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番外編 私の場合

私が半不登校児であったことはどこかに書いたと思うが、

まぁ、半不登校児であった。


じゃあ学校に行かない日は何をしていたのかというと、原宿にある某ファッションショップの前にたまっていた。

私と同じくらいの年頃の人からいくつも年の離れた人たちがいた。


そしてもう一つが新宿歌舞伎町をふらふらとしていた。

今回はそんな歌舞伎町でのお話。


いつも通り新宿歌舞伎町をふらふらしていると、ふいに声がかけられた。

振り向くと知らない中年の男がいた。

「なんですか?」

私が問うと、男はこそっとした声で呟いた。


「パンツ、売ってくれない」


まだブルセラが闇でうごめいていた時代だ。

ブルセラショップなんてなかったし、こうして直接声をかける以外なかったのだろう。


私は当然無視して歩きだした。

しかしこの男、しつこかった。


「一万出す。変わりのパンツは伊勢丹で買ってあげるよ」


「一万二千円ならどう?新しいパンツも買ってもらえるんだよ」


それでも私が無視して歩いていると、どんどん条件が上がってくる。

千円ずつ値上げ。

新しいパンツは三枚に。


どうしても女子高生のパンツが欲しいようだった。

そのうち私が無視をしているので少しキレたのだろう。


「おい」


突然、手をつかまれた。

私も一瞬焦る。

ビルのかげに引っ張りこもうとされたその時。


歌舞伎町に詳しい方がどれくらいいるのかわからない。

当時、歌舞伎町の道には黒服(キャバクラのお兄さん)、や風俗などの客引きが溢れていた。

今でこそ歌舞伎町クリーン運動なるものでそういった方々は道端から姿を消し(こっそり居る場合もある)学生から社会人までが安全に遊べる町となったが、私の感覚では昔の方が安全だった。


その時もそうだった。

私とパンツくれ男の行動が目に入ったのだろう。


「おい、なに学生に絡んでるんだよ?」


黒服さんが私たちの方にやってきた。

男は飛んで逃げていった。


男性にとっては強引だったり水増し請求などで怖いお兄さんたちが、女性にとっては身を守ってくれる頼もしい存在だったのだ。


「制服着て歌舞伎にきたら危ないよ」


優しくも軽いお説教も交えたあと、黒服さんは自分の持ち場に戻っていった。

私は礼をいい、大通りに向けて歩いていった。


が、これだけで話は終わらないのである。


パンツくれ男は黒服さんと離れて暫くしてまた声をかけてきた。

「お願い、何でもいいからちょうだい!」

私はなぜかあわれになった。

「お金いらないんで、ハンカチでいいですか?」

私が出したハンカチを奪うようにして男は去っていった。


パンツくれ男事件はこうして終わった。


ハンカチの元のお金くらいもらっておくんだったといまは思う。



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