俺の婚約者は今日もこんなにも可愛い。
まさかの日別ランキングに18位に……!!
ありがとうございます(((o(*゜▽゜*)o)))
2015年10月22日
俺はフリード・アルフレッド。
アルフレッド公爵家の長男だ。
太陽のように輝く金色の髪にシルバーの瞳、身長は我が国の平均を軽く超えている。
そんな俺は社交の場では“花の貴公子”と呼ばれているらしい。
少し小っ恥ずかしい呼び名だが、嫌というわけではない。
この容姿のおかげでいいこともあるし、この呼び名のおかげで助かったことも何回かある。
そんな俺は一つ、重要な秘密を隠し持っている。
それは自分が転生者であるという事だ。
そもそもどうして俺が転生者であると思ったのか。
それは、前世で自分の妹がハマリにハマっていた乙女ゲームの攻略対象に、自分はそっくりそのままだったからだ。
だが、この記憶があるといっても何に使うわけではない。
自分のすべきことを見失わず、やるべき事をこなす。
それが公爵家子息である責任だ。
俺には一つ年下の婚約者がいる。
名前はミリアリア・ドートン。
侯爵家のご令嬢で俺が八歳の時に婚約を結んだ。
初めてあった時、まだ幼いのに大変だな。とただその感情しかなかった。
それに、このご令嬢が乙女ゲームの世界では“悪役令嬢”という立ち位置であることもわかっていた。
だからこそ始めのうちは関わらない方がいいのでは……、とさえ考えていたが……。
結論から言おう。無理だ。
どうしてあんな可愛いミリーを放っておけよう、いやできまい。
前世の妹がハマっていた乙女ゲームでのミリーは本当にこれぞ悪役令嬢!というほど性格が悪かった。
我侭で短気、そして平民嫌いと疑いようのない“悪役令嬢”。
しかしだな、俺が初めて会ったのは七歳のミリーなんだ。
まだ性格は確立されておらず、まだまだ世間を知らない純粋な子供。
そんな彼女を愛するのは、俺にとっては運命のようなものだった。
「ミリー、おはよう。」
「…おはようございますわ、フリード様。」
初めて会ったのはまだお互いが小さかったのに、今では学園に入学できるくらいに成長していた。
今目の前にいるミリーはふい、と視線を下に逸らし、赤くなった頬を隠そうと少し素っ気なく返事をする。
しかしそれは俺には通用しない。
なんせずっと一緒にいるから、ミリーが今何を思っているかなんて朝飯前だ。
そして今日も俺はミリーに愛を囁く。
だってあの乙女ゲームのミリーとは思えないほど純粋に育ったミリーはとても魅力的な女性だから。
「ミリー、今日の講義が終われば一緒にお茶をしないかい?」
「……はい、よろこんで」
ふわっと笑った笑顔に胸をしめつけられる。
しかし、このようなことで顔が崩壊するのは公爵家の跡取りとして、そしてミリーの婚約者としてできない。
ミリーがなぜ悪役令嬢のような性格にならなかったのは、実は原因は俺にある。
意図的に変えたつもりは無いのだが、気づけば違うかったというだけの話だ。
婚約して、定期的にミリーと会うことを義務付けられた俺は、その義務を果たすべく侯爵家へ足を運んだ。
最初はただの義務だと、仮面を被りミリーとの時間を過ごしていた。
しかし彼女と話していくうちに、その純粋さに、そのどこまでも愛を求めている秘めた瞳に俺は魅了されていた。
義務的に通っていたあの頃が嘘のように、俺は時間を作ってはミリーに会いに行った。
しかし、それで公務を怠るわけではない。
むしろ、将来ミリーを嫁にもらうのならしっかりしなければと気合をいれてこなしていたくらいだ。
俺の愛が信じられなかったのか、最初は戸惑いを隠せていなかったミリー。
あの愛を求める瞳をもっていながら、愛を向けられると戸惑ういじらしさに、また俺は彼女に惹かれていく。
そして月日が経ち、学園にミリーも入学したころには俺達は誰もが羨む理想の婚約カップルだと言わるほど、お互いを受け入れていた。
俺の愛を受け入れ愛を送るミリーは、どんな時でも美しかった。
俺が公務で時間を作れずミリーとの約束を断った時だって、急な家の用事で三日ミリーと顔を合わせない時だって、いつも彼女は凛と前を向き、その美しさのまま俺の帰りを待ってくれていた。
そんな彼女だからこそ俺はミリーしか愛せないのだろう。
……だからだ、お前を愛することはできないんだよ。
外聞を無視して無礼な振る舞いをしていると噂は知っていたが、そもそも設定が違っている俺達に近寄ってくるバカはいるのか?
あぁ、いたなここに。
「フリード様、私……!」
「……アルヘイド嬢……、先程も申しましたがお断りした筈です。」
「で、でも……!私は貴方が好きなのです……!どうか……!」
レイア・アルヘイド男爵令嬢。
その女性はこの乙女ゲームの世界のヒロインだった。
彼女も転生者らしく、攻略対象である名家の子息たちに言い寄っているらしい。
しかし、だ。
この世界は乙女ゲームの世界であろうと、“俺達”にとっては現実だ。
いくらゲームではその通りにすれば結ばれたからと言って、この世界で通用するとは限らないではないのか?
アルヘイド嬢はそれをわかっていないらしい。
ゲームの設定通りのセリフと仕草で言い寄る。
しかし、上手く行かないとあせっては順番を無視してさっきのようなセリフを言ってくるようになった。
それもそうだ、だって俺達“攻略対象”はゲームのキャラクターではない。
この世界に生きている人間だから。
作り話の中では許された逆ハーレムや略奪愛などは現実ではそう簡単にはできない。
むしろ可能性はゼロに近い。
それなのに、彼女は今日も俺達をキャラクターだと信じて疑わず、言い寄ってくるのだろう。
そのまま続けばきっと破滅の道しかないというのに。
「……フリード様?」
「、なんだい?ミリー」
俺としたことが、ミリーとのお茶の席で別のことを考えていたらしい。
「……いえ、その……。」
「?ん、何でも言ってくれ。」
「…………アルヘイド様のこと、なんですが……」
「アルヘイド嬢?」
今までのお茶会ではいつもお互いの近状報告などをしていただけに、他の女性の名前が、しかもこの世界のヒロインの彼女の名前が上がってくるとは思わなかった。
「彼女がどうしたの?」
「いえ、その……こ、告白された……と聞いたもので……。その、」
だんだん声は小さくなり、顔もどんどん下がっていく。
しかし隠れなかった耳は真っ赤に染まっていて。
「……ふふ、ヤキモチかい?」
「いえ!……はい、……。」
指摘するともっと小さくなっていったミリーに、心はもう激しく高鳴る。
こんな可愛い婚約者は他にいないだろう?
「俺が好きなのはミリー、君だけだ。」
「!は、はい!私もフリード様をお慕いしております。」
「ああ。……結婚が待ち遠しいね?」
「け、けっこ……!…………は、い。」
真っ赤になった頬を食べ尽くしてしまいたい。
そんな不埒な思考を頭の外に追い出して、そのまま今日もミリーを愛する。
俺の婚約者は今日もこんなにも可愛い。
、
内容を少し補足しました。