。友達はみんな優しくて、私に呆れたりせずに一緒にいてくれました。他のみんなは私を変わり者だとか、気が触れてしまったのだ、とか色々と噂していましたが、そんなことも気になりませんでした。
目で追い続けているだけで、十分に幸せでした。
そんな或る日のことです。
偶然……本当に偶然、私は彼の隣に居合わせる形になりました。彼は別に何も変わった様子はありませんでしたが、私はもう心臓が張り裂けそうなくらいで…………挙動もおかしかったと思います。今思えば恥ずかしい限りです…………彼はただ黙って遠くを見ていましたが、私はそんな横顔を見ていました。すると、あまりに熱の籠った視線を向けていたからでしょうか。彼から、話し掛けてきたのです。
「___なぁ」
「は、はい!」
声が裏返りました。もう顔から火が出そうです。
「……あんた、最近よく見かけるけど、何か用でもあるのか?」
「い、いえそんなことは……」
「好奇の目ならやめてくれ。迷惑だ」
「……すみません…………」
……怒らせてしまいました。そんなつもりはなかったのですが…………
「はぁ……」
彼がため息をついてその場を去ろうとしたので、私はとっさに、慌てて引き留めました。
「待ってください!」
「……なんだよ」
とても機嫌が悪そうでした。正直な話、怖かったです。でも、ここで伝えなければ、そんな気がして…………
「……決して、好奇の目を向けていたわけではありません…………」
「じゃあ何だ」
そう聞かれて、黙ってしまいました。すると彼は呆れたようにその場を去りました。本当に、申し訳ないことをしたと思います。
それから数日後のことでした。彼が亡くなったと聞いたのは。
その日は大雨が降っていました。慌ててその場に駆けつけました。すると、彼の亡骸は冷たい雨に濡れたままでした。
「あぁ、何で…………」
私は泣きました。彼の亡骸の側で泣き続けました。まだ伝えていないのに、まだ誤解しているままなのに……と。どんなに祈っても伝わりません。私はただ冷たくなってしまった彼の体に寄り添って、何度も口にしました。
「___貴方を、愛していました……」
*****
「こんな雨じゃ、見付かりにくいよなぁ……」
「そうですよねぇ……」
仕事仲間とそんなことを話しながら、辺りを見回していた。すると、もう一人が少し離れたところで声をかけてきた。
「あー、いました。こっちです」
「……あぁ、軒下にいたのか…………」
手を合わせてから、亡骸を手に取る。そこで、あることに気がついた。
「……ん?」
「……小鳥、ですね」
軒下から出された烏の亡骸には、烏の半分もない小さなからだの小鳥がぴったりと、寄り添うようにして死んでいた。
彼女なりの幸せ。




